ライトラスト ‐§1‐
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想像以上に根に持つ性格だったエースがリドル寮長に提示した条件は「なんでもない日」のパーティーをやりなおし、リドル寮長が自力で作ったタルトを持参することだった。
力尽きて倒れた相手に言いつけるには少々やり過ぎなきらいはあるが、一応言い分としては筋は通っている……のかも、しれない。
「リドルを医務室まで運ぶ。…ミオ、手伝ってくれるか?」
「え?」
「…はいはーい、庭はオレたちが片づけておくから♪いってらっしゃーい」
思わぬ大抜擢にぼけっとしているとケイト先輩に背中を押され、半ば無理やりトレイ先輩の後を追う。エースとグリムの「ずっりー!」「ずるいんだゾ!」という声は聞こえないことにした。
というか、トレイ先輩ひとりで十分な気がするのだが。
「悪いな、俺じゃ身長が違い過ぎてリドルに肩を貸してやれない」
「や、その身長差なら背負うとか抱っことか出来るのでは…うわっ!?」
ずし、と右肩に掛かるのはリドル寮長の全体重。咄嗟に倒れこみそうになるのをなんとか踏ん張る。
「あぶな…っ!だ、大丈夫…ですか?肩は貸せますけど……歩け、ます?」
「うん……」
精神が不安定になっているせいか、素直なリドル寮長は頷く。のしかかられたものは仕方ないので、右肩の重みを連れて医務室に行くことにする。
ゆっくり歩きながら、疑問を口にする。
「……あの」
「なんだ?」
「私とリドル寮長とトレイ先輩って、直接会ったことがあるんですか?」
「…やっぱり覚えてなかったか。エレメンタリースクールの交流遠足があったのは覚えてるか?」
「知らないです…」
「薔薇の女王の歴史記念館は?」
「さあ……」
「だそうだ、リドル」
呼びかけられて、うつむきがちだったリドル寮長が顔を上げる。すぐ横にある赤い髪が頬をくすぐって、思わず笑ってしまった。
「……わらった」
「あ、すみません。くすぐったくて」
「…その横顔のほうが、いいな」
「はい?」
リドル寮長の方に顔を向ければ、驚いたふうに私を見ていた。じっと見つめてくるものだから照れ臭いような、恥ずかしいような感情が湧いてきて前を向く。
「……さて、ミオも重たいだろ?そろそろ代わるか」
用が済んだとばかりにいとも簡単にリドル寮長をおぶさったトレイ先輩を睨み上げてしまったのは許して欲しい。