29(短編)
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時刻は午後6時。外は日が沈み始め、薄暗くなる頃だろう。
「赤ずきんの結末って、色々あるんですよ。」
そう呟きながら俺の書斎で本棚を探っているNameは、息子の幼なじみだった。
Nameは童話が大好きだった。子供染みたハッピーエンドな童話ではなく、残酷で救われない童話が特に好きだったのだ。
我が家に来ては、こうやっていつも本を漁っている。
「それはそうとName、そろそろ御両親が心配する頃だろう。帰りなさい。」
「そんなことないですよお父さん、私の両親は私のことなんてどうでも良いんです。」
「しれっとお父さんと呼ぶのはやめろ。」
ため息混じりにソファから立ち上がる。
彼女は何冊かの本を棚に戻した後、俺のほうを向いた。
「でもほんと、貴方が私のお父さんだったら良かったのに...」
Nameは無邪気に笑っている。
だがその子供らしい顔とは裏腹に、身体はもう十分大人だった。息子と同じ18歳、時が経つのは早いものだ。
「それにしても...今日はJrの帰りが遅いですね。」
「ああ...いつもよりランニングの距離を長くしたからな。」
「そうなんですね...」と彼女は再び本を手に取る。まだ読むつもりなのだろうか。
外では恐らく、日が完全に沈む頃だ。
それでも彼女は帰る素振りも見せず、童話の本を片っ端から読み漁っている。
「彼奴が帰って来るのはもっと後だ。それにお前のような子供は夜道で何があるか分からないだろう、今日は諦めて帰るんだ。」
「もう...子供扱いしないでください。私は大人です、夜道なんて怖くないですもん。」
全く、いつまで経っても生意気な性格は変わらないものだ。
Nameは余裕そうに笑いながら再び本に視線を戻している。
「さっきの話の続きなんですけどね...。ほら、赤ずきんって最初は狼に食べられて終わりだったんですよ。でもそれじゃ残酷だって...後に猟師に助けられる結末に変わったんです。」
本を読みながら彼女は解説を始めた。
彼女の解説はいつも長いのだ、聞いていて悪いものではないが...。
だが、もう夜だ。他の家の子、加えて18の少女をいつまでもこの場に留めておくことはできない。
少し、からかってやるか。
俺は立派な大人だ、彼女と違って。
だから一度、大人の怖さを思い知らせてやろう。
「Name、Jrの帰りがどうしてこんなに遅いか...知っているか?」
「え?訓練を少しキツくしたんですよね?」
「それもあるが...違うな」
不思議そうな顔で本を棚に戻している最中の彼女に近付く。
「お前を食べるためさ。」
「...ぇ...あ...ッ」
Nameの腕を引き、ソファへ座らせる。
そして逃げ場のないように手摺りに手を付き、覆い被さるように彼女を見下ろした。
「ぇ...ッ?あ、の...お父さ...」
「言うことを聞かない悪い子は、狼に食べられる...赤ずきんはそういう話だ。」
Nameの頬を撫でながら歯を見せ笑えば、彼女はやっと状況を把握できたのか怯えた表現になる。
「ぁ...あの...」
「さて...どうなると思う?このまま俺に食べられるか、間一髪のところでJrに助けられるか...」
Nameの耳元で囁き、首筋に指を這わせれば彼女は身体を大きく震わせる。
そのまま服のボタンに手をかけた。
「まっ...」
Nameは赤面しながら俺の手を掴む。
耳まで赤くなっている。やはりまだまだ子供だな...。
「...なんてな、冗談だ。」
ほくそ笑みながら、彼女から離れる。
彼女は赤面しながらも困惑した表現でソファに座ったまま、動けずにいる。
「お前はまだまだ子供だ、そして無防備すぎる。今度からは暗くなる前に家に帰るんだぞ。」
Nameの頭をあやす様に撫でれば、彼女は我に返ったかのように目を見開く。
「ッ...し、しし...失礼...します...ッ!」
そして俺を見るなり酷く赤面している顔を隠し慌てた様子で書斎を飛び出した。
彼女の座ったソファに腰掛ける。
「少し、やりすぎてしまったか...」
そんなことを思いながらも、内心はあのまま続けても悪くなかったかもしれないと考えてしまう。
あの無垢な少女に次会う時が楽しみだ...。
一人になった書斎で、俺は赤ずきんを狙う狼のように妖しく笑った。
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