ライトラスト ‐prologue‐
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学園長の雷が落ちて、グリムとエースは放課後に窓拭きの罰則を受けることになった。
夕方になり、待ち合わせ場所である学食でエースを待つ。グリムがテーブルの上でぐったりと横になった。
「一日中掃除してもうクタクタなんだゾ~……それなのに、これから窓拭き百枚だなんて……」
「窓拭き掃除百枚で済んだだけ良いと思いなよ。私も手伝うから」
「そうだよグリム、これに懲りたら大人しくしなさい」
「ううー…それにしてもあのエースってヤツ、遅いんだゾ。オレ様を待たせるとはいい度胸だ!イライラ!」
「そういえば、そうだね。もう今日の授業は全部終わってるはずだけど……」
「…」
「…」
「…」
「……」
「……」
「……」
「………」
「………」
「………」
流れる沈黙がたっぷり長針を一周したところで疑惑は確信に変わる。
「いくらなんでも遅すぎるんだゾ!?」
「バックレだね。あの赤い髪の男、締めあげないと」
「さ、探しに行ってみよう!」
―――――
各教室聞き込みを重ね、エースが寮への帰路を辿っていることが判明した。大急ぎで鏡舎へ向かえば、なんとか寮に戻る前のエースの姿を捉えることが出来た。
「こーらー!!」
「げっ!!見つかった!」
「はぁ、はぁ…学園長直々の罰則から逃げようなんて良い度胸ね」
「待つんだゾ!!一人だけ抜け駆けはさせねーんだゾ!」
「待てって言われて待つわけないっしょ!お先!」
「あっ!また逃げた!」
「一人だけずるいんだゾ~!オレ様だってサボりたいんだゾ!」
寮へ向かう扉――もとい鏡に向かって駆け出すエースは、忌々しいが全力疾走で体力を使い果たした私達よりも足取りが軽やかだ。
このままでは逃げられてしまう!万事休すかと思った矢先、エースの向かう先に一人の生徒がいることに気づく。騒ぎを不思議に思ったらしく、彼はこちらを振り返った。
「どいたどいたー!」
「えっ、お、おうっ!?」
「捕まえてください!その人、掃除をサボる悪い人です!」
「え、人を捕まえる魔法!?足を止める、いや、縄で拘束する?それとも…ええっと…」
「なんでもいいからぶちかますんだゾ!早く!」
「その男の動きを止められればなんでもいい!」
「なんでも!?なんでも、なん…ええい!なんでもいいから、いでよ!重たいもの!」
ガシャン、ドコン、ガラガラガラ!!
明らかなやけくそ、対象を指定しない無機物の召喚は大釜というかたちで成功した。見事エースは下敷きに。
「ぎゃははは!見てみろ、ユウ、ミオ!」
「はあ…やっと捕まえた。観念しなさい」
「あいったた……いーじゃんかよ。窓拭き百枚くらいパパッとやっといてくれたってさー」
「パパッとできるわけないでしょ!それに学園長命令です」
「罰で窓拭き百枚って…一体君たちはなにをやったんだ?」
「今朝、そこの毛玉とじゃれてたら、ハートの女王の像がちょーっと焦げちゃっただけ」
「グレート・セブンの石像に傷を付けたのか!?それは怒られるに決まってるだろう!
せっかく名門校に入学できたっていうのに初日からなにをしてるんだか」
「……るせーなぁ。つーかお前、誰?」
個性が豊かすぎる弊害か、新たな争いの種が芽吹くのを目の当たりにしつつ……ふと、違和感。それは隣にいた彼女も同じことを思っているようだった。
「……そういえば、グリムが静かだ」
齎された発言に場が固まる。
――追いかけっこ第二ラウンド、勃発。