29(短編)
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「じゃあ世界は滅びるの?」
「世界ではない、超人が滅びるのだ。」
「じゃあこれで戦争は終わるんだね...。」
荒れ果てた地に座りながら少女は遠くを見ていた。
空は暗く渦巻き、辺りには血の匂いが漂う。
そんな世界に少女はいたのだ。たった一人で生きていた。
「今の話を信じるか?」
「...まぁ、うん...。貴方が空から降りてきた時、何となく神様っぽいなって...思ったから。」
少女は無垢な笑顔で私を見た。
こんな場所には似合わない程、純粋な笑顔だった。
もうすぐこの世の超人は、超神たちによって粛清されるだろう。
下天し、地上の超人たちから10人を選び抜いた時だった。
見つけてしまったのだ、彼女を。
「ねぇ神様?そのなんとか光線って痛いの?それとも、眠るように死ねるの?」
少女の残酷な質問に思わず口を噤む。
カピラリア七光線は人間には害の無いものだ。しかし超人が浴びればその身は滅びる運命。
少女は超人だった。
戦う力は無いがその身体には超人の血が流れていると、私は彼女を見た途端そう悟った。
近いうち、少女は死ぬだろう。
何の罪も無い無垢な少女が、神の怒りで犠牲になるのだ。
「...生きたいとは思わないか?」
そう問えば少女は少しの沈黙の後ゆっくりと立ち上がった。
血の香りを含んだ生暖かい風が、彼女の髪を靡かせている。
「...もうすぐね、ここも悪い超人たちの土地になるの。そしたら私はきっと殺される。きっと沢山痛めつけられた後殺されるの。」
「その前に粛清されるだろう。」
「痛くて辛い死に方よりかは、一瞬で消滅するほうが幸せでしょう?」
そう言った刹那、私は少女の身体を優しく抱き締めていた。
大地に膝をつき、包み込むような抱擁を。
少女は暫くの間立ち尽くしていたが、そのうち私の背へ手を回した。とても小さいが暖かい手を。
「...名は何という?」
「Name。」
「Nameよ、後悔はしているか?」
「.........少しだけ。」
天から降り注ぐ七色の光を、Nameは私の隣で見上げていた。
どうしても彼女を見殺しにすることはできなかった。
あの時の抱擁の最中、「生きたいか?」ともう一度尋ねればNameは小さく頷いてくれた。
「綺麗な光...こんなに綺麗なのに...」
苦しみ悶え朽ち果ててゆく地上の超人を見ながら、Nameはそう呟いていた。
「ねぇ神様。この後どうするの?」
「私のことはザ・マンと呼んでくれ。」
「...じゃあザ・マン。また抱き締めてくれる?」
超人たちを粛清する光の中、ただ純粋に笑う無垢な少女を私はそっと抱き寄せた。
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