短編①
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《カメリア》:花宮
花宮が鬱。
暗いお話 ハピエンではない
……………花宮視点………………
『花宮、できたよ』
その声に目をあければ、少し短くなった前髪と、切り揃えられた黒髪が目に入った。
『どう?』
「いい」
軽く手で撫でれば細かな髪が落ちて。
鬱陶しく思いつつも、彼女の腕に文句はなかった。
『花宮の髪はいつも綺麗ね。私、貴方の髪触るの好きよ』
「……そう」
彼女は思ったことをいつも口にする。
罵声ばかり浴びる俺に、分け隔てなく優しい言葉をかける馬鹿だった。
『ねえ花宮、お話聞かせて?』
「…楽しくねえぞ」
『いいの。貴方に何があったか知りたいだけ』
試合中、相手の選手を怪我させた。
それは少し前の話。
そう、良くないことをしたのね。と、彼女が困ったように笑ったのがその少し後。
「…怪我してる奴がいたから、休めるとこまで付き添ってやったんだ」
『うん』
「そしたら、助けるなんて何企んでるんだ、って…」
『うん』
「…ただ、困ってたから肩を貸してやったのに。今まで不誠実だなんて言った癖に、誠実にしたところで真になんかならねぇじゃねぇか」
これが、今の話。
まるっきり狼少年だ。
よくなったのは外側だけで、中身の歪みが直ってないことくらい自分でも解ってる。
でも、思ったことを口にする彼女に、あんな困ったような笑い方をさせるなら。
外側だけでも、見えるところは繕わなければと思ったのに。
繕ったところで、俺はもう、花にはなれやしないのだ。
他の人のように、綺麗に咲けやしないのだ。
『花宮。いいことをしたのね。その人に伝わらなくても、私はわかるよ。ありがとう、その人を助けてくれて』
そんな、首から落ちた花を、彼女は一緒に拾ってくれた。
人に近づこうとすればするほど傷つく花片にそっと寄り添って。
「…よかったんだよな」
『そうだよ。よく、頑張ったね』
潰れそうになる蕾を、抱き締めてくれる。
『ふふ、痛いよ、花宮』
「もう少し…」
『うん、いいよ。大丈夫』
彼女を繋ぎ止める術が解らない俺は、その手をきつく絡めて。
痛がりながら、その幸せを微笑うのだ。
「雨月…」
『…花宮……』
しかし、外側の繕った綻びは次第に大きくなって。内側の歪みとの軋轢は酷いものだった。
俗世でいう いいこと をすれば、最初は疑われ、寧ろ疎まれたのに。周りが慣れてくれば、今までの行為を思えばして当然とばかりに無下にされた。関心すら寄せられない。
「雨月…っ」
『うん。私はここにいるよ、知ってるよ、花宮が頑張ってるの。解ってるよ、花宮が苦しいの』
こんなに苦しい思いをしなければ、俺は生きていけないのに。
世間では然も当たり前のように流されて、本来あるべき感謝もない。
「…雨月、もう、嫌だ」
もう、咲けない。
枝は折れてるし、根はもげてる。幹に至っては放り出されて朽ちかけている。
こんなになっても、彼女を困らせたくないが為に軋轢に耐えてる俺の方が、よっぽどガラクタだ。
『…花宮…私を壊していいよ。私にぶつけてよ、それで、楽になれるなら』
ハッとして顔をあげる。
優しく微笑んでいるその顔は、慰めじゃなくて本心だ。
「嫌だ…お前を傷つけるくらいなら、俺が壊れた方がマシだ」
彼女の色に染まった俺は、彼女なしじゃもう咲けない。
それに、俺は彼女の為に、彼女の傍で咲きたいから。
『花宮…好きよ、大好き。一緒に、上手に生きる方法探そうね。一緒に、幸せになれる方法考えよう』
そう告げれば、ぎゅうっ、と。苦しいくらいに抱き締めてくれた。
「俺も、好きだ…幸せになれなくてもいいから、傍にいてくれ」
唯一、俺を認めてくれる場所で、俺は静かに泣いていた。
fin
「今夜の鬱語りは"人助けをしたのに居場所がなくなる花宮真"です」
というお題を引いたので、あまの様のカメリアを聞きながら書きました。
花宮はいつも、独り言を呟いては庭の古椿の下で泣いている。
end.
花宮が鬱。
暗いお話 ハピエンではない
……………花宮視点………………
『花宮、できたよ』
その声に目をあければ、少し短くなった前髪と、切り揃えられた黒髪が目に入った。
『どう?』
「いい」
軽く手で撫でれば細かな髪が落ちて。
鬱陶しく思いつつも、彼女の腕に文句はなかった。
『花宮の髪はいつも綺麗ね。私、貴方の髪触るの好きよ』
「……そう」
彼女は思ったことをいつも口にする。
罵声ばかり浴びる俺に、分け隔てなく優しい言葉をかける馬鹿だった。
『ねえ花宮、お話聞かせて?』
「…楽しくねえぞ」
『いいの。貴方に何があったか知りたいだけ』
試合中、相手の選手を怪我させた。
それは少し前の話。
そう、良くないことをしたのね。と、彼女が困ったように笑ったのがその少し後。
「…怪我してる奴がいたから、休めるとこまで付き添ってやったんだ」
『うん』
「そしたら、助けるなんて何企んでるんだ、って…」
『うん』
「…ただ、困ってたから肩を貸してやったのに。今まで不誠実だなんて言った癖に、誠実にしたところで真になんかならねぇじゃねぇか」
これが、今の話。
まるっきり狼少年だ。
よくなったのは外側だけで、中身の歪みが直ってないことくらい自分でも解ってる。
でも、思ったことを口にする彼女に、あんな困ったような笑い方をさせるなら。
外側だけでも、見えるところは繕わなければと思ったのに。
繕ったところで、俺はもう、花にはなれやしないのだ。
他の人のように、綺麗に咲けやしないのだ。
『花宮。いいことをしたのね。その人に伝わらなくても、私はわかるよ。ありがとう、その人を助けてくれて』
そんな、首から落ちた花を、彼女は一緒に拾ってくれた。
人に近づこうとすればするほど傷つく花片にそっと寄り添って。
「…よかったんだよな」
『そうだよ。よく、頑張ったね』
潰れそうになる蕾を、抱き締めてくれる。
『ふふ、痛いよ、花宮』
「もう少し…」
『うん、いいよ。大丈夫』
彼女を繋ぎ止める術が解らない俺は、その手をきつく絡めて。
痛がりながら、その幸せを微笑うのだ。
「雨月…」
『…花宮……』
しかし、外側の繕った綻びは次第に大きくなって。内側の歪みとの軋轢は酷いものだった。
俗世でいう いいこと をすれば、最初は疑われ、寧ろ疎まれたのに。周りが慣れてくれば、今までの行為を思えばして当然とばかりに無下にされた。関心すら寄せられない。
「雨月…っ」
『うん。私はここにいるよ、知ってるよ、花宮が頑張ってるの。解ってるよ、花宮が苦しいの』
こんなに苦しい思いをしなければ、俺は生きていけないのに。
世間では然も当たり前のように流されて、本来あるべき感謝もない。
「…雨月、もう、嫌だ」
もう、咲けない。
枝は折れてるし、根はもげてる。幹に至っては放り出されて朽ちかけている。
こんなになっても、彼女を困らせたくないが為に軋轢に耐えてる俺の方が、よっぽどガラクタだ。
『…花宮…私を壊していいよ。私にぶつけてよ、それで、楽になれるなら』
ハッとして顔をあげる。
優しく微笑んでいるその顔は、慰めじゃなくて本心だ。
「嫌だ…お前を傷つけるくらいなら、俺が壊れた方がマシだ」
彼女の色に染まった俺は、彼女なしじゃもう咲けない。
それに、俺は彼女の為に、彼女の傍で咲きたいから。
『花宮…好きよ、大好き。一緒に、上手に生きる方法探そうね。一緒に、幸せになれる方法考えよう』
そう告げれば、ぎゅうっ、と。苦しいくらいに抱き締めてくれた。
「俺も、好きだ…幸せになれなくてもいいから、傍にいてくれ」
唯一、俺を認めてくれる場所で、俺は静かに泣いていた。
fin
「今夜の鬱語りは"人助けをしたのに居場所がなくなる花宮真"です」
というお題を引いたので、あまの様のカメリアを聞きながら書きました。
花宮はいつも、独り言を呟いては庭の古椿の下で泣いている。
end.