ライトラスト ‐§1‐
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満ちる空気が重苦しいものになっていく。怒りで顔を真っ赤にしたリドル寮長が杖を振ると、庭に植わっていた薔薇の木が地響きを上げながら根元ごと宙に浮かんでいく。
「こ、これって!?」
「ユウ、私から離れないで!」
「うわわ…!庭中のバラの木が全部浮き上がっていくんだゾ……!」
「なんて大掛かりな魔法なんだ!まさかアレ全部で突っ込んでくる気か!?」
浮かび上がった薔薇の木たちは円状にエースを取り囲み、ミサイルのようにその砲身を向けた。何が起ころうとしているのか、その場の全員が察する。
「薔薇の木よ、あいつの身体をバラバラにしてしまえ!!」
「早く逃げて!」
ユウが叫ぶ。ここからでは
前世の記憶も、今世で得た力も、私はなにひとつ活かせない。たったひとりの級友を助けることもできない。何が特待生だ、何が街で噂の完璧少女だ。肝心な時に役に立つことができない。私はなにも変わっちゃいない―――!
「エース!」
重苦しい空気が変わる。紙の音がして、薔薇の木々が消えた。
「……あ、れ?生きてる?なんだこれ、トランプ?」
「薔薇の木が全部トランプに変わった!?これは……」
ひらひらと辺りに舞うのは、様々な柄のトランプ。エースは無事。
混乱する一同の前に、トレイ先輩が進み出た。
「リドル、もうやめろ!」
「トレイの“ドゥードゥル・スート”!?えっ、どういうこと?」
「魔法封じの首輪が外れたんだゾ!」
状況を察したケイト先輩も驚いているようだった。
「言っただろ。俺の“ドゥードゥル・スート”は少しの間ならどんな要素も上書きすることが出来る。だから…リドルの魔法を俺の魔法で上書きした。」
「は……?トレイに魔法を上書きされた……?ボクの魔法よりキミの魔法の方が優れてるってこと?」
「そんなことあるわけないだろ。リドル、いったん落ち着いて話を聞いてくれ。これ以上はお前が孤立していくだけだ、皆の顔を見てみろ」
「キミもボクが間違ってるって言いたいの?ずっと、ずっと厳しいルールを守って頑張ってきたのに!
いっぱいいっぱい我慢したのに!ボクは…ボクは…信じないぞ!!」
足元が大きく揺れ、地鳴りが響く。それは自然の物ではなく、目の前の小柄な、一人の少年の持つ魔力によって引き起こされているものだった。先ほどと同じか、それ以上の魔法を使おうとしているのだ。
「いけませんローズハートくん!それ以上魔法を使えば、魔法石がブロットに染まりきってしまう!」
「ボクは…ボクこそが!!絶対、正しいんだ――っ!!!」
黒い靄が一面を覆った。恐ろしいものを感じ取って、グリムを抱いているユウを護るようにぎゅっと抱きしめる。視界を覆うそれが晴れた時、そこに立っていたのは寮長服ではない、黒と真紅のドレスを纏ったリドル寮長。そしてその後ろに浮かぶおぞましいヒト型のなにか。
「ボクに逆らう愚か者ども。そんなやつらはボクの世界にいらない。
ボクの世界ではボクこそが法律。ボクこそが世界のルールだ!」