ライトラスト ‐§1‐
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ぽん、と音がして瞬く間にリリアの姿が消えた。意味深な紅い視線が記憶にこびりついて離れない。本質を見透かして、そのうえで嗤った…そんなはずはないのに、そうとしか思えなくなる瞳。
「あっちの席とオレたちの席、軽く二十メートル以上離れてんのに、オレらの会話が聞こえてたってこと?コワッ!」
「ま、まあ…そんなわけでディアソムニア寮は少し特殊な奴が多いイメージだな。魔法全般に長けた優秀な生徒が多い。寮長のマレウス・ドラコニアは世界でも五本の指に入る魔法士と言われてるくらいだ」
「マレウスくんは正直、ヤバヤバのヤバだよね。つか、それを言うならウチの寮長も激ヤバなんだけど~」
視線を落として、リリアの視線の意味を考える。だから、エースの背後に近づいてくる人物に気づかなかった。
「ほんっとにな!タルトをひと切れ食ったくらいでこんな首輪つけやがって。心の狭さが激ヤバだよ」
「ふうん?ボクって激ヤバなの?」
「そーだよ。厳格を通り越して横暴だろ、こんなん」
「エース!後ろ!」
「でぇっ!寮長!?」
寮長?
気になるワードに、思考から我に返る。溌溂とした赤い髪、大きくも吊り上がった目。先ほどのリリア程まではいかなくとも、少年と呼んでも差し支えない面立ちの生徒が不機嫌そうに腕を組んで立っていた。
女王の法律を遵守する、厳格な先輩寮長。予想とは異なる容姿に思わず凝視してしまう。
この生徒がエースに魔法封じをかけた寮長…?
「おっと、リドルくん。今日も激ヤバなくらいかわい~ね!」
ケイトの言う通り、「かわい~」という形容が似合う。不服だったらしいが、むっとしたような唇からもあまり怖さは感じられない。やはり彼が寮長だというのは考えづら――
「ふん。ケイト、あまりおしゃべりが過ぎるとそのよく回る口ごと首をはねてしまうよ」
――なるほどこれは噂の寮長だ。
「キミたちは昨日退学騒ぎになった新入生か。…まったく、学園長も甘い。規律違反を許していてはいずれ全体が緩んで崩れる。
ルールに逆らったやつはみんな一思いに首をはねてしまえばいいのに」
それは魔法的な意味?物理的な意味?と聞きたくなってしまう。
とにかく噂にたがわぬ厳格さのようだ。退学騒ぎの一味として目を付けられてはたまらない。目立たないよう念じていると、エースがへらりと笑った。
「あのー、ところで寮長。この首輪って……外してもらえたりしませんかね?」
「反省しているようなら外してあげようかと思っていたけど、先ほどの発言からしてキミに反省の色があるようには見えないな。しばらくそれをつけて過ごすといい。
さあ、昼食を食べたらダラダラ喋っていないで早く次の授業の支度を。
“ハートの女王の法律第二百七十一条・昼食後は十五分以内に席を立たねばならない”」
「え、なにそれ」
「何か文句が?」
「いえなにも」
「よろしい。ルール違反は…おわかりだね?」
突然の妙な法律につい口をはさんでしまい、吊り上がった眦がこちらに向けられた。
彼はやはり“ハートの女王の法律”に従って、購買へ向かい去っていく。周囲に居たハーツラビュル寮生も気を張っていたらしく、彼が居なくなったことで張りつめていた場はほっと安堵した。
「ふうん。なるほどね、エースの言い分も少しわかったかもしれない」
「だろ!?」
「超カンジが悪いんだゾ、アイツ!」
「……寮長は、入学して一週間と経たずに寮長の座についた。少し言葉がキツくなりがちだけど、寮を良くしようと思ってのことで音は悪い奴じゃないんだ」
「根が良いやつはいきなり他人に首輪つけたりしないんだゾ!」
「ははは…」