ライトラスト ‐prologue‐
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洞窟から反響するのはバケモノの叫び声。
ユウさんが囮となって洞窟からバケモノを誘い出す作戦は上手くいっているようだ。重量のある足音がだんだんと近づいてくる。
彼女とグリムの姿が見え、その後ろのバケモノの姿も視認する。
前もってユウさんに指示された通り、物陰から飛び出してバケモノと彼女の間に割り入ってユウさんを背にかばう。
「
ぶわりと足元から魔力が吹き抜け、不可視の防衛魔法が発動する。
このバケモノを倒す手段は別にある――。ユウさんが合図の声を上げる。
「今だっ!」
「オッケー、お任せ!いくぜ、特大突風!」
「アーンド・グリム様ファイアースペシャル!」
グリムの火がエースの巻き起こした風に煽られ、みるみる間に炎に変わる。防衛魔法を発動している私達には微かな熱を伝えるだけで被害はないが、炎の渦に巻き込まれたバケモノには堪えたようで苦悶の叫びを上げた。
「どーよ!グリムのショボい炎も、オレが風で煽ってやればバーナー並みの火力だぜ!」
「ショボくねーっ!ほんとにオマエ、一言多くてムカつくんだぞ!」
「炎の竜巻でモンスターが怯んだ!」
「デュース!」
離れた場所に居たデュースが目を伏せ、深呼吸をする。
「落ち着け……よく狙うんだ……俺の知る中で一番大きく……重たい……」
この短い付き合いで察する、もしかしなくても大体予想がつくその召喚対象。
少々間が抜けてはいるが、その威力は折り紙付きだ。
「――いでよ、大釜!」
――――
バケモノが大釜に押しつぶされ、動けないうちに洞窟の内部へ再び駆けつける。虹色にきらめき、明らかにただの石とは違う存在感を放つ石。
「あったぞ!魔法石だ!」
デュースが拾い上げる。同時に咆哮が轟いた。
「ザワルナアアアアア!!」
「やっば!アイツもう重しを押しのけそうじゃん!」
「オイ、デュース!もっとなんか乗せるんだゾ!」
「なんてしぶとい!もっと重たいやつじゃないと!」
「えぇっと、もっと重たいもの!?い、いでよ!大釜!あとは、えーとえーっと、大釜!?」
何とかの一つ覚え。しかし単純な質量は何よりも効果的で、バケモノはみるみる地面にめり込んでいく。
「それから、大釜っ!」
「ヌグゥアア!!」
駄目押しの一発。とうとうバケモノの姿は大釜に圧し潰された。
「お前、大釜以外に召喚レパートリーないわけ!?」
「うるせえな!テンパってんだよ俺だって!」
「魔法石はゲットした!ずらかるんだぞ!」
「了解!」
「セリフが完全に悪役なんだけど…!」
動けないバケモノの脇を駆け抜ける。出口へ向かう私たちの背中に、バケモノの追い縋る声がいつまでも木霊していた。