短編①
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《懐かしかった》:花宮
2017 拍手
大学生花宮×居酒屋店員(同級生)
最初に気づいたのは花宮君だった。
「あ、久しぶり。3年ぶりくらいかな?」
席に座る彼と、そこに料理を運んでいった私。
居酒屋の、客と店員であった。
『あ。うん…そうだね。久しぶり』
相変わらず不気味な程綺麗な笑顔を向けられて、口元が引き攣る。
彼は中学の時に同じクラスで、学力を競い合ってた相手。…いや、競い"合って"た訳じゃない。
私が、勝手に追い付きたくて追いかけた人。
勉強も部活も、何一つ勝てない悔しさから同じ高校を選んだのに。
高校に入ったら差は歴然として。講座が同じになることすらなかった。
まして、今や彼は日本最高峰の現役大学生。
私は、専門学校を中退したフリーター。
思い起こされるのは傷の深い片想いだけではなく、根深い劣等感まで滲んでくる。
「…忙しい時に悪かったな、割引してくれたのか」
『この時期は仕方ないよ。店長が、知り合いなら引いてやれって』
「そうか。店長によろしく伝えてくれ。…あと、」
"すみませーん"
『はいただいまーっ!慌ただしくてごめんね、今日はありがと』
「…………おう」
"お待たせしました、ご注文は…"
満席状態のピーク帯。席でも会計でも、挨拶はそのくらいしかできなくて。
(あと、…なんだったのかな)
その後も忙しさは収まらず、閉店まで忘れてたのに。
『な…んで』
「待ってたんだよ。こんな時間まで働いてんのか」
午前2時、仕事を終えて裏口から出たら。
花宮君が立ってた。
『………っ』
「成人式にも居なかったろ?話でもと思ったんだが…これから空いてるか?」
『…な、んで』
「は?」
『なんで、私なんか覚えてたの。なんで、私に声をかけたの!なんで…なんでっ…!』
会いたくなかった。
走っても走っても追い付かないその背中を。
大好きで大好きでどうしようもない君のことを。
忘れていたかったのに。
「…懐かしかったんだよ」
『…』
「お前が、一生懸命馬鹿みたいに走り回ってるのを見たら、懐かしくなった。中学で俺を必死に追いかけてるお前に見えたんだ。ったく、同じ高校なのに全然会わなくなるし、どこ進学したか知らないうちに退学したって聞くし……今まで何してたか聞きたくなったんだよ、悪いかバァカ」
ああ、この話し方は本心だ。
しかも、花宮君が私に興味を持つなんて。
『……ありがと』
「は?何が?誘ったのがなら早く行くぞ、まだやってる店探さねーと」
違うよ。
私を、覚えててくれたこと。
『…うん。私にも、花宮君の話、聞かせて?』
fin
理想
2017 拍手
大学生花宮×居酒屋店員(同級生)
最初に気づいたのは花宮君だった。
「あ、久しぶり。3年ぶりくらいかな?」
席に座る彼と、そこに料理を運んでいった私。
居酒屋の、客と店員であった。
『あ。うん…そうだね。久しぶり』
相変わらず不気味な程綺麗な笑顔を向けられて、口元が引き攣る。
彼は中学の時に同じクラスで、学力を競い合ってた相手。…いや、競い"合って"た訳じゃない。
私が、勝手に追い付きたくて追いかけた人。
勉強も部活も、何一つ勝てない悔しさから同じ高校を選んだのに。
高校に入ったら差は歴然として。講座が同じになることすらなかった。
まして、今や彼は日本最高峰の現役大学生。
私は、専門学校を中退したフリーター。
思い起こされるのは傷の深い片想いだけではなく、根深い劣等感まで滲んでくる。
「…忙しい時に悪かったな、割引してくれたのか」
『この時期は仕方ないよ。店長が、知り合いなら引いてやれって』
「そうか。店長によろしく伝えてくれ。…あと、」
"すみませーん"
『はいただいまーっ!慌ただしくてごめんね、今日はありがと』
「…………おう」
"お待たせしました、ご注文は…"
満席状態のピーク帯。席でも会計でも、挨拶はそのくらいしかできなくて。
(あと、…なんだったのかな)
その後も忙しさは収まらず、閉店まで忘れてたのに。
『な…んで』
「待ってたんだよ。こんな時間まで働いてんのか」
午前2時、仕事を終えて裏口から出たら。
花宮君が立ってた。
『………っ』
「成人式にも居なかったろ?話でもと思ったんだが…これから空いてるか?」
『…な、んで』
「は?」
『なんで、私なんか覚えてたの。なんで、私に声をかけたの!なんで…なんでっ…!』
会いたくなかった。
走っても走っても追い付かないその背中を。
大好きで大好きでどうしようもない君のことを。
忘れていたかったのに。
「…懐かしかったんだよ」
『…』
「お前が、一生懸命馬鹿みたいに走り回ってるのを見たら、懐かしくなった。中学で俺を必死に追いかけてるお前に見えたんだ。ったく、同じ高校なのに全然会わなくなるし、どこ進学したか知らないうちに退学したって聞くし……今まで何してたか聞きたくなったんだよ、悪いかバァカ」
ああ、この話し方は本心だ。
しかも、花宮君が私に興味を持つなんて。
『……ありがと』
「は?何が?誘ったのがなら早く行くぞ、まだやってる店探さねーと」
違うよ。
私を、覚えててくれたこと。
『…うん。私にも、花宮君の話、聞かせて?』
fin
理想