短編①
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《叫んで唱って囁いて》∶花宮
※登場曲※
STEAL YOUR BREATH/花宮真
MAD BREAKER/花宮真
Hard to say I'm sorry/シカゴ
メルト/supercell/初音ミク
※キャラソンに対するメタな発言があります。
………花宮視点………
彼女とカラオケに来ることは少なくない。デートと言えば〆にカラオケ、というのはよくあることだ。
お互い歌うのは好きだし、彼女が言うには俺が歌うのを聞きたい…らしい。
まあ、俺も両手でマイク握ってるコイツが見たいのでお互い様だ。
…というのが前置きで。
彼女が今歌っているのが
『解剖は済んでいるんだ ジワジワなぶり殺してやる クモの巣は出来てるぜ』
「…頼むから本人の前で歌うな」
STEAL YOUR BREATH …俺のキャラソン。
キーが合わないらしくオクターブ上で出てくる歌詞に頭を抱える。
彼女の声で聞きたくなかった。
『Ahh―』
「それも再現しなくていい…」
演出で入れた吐息とか笑い声まで真似ようとするのは本当止めてくれ。
これで毎月全国ランキングの上位3位を争ってんだから、愛されてると解りつつもやっぱり止めて欲しい。
『…だって、花宮君歌ってくれないんだもん』
「何が悲しくて自分のキャラソン自分で歌うんだよ」
『私のために!』
「彼女に聞かせる歌詞では微塵もないな」
『でーもー…』
駄々をこねる彼女を尻目に次の曲が流れ始める…ん?俺が入れたやつじゃない。
しかも聞き覚えのある…
「おま、割り込みでいれるなよ!」
『スチブレとマッブレはセットだもん!』
「妙な略し方をするな」
『ひーとの不幸はー』
「歌うなって!」
ギャーギャー言いながらも演奏停止ボタンは押さないし、歌うのを邪魔することもしないが…。なんというか、普通に恥ずかしい。
『青春なんてゲームオーバー 二度と立ち上がれなくなるまで いくぜ』
歌いきった彼女は清々しそうだが、聞いてる俺はなんとも複雑な気分。
彼女が歌ってくれるのは嬉しいし、彼女の歌声でイイコちゃんがディスられてるのもなんかイイと思う。
……ただ、口調が俺なんだよな…。
虫けらとか、なぶり殺してやるとか。
元々語彙力底辺な彼女。俺と付き合わなければ使いもしないし意味も知らなかっただろう言葉。
普段小学生レベルのボキャブラリーで話している彼女が歌とはいえ「虫酸が走る」なんて、違和感しかない。
…まあ、俺の色に染まっている優越感があるのは事実だけど。
『花宮君は何歌うの?』
「お前がこの前はまった洋楽。また随分古いの聞いてたのな」
『あれね、英語の先生が授業のときかけてくれたの。歌詞はざっくりとしか解んないけど、好き』
前奏が流れてきて、彼女はピッタリと俺の隣に座る。
「…Everybody needs a little time away I heard her say from each other…」
シカゴの、Hard to Say I'm Sorry という曲。
ごめん、と言えないがために、彼女が離れていってしまう。それを引き留めたい男の歌。
「Hold me now It’s hard for me to say I’m sorry I just want you to stay」
謝れない、という気持ちは解る。
素直になれなくて、とはよくいったものだ。
俺が彼女を、コイツを知らずに傷つけたとして。俺は多分謝らない、謝れないだろう。
コイツが離れると言ったら、それが発端で初めて、謝りたいと思うのだ。
…けど、きっと喉まできてるのに、声に出せなくて。
「Hold me now I really want to tell you I’m sorry I could never let you go」
それでも、彼女を行かせるよりはマシだと、息を詰まらせながら言うんだろう。
「After all that we’ve been through I will make it up to you, I promise to You’re gonna be the lucky one」
悪かった…これからは、お前を大切にする。約束する。絶対…幸せにするから。
みたいな感じか。
あ?回想と訳が混ざってる?
知るかよ、回想も訳も変わんねぇからいいだろ。
『…まさか、花宮君の声で聞けるとは』
「お気に召したようでなにより」
『喧嘩してもこれ歌われたら一発で仲直りだよ。許す。抱き締めるよ!』
「どーも」
横からべったりと抱き付かれたので、同じように抱き締め返す。
別に喧嘩してねーのに。
…もしかして、キャラソン歌わないの根に持ってんのか?…なら、これで許してくれ。絶対カラオケでは歌わないから。
「…次は、お前、なんか可愛いのあったろ、あれ歌えよ」
『え、可愛いだけじゃわかんないよ』
「あー…あ、メルト」
『メルトね』
ボーカロイドが歌ってた、それ。
音が高くて、わかりやすい歌詞で、コイツが歌うとよく似合う。
デンモクを操作して曲をいれると、彼女は抱きついたままマイクも持たずに前奏を聞いている。
肩に顎を乗せるように、椅子に膝立ちして抱きついている彼女の唇は、耳の真横。
『…朝目が覚めて 真っ先に思い浮かぶ君のこと 』
…ここで歌うのかよ。
囁くようにメロディーを追いかける声。
サビに入るとキーが高くて出しにくいのだろう。
マイクを握りしめる癖が出て、俺はぎゅっと抱き締められる。
『だって…君のことが 好きなの』
その状況でこの歌詞だ。
心拍数がヤバい。
『お願い時間を止めて 泣きそうなの でも嬉しくて 死んでしまうわ!』
…俺も死にそうだ。
なんだこの状況。
『メルト 手を繋いで歩きたい!もうバイバイしなくちゃいけないの? 今すぐ私を抱き締めて …なんてね』
最後の なんてね が、わざと音を取らず、呟くように言うもんだから。
「…今日、泊まりにくるか?」
『へ?』
「そしたら、手も繋いで帰れるし、バイバイもしなくていいし、抱き締めてやることもできる。…なんてな?」
らしくない茶化し方をした。
本当は、すぐ横にあるその唇にどうやって触れようかと目論んでいるのに。
「ああ、泊まりに来ていいのは本当だ」
『いいの!?なら、行きたい!』
首もとで嬉しそうにはしゃぐ彼女が可愛い。
いっそ、姿勢は苦しいが無理矢理キスするか。もう触れたくてウズウズしてる。
『……あと…あの、ね?花宮君……チュウも…してほしい』
そんな俺の心を読んだかのような台詞だった。
しかもチュウとか。ガキかよ。可愛いな。
「それは今?帰ったら?」
『どっちも』
「ふはっ、賢いな」
帰ったら、なんて俺が待てなかったんだけど。
(ああ、本当に溶けそうだ)
(ジワジワなぶられるって、こんな感じかな)
触れた唇が熱くて、お互いそんな思考はすぐに飛んだ。
fin
※登場曲※
STEAL YOUR BREATH/花宮真
MAD BREAKER/花宮真
Hard to say I'm sorry/シカゴ
メルト/supercell/初音ミク
※キャラソンに対するメタな発言があります。
………花宮視点………
彼女とカラオケに来ることは少なくない。デートと言えば〆にカラオケ、というのはよくあることだ。
お互い歌うのは好きだし、彼女が言うには俺が歌うのを聞きたい…らしい。
まあ、俺も両手でマイク握ってるコイツが見たいのでお互い様だ。
…というのが前置きで。
彼女が今歌っているのが
『解剖は済んでいるんだ ジワジワなぶり殺してやる クモの巣は出来てるぜ』
「…頼むから本人の前で歌うな」
STEAL YOUR BREATH …俺のキャラソン。
キーが合わないらしくオクターブ上で出てくる歌詞に頭を抱える。
彼女の声で聞きたくなかった。
『Ahh―』
「それも再現しなくていい…」
演出で入れた吐息とか笑い声まで真似ようとするのは本当止めてくれ。
これで毎月全国ランキングの上位3位を争ってんだから、愛されてると解りつつもやっぱり止めて欲しい。
『…だって、花宮君歌ってくれないんだもん』
「何が悲しくて自分のキャラソン自分で歌うんだよ」
『私のために!』
「彼女に聞かせる歌詞では微塵もないな」
『でーもー…』
駄々をこねる彼女を尻目に次の曲が流れ始める…ん?俺が入れたやつじゃない。
しかも聞き覚えのある…
「おま、割り込みでいれるなよ!」
『スチブレとマッブレはセットだもん!』
「妙な略し方をするな」
『ひーとの不幸はー』
「歌うなって!」
ギャーギャー言いながらも演奏停止ボタンは押さないし、歌うのを邪魔することもしないが…。なんというか、普通に恥ずかしい。
『青春なんてゲームオーバー 二度と立ち上がれなくなるまで いくぜ』
歌いきった彼女は清々しそうだが、聞いてる俺はなんとも複雑な気分。
彼女が歌ってくれるのは嬉しいし、彼女の歌声でイイコちゃんがディスられてるのもなんかイイと思う。
……ただ、口調が俺なんだよな…。
虫けらとか、なぶり殺してやるとか。
元々語彙力底辺な彼女。俺と付き合わなければ使いもしないし意味も知らなかっただろう言葉。
普段小学生レベルのボキャブラリーで話している彼女が歌とはいえ「虫酸が走る」なんて、違和感しかない。
…まあ、俺の色に染まっている優越感があるのは事実だけど。
『花宮君は何歌うの?』
「お前がこの前はまった洋楽。また随分古いの聞いてたのな」
『あれね、英語の先生が授業のときかけてくれたの。歌詞はざっくりとしか解んないけど、好き』
前奏が流れてきて、彼女はピッタリと俺の隣に座る。
「…Everybody needs a little time away I heard her say from each other…」
シカゴの、Hard to Say I'm Sorry という曲。
ごめん、と言えないがために、彼女が離れていってしまう。それを引き留めたい男の歌。
「Hold me now It’s hard for me to say I’m sorry I just want you to stay」
謝れない、という気持ちは解る。
素直になれなくて、とはよくいったものだ。
俺が彼女を、コイツを知らずに傷つけたとして。俺は多分謝らない、謝れないだろう。
コイツが離れると言ったら、それが発端で初めて、謝りたいと思うのだ。
…けど、きっと喉まできてるのに、声に出せなくて。
「Hold me now I really want to tell you I’m sorry I could never let you go」
それでも、彼女を行かせるよりはマシだと、息を詰まらせながら言うんだろう。
「After all that we’ve been through I will make it up to you, I promise to You’re gonna be the lucky one」
悪かった…これからは、お前を大切にする。約束する。絶対…幸せにするから。
みたいな感じか。
あ?回想と訳が混ざってる?
知るかよ、回想も訳も変わんねぇからいいだろ。
『…まさか、花宮君の声で聞けるとは』
「お気に召したようでなにより」
『喧嘩してもこれ歌われたら一発で仲直りだよ。許す。抱き締めるよ!』
「どーも」
横からべったりと抱き付かれたので、同じように抱き締め返す。
別に喧嘩してねーのに。
…もしかして、キャラソン歌わないの根に持ってんのか?…なら、これで許してくれ。絶対カラオケでは歌わないから。
「…次は、お前、なんか可愛いのあったろ、あれ歌えよ」
『え、可愛いだけじゃわかんないよ』
「あー…あ、メルト」
『メルトね』
ボーカロイドが歌ってた、それ。
音が高くて、わかりやすい歌詞で、コイツが歌うとよく似合う。
デンモクを操作して曲をいれると、彼女は抱きついたままマイクも持たずに前奏を聞いている。
肩に顎を乗せるように、椅子に膝立ちして抱きついている彼女の唇は、耳の真横。
『…朝目が覚めて 真っ先に思い浮かぶ君のこと 』
…ここで歌うのかよ。
囁くようにメロディーを追いかける声。
サビに入るとキーが高くて出しにくいのだろう。
マイクを握りしめる癖が出て、俺はぎゅっと抱き締められる。
『だって…君のことが 好きなの』
その状況でこの歌詞だ。
心拍数がヤバい。
『お願い時間を止めて 泣きそうなの でも嬉しくて 死んでしまうわ!』
…俺も死にそうだ。
なんだこの状況。
『メルト 手を繋いで歩きたい!もうバイバイしなくちゃいけないの? 今すぐ私を抱き締めて …なんてね』
最後の なんてね が、わざと音を取らず、呟くように言うもんだから。
「…今日、泊まりにくるか?」
『へ?』
「そしたら、手も繋いで帰れるし、バイバイもしなくていいし、抱き締めてやることもできる。…なんてな?」
らしくない茶化し方をした。
本当は、すぐ横にあるその唇にどうやって触れようかと目論んでいるのに。
「ああ、泊まりに来ていいのは本当だ」
『いいの!?なら、行きたい!』
首もとで嬉しそうにはしゃぐ彼女が可愛い。
いっそ、姿勢は苦しいが無理矢理キスするか。もう触れたくてウズウズしてる。
『……あと…あの、ね?花宮君……チュウも…してほしい』
そんな俺の心を読んだかのような台詞だった。
しかもチュウとか。ガキかよ。可愛いな。
「それは今?帰ったら?」
『どっちも』
「ふはっ、賢いな」
帰ったら、なんて俺が待てなかったんだけど。
(ああ、本当に溶けそうだ)
(ジワジワなぶられるって、こんな感じかな)
触れた唇が熱くて、お互いそんな思考はすぐに飛んだ。
fin