ライトラスト ‐§1‐
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マロンタルト試食会のあとは片付け。ガチャガチャと洗い物の音がする中でテーブルを拭いていると、トレイ先輩に手招きされた。
「ミオ。こっちの片づけ手伝ってくれるか?」
「わかりました」
「フォークとケーキサーバーを拭いて、元の場所に戻す。こっちの引き出しにしまうんだが、水滴が残らないようにこっちの柔らかい布で拭いてからしまってくれ」
手渡されたのはおそらくマイクロファイバーのクロス。利き手にクロス、もう一方の手にフォークを持って丁寧に拭いていく。沈黙も気まずいので当たり障りない謝辞を述べることにした。
「今日はありがとうございます。色々と面倒を見てもらってしまって」
「かまわないさ。今季の栗の糖度も分かったしな」
「タルト、ごちそうさまでした」
「お粗末さま。でも本当は甘いもの苦手なんじゃないか?」
驚いて手が止まる。トレイは穏やかな表情のままだ。
「…どうして、そう思ったんです?」
「なんとなくだな。フォークの進みが遅かったし、ひとりだけ落ち着いていたから気になった」
僅かな違和感を感じ取って察したというのか。タルトにはオイスターソースが必要不可欠だなんて嘘をさらりと吐くくらいだし、柔和な性格に見えてなかなか侮れないのかもしれない。
「
「そうですね……味はマロンタルトのままでしたね」
「そうか。もしかしたら魔法に掛かりにくい体質なのかもしれないな」
「でも元々、甘いものは好きなんです。昔よりは食べられなくなって、少し驚いただけで」
「…分かったよ。次に機会があれば、甘さ控えめのフルーツタルトにしよう」
ぽん、と頭に手のひらが置かれた。
「あ、悪い。つい弟たちにするみたいに」
「私は構いませんよ。…弟さんたちよりは、ずっと年上だと思いますけどね」