29(短編)
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「ねぇ...ジェイド。その腕、大丈夫?」
手を組み一緒に歩いていたNameが反対側の腕、俺の左腕を心配そうに見ている。包帯が巻かれた左腕を。
「え?ああ...これは試合で...。」
「痛くない?大変なのにデートなんて誘っちゃってごめん...。」
Nameの前に左腕を見せれば、彼女は包帯の巻かれた部分に優しく触れた。
心配そうに目を伏せながら温かな手で俺の腕をさする。その仕草が可愛らしくて、堪らず俺は彼女の頭を撫でた。
「そんなことない。Nameに会えるなら俺はどんな怪我だって平気だ。」
頭を撫でられたNameは暫く心配そうな表情だったが、次第に柔らかな笑顔を浮かべた。
そして包帯に触れていた手が離れつま先立ちしたかと思えば、今度は俺の頭をポンと撫でた。
「ありがと。でも無理は禁物だから、今度はちゃんと治してからデートしよ!」
つま先立ちのNameはプルプル震えながら必死に俺の頭を撫でている。
その必死さも、全てが愛おしい。
「分かった。でもNameだって無理しないで。」
「わっ...ちょっと...」
頭を撫でていた彼女の手を取り、そのままぎゅっと抱きしめる。
周りの目なんてどうだっていい。今はこうして甘えていたい。
「...最近怪我ばっかりだったから心配してたけど...大丈夫そうね。」
Nameの腕が背中へ回る。
身近に感じる彼女の体温は心地よくて、俺はこんな彼女が本当に大好きだった。
怪我をする度に心配してくれて、時には手当てもしてくれる。
そんな彼女が...。
「近々また試合があるんでしょ?今度はちゃんと応援に行くね。」
「ハハ...なんだか恥ずかしいな。負けないようにしないと。」
「大丈夫だよ!ジェイドは強いんだからさ!」
公園のベンチでそんなことを話していれば、何人かの通行人は俺たちの方を見る。
もうすっかり有名人か...。でもNameはそんな視線など気にもせずいつも隣にいてくれる。
伝説超人の弟子だからとか有名だからとか...そんな理由ではなく、彼女は俺を本気で愛してくれているんだ。
「...でもほんとに無理だけはしないでね。貴方が怪我してる姿を見るのは一番辛いことだから。」
Nameは再び心配そうな顔でそう呟く。
いつもの癖だ。やっぱり彼女は心配性すぎる。
「... Name、こっち向いて。」
不安げに俯いていたNameは俺の言葉に顔を上げる。
そして彼女が口を開く前に、その唇にそっと口付けをした。触れるだけの優しい口付けを。
Nameは一瞬のことに暫く固まっていたが、次第にその顔は赤く染まり始めた。
「心配事ばかり言ってる口は閉じないと。な?」
「ッ...もう...」
Nameは真っ赤になった顔を隠すようにそっぽを向いた。
流石に大胆すぎたかなと少し不安になる。人通りは少なかったが、それでも外でキスは流石に恥ずかしかったろうか...。
暫くの沈黙の後、Nameはゆっくりと赤ら顔を此方に向けた。
「す、すまない。いきなりキスして...」
「...ッ...ううん...その...嬉しかった...だけ。」
目を逸らしながらもNameは恥ずかしそうにはにかんでいた。その想像以上の反応に俺は胸が高鳴った。
「そうだよ、心配ばっかりしてたら不安になる一方じゃん...。私絶対観に行くから!ジェイドの勝つとこ!」
恥ずかしさを紛らわすかのように、Nameは情熱のこもった眼差しで俺を見た。
「...勿論さ。絶対勝つから、見守っててくれ。」
いつもは不安に満ちていた彼女の瞳が、その時は違って見えた気がした。
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