ライトラスト ‐prologue‐
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……聞いたことのない地名ですね」
私が唖然としているうちに、クロウリーが思考する。
「私は世界中からやってきた生徒の出身地は全て把握していますが、そんな地名は聞いたことが無い。一度図書館で調べてみましょう。
……それで、ミオくん」
「……え、あ、はい」
「貴方なんでまだここにいるんです?」
「今更ですか。寮分けで名前が呼ばれなかったので待ちぼうけです」
「ええ?名前を呼ばれなかったなんてそんな……いやまさか特例生として貴方が特別に入学するのはもうギリッギリ当日に私が決めたのでトレイン先生に話を通すのを忘れて……?」
「……そうなんですか。とにかく、私の寮分けなんか後でもいいです。それより日本へどうやって帰るのか知りた…じゃない、その子を帰す方が先ですよね?図書館に行きましょうキリキリ動きましょう」
「貴方急に活動的になりましたね?」
「気のせいです」
…………
学園の図書室には、地球惑星の日本国、東京都に関する書物は見つけられなかった。
想定していたとはいえ、落胆は隠せない。ユウと呼ばれた彼女はかわいそうに、顔から血の気が失せている。突然異世界に呼ばれて帰る方法も分からないとなれば当然だ。
「大丈夫?無理しないで」
「あ…ありがとうございます。」
笑みも、無理しているのがありありと分かって痛ましい。
魔力の無い彼女はひとまず、学園長のちょっと押しつけがましい好意で使われていない寮へ寝泊まりすることになった。
びっくりするほどボロボロの廃寮舎に足を踏み入れる。隣で彼女が「真っ白な埃が雪景色みたーい…」などととうとう現実逃避を起こしてしまっている。
「クロウリーさん、私は今夜は彼女と過ごします。ここを掃除しなくてはいけませんし」
「わかりました。今日はもう遅い。私は調べものがありますし、ミオくんの寮分けは後日にしましょう」
「ええ、お願いします」
学園長が去り、二人取り残される。黒い瞳と黒い目を持つ、日本人。こみ上げる気持ちをこらえて、微笑みかける。
「すごいオンボロ。座れる場所を作らなくちゃね」
「あ、そう、ですね……わ、雨が降ってきた」
「その前に、ユウさん。私、あなたに言いたいことがあって。実は私も、貴女と同じ――」
「ぎえー!急にひでえ雨だゾ!」
「わっ!?」
本題を切り出そうとしたところで能天気な声に遮られる。突如部屋に現れたその人物――いや、猫物。炎を操る獣だった。
「ぎゃっはっは!コウモリが水鉄砲くらったみたいな間抜けな顔してるんだゾ!…あ、もうひとりはヘビがマングース睨むみたいなおっそろしー顔してるんだゾ…」
「さっき窓から放り出されてたでしょ、何の用?」
「ちょっと外に放り出したくらいで、オレ様が入学を諦めると思ったら大間違いなんだゾ!」
「警備員さーん!!」
「不法侵入者はここでーす」
「こここここらー!!オマエら!!ちょっとオレ様の話を聞いてやろうとかそういうのないんか!?人間の風上にもおけないヤローどもだゾ!」
「えっと、あなた、どうしてそんなにこの学校に入りたいの?」
「訊いてあげるんだ、優しい」
「優しい方の人間…単純な話なんだゾ!オレ様が大魔法士になるべくして生を受けた天才だからなんだゾ!」
「ユウさん、お腹減らない?今晩は焼肉にしましょう。私猫肉って食べたことないけど」
「オマエー!血も涙もない方の人間なんだゾ!」