ライトラスト ‐prologue‐
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――懐かしい夢を見ていた。
決して愉快ではないが、悪夢というほどでもない。
私がこの世界の人間だということを実感せざるを得なくなった日のこと。始めて自分の魔法を発現させた過去を追体験するだけの、面白みのない夢だった。
そんな回顧夢を断ち切ったのは、窓の外から聞こえる馬の嘶き。
同時に鳴るガタガタと馬車をひくけたたましい音もひどく不愉快だったが、それはどうやら我が家の扉の前で停まったようだった。何たる迷惑。
こんな夜更けに一体何の用かと薄手の羽織を纏って手に玄関へ向かう。扉を開ければ、既に両親が応対していた。
――騒音の予告通りの馬車と、面妖な仮面を着けたひとりの男性。仮面越しに光る眼光が、私を見つけてにんまりと笑った。ぞっとする。
「こんばんは、あなたがミオくんですね。やっと本人が出てきましたか」
「ああ、ああ、クロウリー卿、どうかお考え直し下さい。娘は不吉なのです、実におかしい。こんなことは代々続いてきた中で一度もなかった」
「いえいえ。実に素晴らしい素養だ。ロイヤルソードアカデミー入学を辞退したならば、ぜひ当校で。才あるものには学ばせなければ、世界の損失です!
ま男子校ですが特例が無いわけではありませんし…私、優しいので。」
「いえ、いえ、なりませんわクロウリーさん。娘が誰かと学び、あまつさえ寝食を共にするなどと。
昔から周りよりずうっと大人びて、にこりとも笑わないのです。そしてあの魔法でしょう?駄目ですわ、ええ、きっと駄目なのですわ」
「駄目かどうかは、ご本人に決めて頂きましょう。
さあミオくん。この手を取って魔法の道を拓くか、はたまた、宝の持ち腐れで何も知らず、何も得ず、ただ老いて死んでいくか。いかがします?」
男の口元は愉悦に歪んでいる。胡散臭く、妖しく、信用できないと心が訴える。
両親は、幼いころから変わらないおぞましいものを見る目でこちらの出方を窺っている。
そうして、差し伸べられた手を、私は。