29(短編)
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「う...ッ」
リングの上、ロープに身を任せながら頭を押さえる。向かいにはかすり傷ひとつない将軍様が、腕を組み私を見ながら佇んでいた。
威厳のあるその姿に、思わず息を飲む。
「前より隙が多くなっているな、Name。」
「...申し訳...ございません...」
クラクラする頭を押さえながら構えなおし、将軍様に狙いを定める。先程の打撃が効いたのだろう、頭が痛い。今にも倒れてしまいそうだ。
だが今、失敗は許されない。
将軍様が私の方へ歩き始め、私は警戒しながらも手が出せずにいた。技をかける様子は見せずに、私の目の前まで来る。
不意打ちか?油断させてからの一撃必殺か...?
「...?」
将軍様は此方に手を伸ばすと、そのまま私の頭を撫でた。予想外の出来事に何も出来ずに固まってしまう。
「Name、お前は最近働きすぎだ。少し休め。」
「...ぇ、ですが...」
顔を上げ、将軍様を見る。いつもと変わらない様子で私を見下ろしているが、相変わらず頭を撫でてくれる。とても優しい手つきで...
「サンシャインから聞いている、最近は一睡もせず修行に明け暮れていると...」
「...そ、れはその......」
「集中力が落ちているのもそのせいだろう。」
将軍様は私の頭から手を離し、元の位置へ戻った。たしかに、最近は寝る暇も惜しく修行を続けていた。他の仕事だってある、休む訳にはいかない。
「だ、大丈夫です、私は...。今だってちゃんと、集中してますから。」
構えの姿勢に戻り、将軍様を見る。
正直、少しでも目を閉じれば寝てしまうのではないかと思うほど眠い。だが、将軍様の前でそんな醜態を晒すわけにはいかない。せめて今だけでも耐えるんだ。
「ならば証明してみせろ、Name。」
将軍様も遂に構えた。大丈夫、私ならできる。
狙いを定め、技をかけようと将軍様の元へ走り出す。
狙うは脚、まずは関節を狙い立てないようにする。
悟られないように、慎重かつ素早く脚に技をかけようとした時...
「ッ...!?」
目の前に誰もいない、さっきまでいた将軍様がいない。
「い"ッ...」
首の後ろに走る鈍い痛み。
認識するのに数秒かかった、手刀だ。
まずい、限界だ...。
リング上に倒れる最中、私の意識は遠のいていった。
「全く、世話の焼ける弟子だ...」
Nameがリングに頭を強打する前に、素早く彼女を抱き留める。薄らと隈のある目を閉じ、寝息をたてていた。
強くなる為とはいえ、無謀な修行は逆効果だ。
Nameを抱き抱えたまま自室へ戻る。
そして、大きなベッドの中央に彼女を寝かせた。
「可愛い我が弟子よ、起きるまで共に居てやろう。」
ベッドに腰掛け、安らかな表情で眠るNameの髪をそっと撫でた。
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