ライトラスト ‐prologue‐
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炭坑内にはゴーストが住み着いていた。未熟ゆえか魔法でゴーストを追い払うことはできず、一同は逃げ惑ううちに意図せず入り組んだ道の奥へ奥へと入り込んでいく。
エースがおおげさに嘆息した。
「ここもゴーストがうろうろしてんのかよ!」
「いちいち構っていたらキリがない。先を急ぐぞ」
「はあ?偉そうに命令しないでほしーんだけど。大体、お前がシャンデリアに向かって俺をぶっ飛ばしたりなんかしなきゃこんなことになんなかったのに」
「なっ、元はと言えばお前が掃除をさぼったのが原因だろう!」
「それを言ったら、最初にハートの女王の像を燃やしたのはそこの毛玉だぜ!」
「ふな゛っ!?オマエがオレ様を馬鹿にしたから悪いんだゾ!」
「ちょっと、今は言い争っている場合じゃないでしょう。時間が無いんだから」
「特待生さんは必死だね~。あ、せっかく特別に入学させてもらえたのに早速退学になりそうだから?」
「……本当に、口を開けば火種を撒くばっかり。無駄な喧嘩が好きなんだね」
「お前たち!今の状況がわかってるのか?朝までに魔法石を持って帰れなければ僕たちは退学なんだぞ!」
「だーから、さっきからいちいち仕切んなよ。ムカつくなあ」
「よ、四人とも落ち着いて」
なんとか場を諫めようと声を上げたユウが、はたと視線を炭坑の奥に向ける。
「今、人の声が聞こえたような……」
「人の声?ゴーストじゃなくて?」
「うん。もっとはっきりした声…」
「――さぬ―――うぅ――ぬ」
「!!」
全員が身をこわばらせる。
「こ、この声……は?」
「なんか…だんだん近づいて…」
謎の声は、呻きと共に暗闇から現れた。
右手にランタン、左手にはツルハシ。人ならざる頭。浮遊しており、脚は無い。
「イジは……オデノモノダアアアアアオオオオオ!!!」
「で、」
「「出たあああああ!!!」」
――――
「なんだあのヤバイの!?」
「ぶなああああ!!あんなの居るなんて聞いてねーんだゾ!!はよ逃げろ!」
「多分あれは炭坑夫のゴーストだよね!?」
「めっちゃエグい!でもアイツ石がどうとか言ってなかった!?」
「やっぱりここに魔法石はまだあるんだ!」
「ちょっとデュース…だっけ、あなたまさか立ち向かうつもり?」
「僕は退学させられるわけにはいかないんだ!」
「危ない、一人じゃ無理だよ!」
ユウの制止を聞かずに踵を返して再び炭鉱の中へ駆けていくデュースを追う。
――退学になると困るのは私達も同じだ。元の世界への帰り方も分からないまま魔法世界に放り出されてしまった魔力も身分もない異世界人は飢え死にしてしまう。
私も家出同然で入学したのに、冷遇されるのが分かっている家に出戻るのは絶対にごめんだ。
しかしデュースの魔法も、エースの魔法も、グリムの炎も、まるで歯が立たない。
万事休すの状態でエースが叫んだ。
「ソッチ特待生なんでしょ!強めの魔法無いの!?」
「無理言わないで!魔法は無効化できるけど、攻撃に使うような強力な属性魔法なんて使えるわけないっ」
「うっそでしょ!?どんな偏り!?」
「…!?今、なにか光った!」
ユウの指摘に目を凝らす。エースが「あっ!」と声を上げた。
「あいつの後ろ!坑道の奥でなんか光って……」
「あの光は、魔法石……!?」
「オイ、ユウ!ひひひひとまず逃げるんだゾ!このままじゃ全員やられちまう!」
「うん…!三人とも、今は逃げよう!」