29(短編)
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「ゲギョゲギョ...こんな小娘を生贄に寄越すとは...物好きな連中もいるものだ。」
鎖に繋がれた私を見下ろす大男は、なんだか禍々しいオーラを纏っていた。
その姿も一言で言えば悪魔、声だって地の底から聞こえるような恐ろしい声色だった。
...まぁ、でも少し可愛いかな...。
「どうした小娘よ、恐ろしくて声も出せぬか?」
男は床にへたり込む私の顎を掴み、無理やり顔を合わせるかのように上へ向けた。
かなり強い力だったから少し首が痛い。
それにぶっちゃけ、声が出せないというより話すことがなかった。
「小娘、名は何と言う?」
「...... ぁ、えっと...Name...。」
顎を掴む指が邪魔で喋りにくかったが、なんとか自身の名を伝える。
「Name...か、良い名だ。」
この男の名は知っている。大魔王サタン...だっけ。
私がここへ来た理由も知っている。
生贄として差し出されたから。理由は謎。
多分、悪魔崇拝だとは思うけど。
だって私の周りの人達みんな「サタン様万歳」って言ってたから。
「...ねぇ、私これからどうなるの?」
「...私に物申す際は敬語を使え、良いな?」
「......ぁ......あー......では私はこれからどうなってしまうのでしょうか、サタン様...。」
敬語は知らないが、皆の真似をしてそれっぽく言ってみた。棒読みだけど。
というか足枷が重い、早く外したい。
「...この私にそこまで舐め腐った態度を取るとは... 良い度胸だNameよ。」
...あぁやっばい、棒読みバレてた...。
これ殺されるのかな、下手したら少しずつ身体を刻まれるのだろうか...。
あぁでもたしかこの人って悪魔超人の長だっけ...?
だったらきっとヘッドロックでじわじわと...
「この私を怒らせたらどうなるか...思い知らせてやっても良いのだぞ?」
「......え」
大魔王の指が私の胸を伝う。
え、嘘でしょ...大魔王様。まさかソッチ...?
「......まさか、致すんですか?」
「...何?」
辺りが再び静寂に包まれる。
とんでもないことを言ってしまったのかもしれない。
まさか...このジェスチャーはそういう意味じゃなくて、「お前の胸を切り裂くぞ」的な意味だったのかもしれない...。やらかした。
「...あっ...もしかして...ソッチじゃなくて...心臓抉るほうですか......?」
もはや周りの音さえ聞こえない。
え、気まず...
「......小娘、貴様私が怖くないのか?」
「......怖いというか...その...別に何も感じない...です。」
「.........」
静かだ。本当に気まずい、なんだか申し訳ない...。
大魔王サタンは私の顎をやっと離し、後方の玉座へ腰掛けた。
首が痛い、寝違えた時みたい...。
「ゲギョゲギョ、良かろうNameよ。お前のその態度...なかなか気に入ったぞ。」
「...え、でも舐め腐った態度って...」
「細かいことはどうでも良いのだ...!」
大魔王は「此方へ来い」と指でジェスチャーをした。
私は重い足枷をずりずりと引きずりながら彼の元へ向かう。
にしてもこの足跡、本当に重い。これではまるで奴隷...いや、生贄って奴隷よりも下の立場だっけ...?
やっとの思いで大魔王の元まで辿り着くと、今度は「座れ」と言わんばかりに自身の膝を手で軽く叩いた。
「え...えぇ...いいんですか、生贄の分際で?」
「構わぬ、早くしろ。」
仕方なく大魔王の膝に座る。
うわぁ...これが大魔王サタン様の膝かぁ...。
やっぱ筋肉って固いんだなぁ...。
「光栄に思うが良いNameよ、この大魔王サタンが人間を気に入るなど滅多にないことだ。」
「は...はぁ...」
大きな手で頭を撫でられる。
もしかしてこの大魔王、意外と優し...
「お前の願いを何でも叶えてやろう。強大な力、永遠の命、巨万の富を得ることだって可能だ...。」
「え、まじすか...?」
願い事まで叶えてくれるだなんて...。
私生贄なのに、一応捧げられた身なのに...。
願い事...願い事かぁ...。
「...あ、じゃあ......お腹空いたので、ご飯ください...!」
「.........」
辺りに何度目かの静寂が訪れる。
あぁ...もう本当にごめんなさい...。
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