ライトラスト ‐§2‐
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「……なあミオ、その紙の束」
「言うな、訊くな、手伝って」
階段で出くわしたデュースとユウが引きつった表情で指差したのは、私が両腕で抱える冊子たち。それはリドルから手渡された飛行術マニュアル――基本編上中下、応用編上中下、上級者編上中下、記述試験対策番外編上中下。どれも両面みっしり、さらに大判の図解入りで大きく重たい仕様。
「リドルのヤツ、気合入りすぎなんだゾ…」
「大丈夫?少し持とうか」
「ありがとうユウ、でもこの階段降りきってから――わ、」
話をしながら、注意散漫だったのが災いした。崩れそうな冊子のバランスを取ろうとした結果、大きく足を踏み外す。頭が真っ白になる。それでも、借りた冊子は落とすまいと強く抱きしめた。内臓が浮くような、浮遊感。
「ミオ!!」
デュースの焦った声と同時に腕を掴まれ、腰に腕が回って引き留められる。バタバタと冊子がばらまかれて落ちる音がした。
「大丈夫!?」
「大丈夫か、ミオ!」
「え…ああ…だい、じょうぶ」
踏み外したはずの足は、数段下の階段をしっかり踏みしめていた。
――私は確かに足を踏み外したはずなのに。
とっさにバランスを取ろうと手放してしまったのか、冊子は全て階段にばらまかれていた。
――直前にしっかり抱えたはずなのに。
無意識に転ばないようにした本能だろうが、どうにも違和感がある。
「あーあー、見てらんないっスね。こーんな往来でイチャイチャされちゃあ」
上階からの冷やかす声で、今の状況を思い出す。デュースに後ろから抱きしめられているような格好。
「え、うわあ!悪いミオ!」
「ううん、ありがとうデュース。助かった」
違和感は忘れることにする。咄嗟の防衛本能だ、無意識に体が動くことなんていくらでもある。それに不可解なことなんてない。
だって、私は魔法に掛かりにくいのだ。
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