花と蝶
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《高3春 祝生誕》
「ねー、次の休みランチいこうよ」
『え、私?』
「おう。なんだかんだで打ち上げもしないままだったしな」
「花宮は来ないけど、たまにはいいんじゃない?」
『でも、』
「………行ってこいよ」
『いいの?』
「ああ」
そんなやりとりで雨月と、俺を除く部員との食事が計画された。
これ自体仕組まれていて、何も知らないのは彼女だけ。
次の休みは彼女の誕生日だ。
「いいの?二人で1日過ごさなくて」
「それは普段と変わらねぇからな。寧ろ俺と居ると外食もできねぇし…家事休ませてやりたい」
「ヤバイ。家事メン。嫁を労るいい旦那」
「…外周、何十周がいい?なぁ?」
「誉めてんじゃん!照れんなし」
理由はこんな。
部員の力を借りて彼女の誕生日を祝う。ただそれだけ。
「すまない、当日は用事があって行かれないんだ。代わりにこのチケットを渡そう」
『ん?…!これ、新しく出来たクレープ屋さんの交換券!いいの?古橋君』
「ああ。俺は食べないから」
『ありがとう!』
行く前から嬉しそうな雨月を横目で見ながら、ふ…と息を漏らした。
(怪しまれてないみたいだね)
(今んとこな)
(マネは多分気づかないよ。メイン、応援してる)
それに、寝ていると思っていた瀬戸が反応して。小声で声をかけられる。
メイン、は。
俺が準備する誕生日プレゼントだ。
「お邪魔します」
「ああ。スリッパ、適当に使え」
用事があって行かれない…と言った古橋は。雨月の誕生日当日、昼過ぎに花宮家にいた。
「とりあえず必要な食材は買ってきた。まあ、花宮のことだから失敗することはないだろう」
「どうだかな」
「自信がないとは珍しい」
「仕方ないだろ、味見のしようがねぇんだ」
「そうだったな。粥の塩加減すら解らないんだったか」
テーブルに食材を並べながらそんなことを話す。
今回、雨月に俺が夕飯を作る…というのが誕生日プレゼントだ。あいつのクオリティーには程遠いだろうが、彼女なら喜ぶと思ったから。
メニューはグラタン。
偶々CMで"熱々のグラタンはママの味!家族で食べると美味しいね"みたいな文句が流れて。"いいなぁ"と、彼女が呟いたのを聞いたから。
古橋には彼女の好物だとしか伝えていないが、それも間違いではない。
ただ、彼女がグラタンを好きな理由は"一家団欒のイメージがあるから"が殆どを占めている。
「…まあ、0から作る材料もあるし混ぜて焼くだけのお手軽キットもある。分量通りに作れば不味くはならないだろう」
「……」
「完成するまでいるから、そう睨むな」
今更だが、古橋はプレゼントであるグラタンの見届け人かつ、料理の指導要員だ。
.
俺は、暫く鍋と睨み合いを続けていた。
「……」
「花宮、クイックタイプを使ってもいいと思う。彼女なら気持ちがあればそこには拘らないだろ」
「…もう一回」
3回目のホワイトソース。
未だに玉になったり、クリームとバターが分離したりと上手くいかない。
古橋が口を出した一回は形になったが、一人で作るとからっきしだ。
「記憶力がいいんだから、タイミングや加減も覚えれそうなものだが」
「覚えた通りにやってんだよっ!」
「花宮、バターが焦げる。弱火のままだ、焦ってはいけない」
「っ」
「…それが終わったら休憩だな」
少し焦げたホワイトソースを鍋から移してリビングに戻る。
苛々するがどうしようもなく、彼女がポットに作って行ってくれたアイスコーヒーを啜った。
「…花宮line見てくれ」
「あ?」
「やる気出るぞ」
「……」
古橋に促されて開いたアプリ。
そこにはメンバーから送られてきた、今出掛けている彼女の写真がズラリとアップしてあった。
クレープに始まり、コロッケにクロワッサン、焼鳥に団子。隣町の商店街を食べ歩きしているらしい。
「いい顔してるな。花宮が作ったって聞いたら、これ以上の笑顔で食べるんだろうな」
「……クリーム、湯煎かけてくる」
「付き合う」
ヤマや原が記念撮影とばかりに、彼女が何か食べる度に写真を撮って送ってくる。
どれも嬉しそうに、美味そうに笑っているから。
"負けたくない"と、どこかで思ってしまった。
「できたな。あとは彼女がくる時間に合わせて、アルミホイルをかけて5分、外して2分オーブンで焼けばいい」
「…悪かったな、付き合わせて」
「構わない。俺も花宮に何か教えるなんて貴重な体験ができた」
「言ってろ」
じゃあな。
古橋を玄関で見送れば。
"今羽影ちゃんと駅で分かれたよ"と、原から連絡が入った。
彼女は喜ぶだろうか。
いや、喜ぶだろう。
けど。
(ああ、クソ…落ち着かねぇ)
緊張したのなんて、いつぶりだろうか。
.
『ただいま!』
「…おかえり」
『なんか新鮮だな、真君におかえりって言ってもらうの。誰かの待っててくれる家に帰ってこれるのって幸せだね』
「……そ。今日は楽しかったか?」
『うん!いっぱい美味しいものがあったから、一緒に食べたくて作れそうなものはメモしてきたよ!串焼きとか甘くないクレープ。里芋のコロッケとアイスクロワッサン。今度作るからね!』
「………ああ」
楽しんできたという彼女は。やっぱり頭が悪いらしい。
外出先でも結局、俺のことが頭から離れないあたりとか。
『じゃ、夕飯の用意するから待っててね』
「しなくていい」
『え…』
「作ってある。お前、今日がなんの日か覚えてねぇのか」
『……あ、え、まさか、それで…』
「鈍くて助かったんだか味気ねぇんだか……。誕生日、おめでとう」
顔を見ながら言えるほど素直じゃない俺の視線は。
暫く彼女の足元を見つめていた。
その視界に彼女の手荷物が急に映って。足が近づいてきたと思ったら軽い衝撃が体を襲う。
『ありが、とう。どうしよ…凄く嬉しい』
「…まだ見てもいねぇのに」
『だって、真君が祝ってくれたの初めてだから…』
ぎゅうっとしがみつくように抱きついた彼女は、耳まで赤くして俯いている。
「まだ序の口だぞ。礼を言うつもりなら祝い終わってからにしろ」
『っ』
「…焼けたみたいだな」
チンッと軽い音がして。
グラタンの焼き上がりを知る。
『夕飯なぁに?』
「座って待ってろ。持ってくるから」
ダイニングの椅子に彼女を座らせてグラタンを運ぶ。
焦げ目も適度についてるし、パセリもかけた。多分大丈夫。
『わぁっ…』
「味、悪くはない筈だ」
目の前に置けば、彼女は目を丸くして暫し固まる。
そして手を合わせて"頂きます"とはにかんだ。
『…真、君』
「……ん」
彼女がそれを口に運んだのを見て自分も口に入れる。
しょっぱくないし、マカロニも生じゃない。ソースも温まってるし、不味くはない筈。
『美味しい…嬉しい…私がグラタン好きなの、覚えててくれたんだね…っ』
「…泣くなよ」
『だって…っ、家族みたいで、嬉しい、から』
「みたい、じゃねぇよ」
『え?』
彼女は目を潤ませてスプーンを再び口へ運ぶ。
それが、俺の言葉で手を止めた。
.
「…言うつもりはなかったが、いいや。今は"みたい"かもしれねぇが、俺はお前と家族になるつもりだし、今も他人とは思ってない」
『っ…、ま、こ』
「これも飯の後で渡そうと思ってたが、先に渡すわ。手ぇ出せ」
『…こう?』
「指輪はまだ渡してやれねぇけど…」
彼女の手首に、銀色の細いブレスレットを通す。
「手錠。絶対逃がさないからな」
今はきっと。俺と雨月は花と蝶ではなく、蜘蛛と蝶だ。
彼女を巣に捕らえておくために、糸を必死に巻いている。
『逃げない。逃げないから、真君も…離さないでね?』
その糸(ブレスレット)を、彼女は大事そうに撫でて微笑んだ。
「離す気がないから渡したんだろうが。ほら、冷めないうちに食え」
『うん、ありがとう!』
泣きそうな顔で笑いながら、彼女はゆっくり完食した。
食べ終わった後も上機嫌で俺の隣に座り、寄りかかりながらブレスレットを撫でてはニヤニヤとしている。
「…そんなに気に入ったか」
『うん。だって手錠って…真君らしい』
「…そう」
アクセにしなよ。と言った原に、心のそこでグッジョブと思った。絶対口にはしないが。
「…お前、推薦入試で夏までに受かれよ」
『え、何、急に』
「俺も推薦で受かる。そしたら、夏休みの空いた時間で一緒に部屋を探しにいくからな」
『…っ、うん』
用意したプレゼントの中で、形のない最後のものを彼女に送った。
この先も、彼女といるという意思。
「1Kじゃ狭いか。部屋はどのみち1つでいいし、1DKないし1LDKだな」
『うん…うん』
それに現実味を加えれば、彼女はやっぱり泣きそうに笑って頷いた。
そして、
『ありがとう、こんなに嬉しい誕生日、初めて』
「…来年も祝うからな」
『ふふ、もう楽しみ』
「バァカ」
そういいながら抱きついたから。
その額に唇を寄せた。
これから先。
毎年雨月の誕生日は、花宮がグラタンを焼く日になった。
(瀬戸、雨月に泣かれた)
(どうせ嬉し泣きでしょ。そんなことで夜中に起こさないで)
(夜中にお前がlineの着信音で起きるとはおもえないが)
(…来るだろうとは予測してた。グループにも送りなよ、皆気にしてる。マネは皆のアイドルだから)
(あいつは俺のだ)
(流石に皆自分の命は大事だと思うよ)
Fin.
「ねー、次の休みランチいこうよ」
『え、私?』
「おう。なんだかんだで打ち上げもしないままだったしな」
「花宮は来ないけど、たまにはいいんじゃない?」
『でも、』
「………行ってこいよ」
『いいの?』
「ああ」
そんなやりとりで雨月と、俺を除く部員との食事が計画された。
これ自体仕組まれていて、何も知らないのは彼女だけ。
次の休みは彼女の誕生日だ。
「いいの?二人で1日過ごさなくて」
「それは普段と変わらねぇからな。寧ろ俺と居ると外食もできねぇし…家事休ませてやりたい」
「ヤバイ。家事メン。嫁を労るいい旦那」
「…外周、何十周がいい?なぁ?」
「誉めてんじゃん!照れんなし」
理由はこんな。
部員の力を借りて彼女の誕生日を祝う。ただそれだけ。
「すまない、当日は用事があって行かれないんだ。代わりにこのチケットを渡そう」
『ん?…!これ、新しく出来たクレープ屋さんの交換券!いいの?古橋君』
「ああ。俺は食べないから」
『ありがとう!』
行く前から嬉しそうな雨月を横目で見ながら、ふ…と息を漏らした。
(怪しまれてないみたいだね)
(今んとこな)
(マネは多分気づかないよ。メイン、応援してる)
それに、寝ていると思っていた瀬戸が反応して。小声で声をかけられる。
メイン、は。
俺が準備する誕生日プレゼントだ。
「お邪魔します」
「ああ。スリッパ、適当に使え」
用事があって行かれない…と言った古橋は。雨月の誕生日当日、昼過ぎに花宮家にいた。
「とりあえず必要な食材は買ってきた。まあ、花宮のことだから失敗することはないだろう」
「どうだかな」
「自信がないとは珍しい」
「仕方ないだろ、味見のしようがねぇんだ」
「そうだったな。粥の塩加減すら解らないんだったか」
テーブルに食材を並べながらそんなことを話す。
今回、雨月に俺が夕飯を作る…というのが誕生日プレゼントだ。あいつのクオリティーには程遠いだろうが、彼女なら喜ぶと思ったから。
メニューはグラタン。
偶々CMで"熱々のグラタンはママの味!家族で食べると美味しいね"みたいな文句が流れて。"いいなぁ"と、彼女が呟いたのを聞いたから。
古橋には彼女の好物だとしか伝えていないが、それも間違いではない。
ただ、彼女がグラタンを好きな理由は"一家団欒のイメージがあるから"が殆どを占めている。
「…まあ、0から作る材料もあるし混ぜて焼くだけのお手軽キットもある。分量通りに作れば不味くはならないだろう」
「……」
「完成するまでいるから、そう睨むな」
今更だが、古橋はプレゼントであるグラタンの見届け人かつ、料理の指導要員だ。
.
俺は、暫く鍋と睨み合いを続けていた。
「……」
「花宮、クイックタイプを使ってもいいと思う。彼女なら気持ちがあればそこには拘らないだろ」
「…もう一回」
3回目のホワイトソース。
未だに玉になったり、クリームとバターが分離したりと上手くいかない。
古橋が口を出した一回は形になったが、一人で作るとからっきしだ。
「記憶力がいいんだから、タイミングや加減も覚えれそうなものだが」
「覚えた通りにやってんだよっ!」
「花宮、バターが焦げる。弱火のままだ、焦ってはいけない」
「っ」
「…それが終わったら休憩だな」
少し焦げたホワイトソースを鍋から移してリビングに戻る。
苛々するがどうしようもなく、彼女がポットに作って行ってくれたアイスコーヒーを啜った。
「…花宮line見てくれ」
「あ?」
「やる気出るぞ」
「……」
古橋に促されて開いたアプリ。
そこにはメンバーから送られてきた、今出掛けている彼女の写真がズラリとアップしてあった。
クレープに始まり、コロッケにクロワッサン、焼鳥に団子。隣町の商店街を食べ歩きしているらしい。
「いい顔してるな。花宮が作ったって聞いたら、これ以上の笑顔で食べるんだろうな」
「……クリーム、湯煎かけてくる」
「付き合う」
ヤマや原が記念撮影とばかりに、彼女が何か食べる度に写真を撮って送ってくる。
どれも嬉しそうに、美味そうに笑っているから。
"負けたくない"と、どこかで思ってしまった。
「できたな。あとは彼女がくる時間に合わせて、アルミホイルをかけて5分、外して2分オーブンで焼けばいい」
「…悪かったな、付き合わせて」
「構わない。俺も花宮に何か教えるなんて貴重な体験ができた」
「言ってろ」
じゃあな。
古橋を玄関で見送れば。
"今羽影ちゃんと駅で分かれたよ"と、原から連絡が入った。
彼女は喜ぶだろうか。
いや、喜ぶだろう。
けど。
(ああ、クソ…落ち着かねぇ)
緊張したのなんて、いつぶりだろうか。
.
『ただいま!』
「…おかえり」
『なんか新鮮だな、真君におかえりって言ってもらうの。誰かの待っててくれる家に帰ってこれるのって幸せだね』
「……そ。今日は楽しかったか?」
『うん!いっぱい美味しいものがあったから、一緒に食べたくて作れそうなものはメモしてきたよ!串焼きとか甘くないクレープ。里芋のコロッケとアイスクロワッサン。今度作るからね!』
「………ああ」
楽しんできたという彼女は。やっぱり頭が悪いらしい。
外出先でも結局、俺のことが頭から離れないあたりとか。
『じゃ、夕飯の用意するから待っててね』
「しなくていい」
『え…』
「作ってある。お前、今日がなんの日か覚えてねぇのか」
『……あ、え、まさか、それで…』
「鈍くて助かったんだか味気ねぇんだか……。誕生日、おめでとう」
顔を見ながら言えるほど素直じゃない俺の視線は。
暫く彼女の足元を見つめていた。
その視界に彼女の手荷物が急に映って。足が近づいてきたと思ったら軽い衝撃が体を襲う。
『ありが、とう。どうしよ…凄く嬉しい』
「…まだ見てもいねぇのに」
『だって、真君が祝ってくれたの初めてだから…』
ぎゅうっとしがみつくように抱きついた彼女は、耳まで赤くして俯いている。
「まだ序の口だぞ。礼を言うつもりなら祝い終わってからにしろ」
『っ』
「…焼けたみたいだな」
チンッと軽い音がして。
グラタンの焼き上がりを知る。
『夕飯なぁに?』
「座って待ってろ。持ってくるから」
ダイニングの椅子に彼女を座らせてグラタンを運ぶ。
焦げ目も適度についてるし、パセリもかけた。多分大丈夫。
『わぁっ…』
「味、悪くはない筈だ」
目の前に置けば、彼女は目を丸くして暫し固まる。
そして手を合わせて"頂きます"とはにかんだ。
『…真、君』
「……ん」
彼女がそれを口に運んだのを見て自分も口に入れる。
しょっぱくないし、マカロニも生じゃない。ソースも温まってるし、不味くはない筈。
『美味しい…嬉しい…私がグラタン好きなの、覚えててくれたんだね…っ』
「…泣くなよ」
『だって…っ、家族みたいで、嬉しい、から』
「みたい、じゃねぇよ」
『え?』
彼女は目を潤ませてスプーンを再び口へ運ぶ。
それが、俺の言葉で手を止めた。
.
「…言うつもりはなかったが、いいや。今は"みたい"かもしれねぇが、俺はお前と家族になるつもりだし、今も他人とは思ってない」
『っ…、ま、こ』
「これも飯の後で渡そうと思ってたが、先に渡すわ。手ぇ出せ」
『…こう?』
「指輪はまだ渡してやれねぇけど…」
彼女の手首に、銀色の細いブレスレットを通す。
「手錠。絶対逃がさないからな」
今はきっと。俺と雨月は花と蝶ではなく、蜘蛛と蝶だ。
彼女を巣に捕らえておくために、糸を必死に巻いている。
『逃げない。逃げないから、真君も…離さないでね?』
その糸(ブレスレット)を、彼女は大事そうに撫でて微笑んだ。
「離す気がないから渡したんだろうが。ほら、冷めないうちに食え」
『うん、ありがとう!』
泣きそうな顔で笑いながら、彼女はゆっくり完食した。
食べ終わった後も上機嫌で俺の隣に座り、寄りかかりながらブレスレットを撫でてはニヤニヤとしている。
「…そんなに気に入ったか」
『うん。だって手錠って…真君らしい』
「…そう」
アクセにしなよ。と言った原に、心のそこでグッジョブと思った。絶対口にはしないが。
「…お前、推薦入試で夏までに受かれよ」
『え、何、急に』
「俺も推薦で受かる。そしたら、夏休みの空いた時間で一緒に部屋を探しにいくからな」
『…っ、うん』
用意したプレゼントの中で、形のない最後のものを彼女に送った。
この先も、彼女といるという意思。
「1Kじゃ狭いか。部屋はどのみち1つでいいし、1DKないし1LDKだな」
『うん…うん』
それに現実味を加えれば、彼女はやっぱり泣きそうに笑って頷いた。
そして、
『ありがとう、こんなに嬉しい誕生日、初めて』
「…来年も祝うからな」
『ふふ、もう楽しみ』
「バァカ」
そういいながら抱きついたから。
その額に唇を寄せた。
これから先。
毎年雨月の誕生日は、花宮がグラタンを焼く日になった。
(瀬戸、雨月に泣かれた)
(どうせ嬉し泣きでしょ。そんなことで夜中に起こさないで)
(夜中にお前がlineの着信音で起きるとはおもえないが)
(…来るだろうとは予測してた。グループにも送りなよ、皆気にしてる。マネは皆のアイドルだから)
(あいつは俺のだ)
(流石に皆自分の命は大事だと思うよ)
Fin.