Other(短編)
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「また怪我したんだね、Name。」
夕食の時間、私の手のひらに巻かれた包帯を見てベルトルトはそう呟いた。
「立体機動の練習で、少しね...」
ほんの少し痛む手を押さえながら、私は隣に座った彼にそう答えた。
仲間達は相変わらず賑やかで、エレンとジャンは今日も喧嘩している。2人を呆れながら宥めている者もいれば、遠くから囃し立てる者もいた。
「いつも元気だね...皆。」
ぼそりとそう呟けば、ベルトルトは「そうだね」と穏やかに笑い彼らを眺めている。
「...行かないの?皆のとこ」
「僕は、君が心配なんだ... Name。」
ベルトルトは私の方に視線を戻すと、包帯の巻かれた手のひらにそっと触れる。
暖かい、とても優しい手だった。
「たしかに、強くなりたい気持ちも分かる。でも...無茶なことはしないでくれ。」
「...無茶なことをしないと、巨人は倒せない。」
ベルトルトの手を握れば、彼は照れくさそうに顔を背ける。耳まで赤い。
本当に隠すのが下手なんだなと薄ら笑いを浮かべる。
「なに?もしかして照れてる?」
「ち...ちがっ......その、えと......」
ベルトルトは何かを決心したように赤くなった顔をもう一度此方に向け、まっすぐな瞳で私を見つめた。
「もし巨人が、君を襲ったら...その時は僕が君を守ってみせる...。君は、大切な人だから。」
「...は...はぁ...!?」
彼のその言葉に、次第に心拍数が上がっていく。顔がなんだか熱い。
大切な人だって...?何を...言っているんだ、彼は。
それは...親友、仲間ってこと...だよな。
「どうした?お前達...顔赤いぞ?」
ライナーの言葉に我に返る。
「ラ...ライナー...!こ、これは...違うんだ...っ」
ベルトルトは真っ赤な顔で慌てている。その様子にライナーは余計困惑した表現を浮かべ、怪しがった。
「あんたって、結構ストレートに言うんだね...ベルトルト。」
「ぁ...アニ...!いつの間に...」
「あんたが私と一緒に食べたいって言ったんでしょ、Name。」
いつの間にか向かいに座っていたアニは、私とベルトルトを交互に見ながらそう呟く。
ライナーは「なるほどな」と、何かを察した様にニヤけてる。野郎、次の対人格闘術の時に思い知らせてやる。
「隠し事が下手だな、お前は。」
「と、とにかく...!今のことは忘れて...2人とも...!」
ベルトルトは必死に2人に弁明しているし、相変わらず遠くではエレン達の喧嘩が止まない。
今日も相変わらず平穏なこの光景に、私は薄らと微笑んだ。
嘘だ、彼は嘘つきだ。
貴方は本当は、隠すのが上手......。
だって、私は貴方の正体に気付くことができなかった。
私達は彼らからエレンを、ユミルを取り戻すために馬を走らせる。
アニに裏切られ、仲間を失った悲しみに浸る時間なんて私には残されていなかった。
私達は戦わなければならない、かつての仲間と。私の、大切な人と...。
「ッ...どう、して......」
馬に乗り巨大樹の森を目指しながら、私は俯き静かに泣いた。
何故、何故仲間と戦わなければ...いけないんだ。
「Name...大丈夫?」
「...アルミン、ライナー達は...私達のこと...仲間だと思ってなかったのかな...」
拭いきれない涙を流しながら、私は隣を走っているアルミンに問いかける。
「...分からない...でも...でもね、Name。ベルトルトはきっと、君のこと本当に好きだったと思う。」
彼の言葉に思わず顔を上げる。
アルミンは辛そうだが、それでも優しく笑い此方を見ていた。
「...これは僕の勝手な想像だけどね...。でも彼が君と話をしてる時は、本当に幸せそうだったから。」
ふと過ぎるのは、訓練兵時代の懐かしい思い出。ベルトルト、ライナー、アニ...3人との記憶。
「......ありがとう、アルミン...。」
進まなければ。どんなに辛いことがあっても、辛いことが待ち受けていようとも。
平穏なあの頃に戻れる日が来ることを願い、私達は彼らの元へ進み続けた。
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