ライトラスト ‐prologue‐
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一人の異世界人と一匹の魔獣が当面の衣食住の提供と引き換えに提示された条件は、学園の雑務をこなすこと。
不満たらたらなグリムと所在なさげなユウのコンビに不安を覚えつつも、授業を受けるために途中別れる。
今はまだ単独で受けることのできる講義だが、そのうち寮に振り分けてもらわないと授業に支障が出るだろう。いったいどの寮に振り分けられるのか――。教室に入ってぐるりと見回すと、見ただけでも分かる個性的な面々が一斉にこちらを見た。
両親によって他校への入学を断られてしまった私を哀れに思った学園長がたまたま入学を許可してくれただけとはいえ、特例の新入生。しかも正式入学ではありえない数少ない女生徒。注目されるのは仕方のない事なのかもしれない。
好機の視線に晒されつつ、椅子を探した。
――――
長い講義のあと、予鈴が響いてほっとする。気がかりなのはユウさんとグリムだ。探しに行こうと席を立つと、知らない声に呼び止められた。
振り返る。制服をきっちりと着こなしており、模範的な生徒といった風だ。眼鏡の奥の理知的な瞳が、私を認めるなり笑みを形作った。
「初めまして。僕はアズール・アーシェングロット。オクタヴィネル寮の寮長で、二年生です」
「初めまして。何か御用でしょうか」
「ええ、それはもう。確か昨日、入学騒ぎの時に面白い魔法を使っていましたよね?あの魔法について――」
「喧嘩だ喧嘩!メインストリートで魔法を使って喧嘩してるぜ!」
「昨日の狸と一年のトラッポラが、バッチバチにやりあってんぞー!」
勢いよく教室のドアが開き、嬉々として飛び込んできた情報に意識を奪われる。
狸とはグリムのことに違いない。つまり、近くには魔力を持たないあの子がいるわけで。
「すみません、私行きます。お話はまた後日!」
彼の返事も聞かずに走り出す。いったい何の用だったのか、わざわざ寮長自ら出向いてくるのはなぜなのか。喧嘩騒ぎに頭がいっぱいで、考えることもせずに。