ライトラスト ‐§1‐
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戦線から一歩下がり、状況を俯瞰していたユウが声を上げる。
「――いまだ!」
「オッケー!」
「ふな゛~~っ!!」
凶悪な鋭さを持って突き出された薔薇の枝は、トレイ先輩のドゥードゥル・スートでトランプの嵐へ変わる。意図せずして目くらましになったその隙をエースの風魔法が、燃え盛る炎を纏って駆け抜けた。
「う、ぐっ」
どんな強靭な薔薇も燃やされてしまえば塵へと変わる。極めつけ、駄目押しの一撃はもはやおなじみだった。
「すみません、寮長。一発入れさせてもらいます!――いでよ!大釜!!」
――――
長い睫毛が震えて、ゆっくりと瞼が上がっていく。覗いた瞳に、もう狂気は宿っていなかった。
一同が安堵する中心で、リドル寮長はぽつり、ぽつりと言葉をこぼした。
「ボク……本当は、マロンタルトが食べたかった」
「へっ?」
「薔薇は白だっていいし、フラミンゴもピンクでいい」
「リドル……」
「お茶に入れるのは角砂糖より蜂蜜が好きだし、レモンティーよりミルクティーが好きだ。みんなと食後のおしゃべりだってしたい……」
ルールに抑圧されていたリドル寮長の本音が、オーバーブロットという暴走状態を経て明らかになっていく。
「ずっと、もっとトレイたちと、遊びたかった…ミオと、仲良くなろうって、言いたかった……う、…うわああああん!」
「……俺も悪かった。お前が苦しんでるのを知ってたのに、ずっと見ないふりをしてた。
だから、今日は言うよ。リドル、お前のやり方は間違ってた。だからみんなにちゃんと謝るんだ」
失った子供時代を取り戻すかのように、泣きじゃくりながら謝る。あんなにも横暴で高圧的な女王はもういない。ここにいるのは過ちを認め、自分自身の本音を見つけた一人の少年だ。
良い方向に解決しそうで、頬が緩む。ふいに、エースが一歩進み出た。
「オレ、寮長が今までの行動を謝ってくれたら言おうと思ってたことがあんスけど……」
この事件の発端は、エースとリドルの衝突だ。
このふたりが和解することが、真にこの事件の解決と言える。エースが、すうっと大きく息を吸った。……息を吸った?
「ゴメンの一言で済むわけねーだろ!!絶ッッ対許してやらねー!!!」