ライトラスト ‐prologue‐
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魔法が使えないが他者同士を結託させることが出来たユウさんと、人の話は聞かないが魔法が使える魔物。
半人前の二人はセットにして一人の生徒として扱うことでナイトレイブンカレッジの在籍を認められた。グリムのお目付け役を言い渡された彼女に、エースが口を開く。
「すげーじゃん、ユウ。入学したばっかでもう監督生になっちゃったわけ?」
「なるほど。お前たちの寮に寮生は二人だけなのか……つまり、学園長にグリムの監督を任されたユウが監督生ってことになるんだな」
本来使われていなかった廃墟を寮とし、寮生は魔力を持たない異世界の日本人と、人語を介して魔法を扱うモンスター。
特例だらけの寮と生徒。しかも、やっと出会えた日本人。この機を逃すわけにはいかない。
「あの、クロウリー学園長」
「なんでしょう?」
「私もユウさんと同じ寮に住みたいです」
「ええっ、ミオさん!?」
「特待生、本気か?」
「うっそでしょ。まさか廃墟マニアだったわけ?」
「……理由を聞いても?」
「私は闇の鏡によって直々に選ばれたわけではありません。あくまで学園長のご厚意で特別に入学させていただいた身です。
そんな私が闇の鏡に寮を振り分けられたとして、それが最適かはわかりません。
……なにより、私が同じ寮にいることで魔法を使えない彼女をフォローできるかもしれない。私も彼女やグリムと一緒に居れば、グループワークで困らない。……だめ、でしょうか?」
「…ふむ。正直なところ、儀礼的にも魂の選別を受けて頂きたかったのですが貴方がユウくんの面倒を見てくれるなら面倒が減……いえそこまで言ってくれるなら任せましょう」
「ありがとうございます…!あと今完全に面倒が減るって言いかけましたよね」
「ミオさん、いいんですか?迷惑を掛けてしまうかも…」
「私がそうしたいからそうしただけだよ。むしろそっちこそ迷惑じゃない?」
「全然!よろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくね、えっと、ユウ」
さりげない呼び捨てに成功したところでエースが「プッ」と噴出したのでまさかバレたかと肝を冷やす。友人関係を築くのなんて本当に久しぶりだから、どうしていいかわからないのだ。
「前代未聞なんじゃねーの?魔法が使えない監督生と自分からオンボロ寮に住む特待生なんてさ」
「ああそっち…というか、あなたまた要らないことを…」
「――いいね、クールじゃん。魔法が使えない監督生に、アウトローな特待生!」
「――、」
予想外に飛び出した肯定的な言葉に言葉を失う横で、ユウが拳を作る。
「頑張ります!」
「あははっ、頑張れよ、監督生どの!」
「特待生も。無理はするなよ」
「……うん。」
「さてミオくん。本来なら選別を踏まえて寮になぞらえたマジカルペンをお渡しするところですが……たしかこのへんに……あっこっちか……あったあった」
ごそごそと机の引き出しをひっかきまわして出てきたのは、エースたちと同じ形のペン。はめ込まれた宝石の色は白を基調としているものの、光の加減で七色に煌めく。オパールのようだった。
「昔…そうですね、昔にある人が使っていたものですが問題なく使えるはずです。ああ、私ってなんて優しいんでしょう!」
「あ、ありがとうございます」
手渡されたペンに視線を落とす。
寮が決まり、いよいよ本当の学園生活が始まる。心なしか浮き立つ心は、懐かしく新しい未来を感じさせた。
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