29(短編)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
小学生の頃、私はいじめられていた。
初めはブロッケンマンの娘だからと誰も私に近づかなかった。だが私に戦う力が無いとわかった瞬間、クラスメイトたちは私をいじめ始めた。
父に相談しようと思ったけど、小学生の時は父が怖くて話せなかった。
2つ上の兄に相談しようとも思ったが、訓練の邪魔になるだろうから諦めた。
でも数日後、私をいじめていたクラスメイトたちが行方不明になった。
いじめられていたから悲しむことはなかった。もうこれで学校に行っても苦しまずに済むって逆に安心していた。
中学生の頃、人生初の恋人ができた。
思春期だったからデートとかで門限を守らないこともたまにあったし、学校では兄に見られないように彼と交際していた。
2年生になったある日、恋人は突然家出したっきり帰ってこなかった。
元から夜遊びとかしてる子だったから、いつか帰ってくると信じて泣かなかった。交際がバレたら怒られるだろうから、家族の前でも平然としていた。
何年か前、近所で傷付いた猫を見つけ保護した。
父は意外にも許可してくれて、嬉しくて仕方なかった。
ある時猫に噛まれて指から少し血が出た。でも全然平気だし、猫もじゃれてるだけだった。
それから数日後、猫は姿を消した。
悲しくて毎晩泣いた。食事も喉を通らず、父と兄の話もあまり聞こえなかった。
そしたら数日後、猫は元気な姿で帰ってきた。
何の傷も汚れもない、いつものように甘える姿に私は心底安心したのを覚えてる。
数ヶ月前、高校で知り合った人と付き合い始めた。
とても優しくて誠実で、私には勿体ないくらい素敵な人。
父と兄にはもちろん内緒。連絡先だってバレないように工夫したし、デートだって「女友達と買い物」って誤魔化したりしてた。
この人なら一生傍にいたい。結婚して幸せに暮らしたい。相思相愛、互いにそう思っていた。
数日後、彼が消息不明になった。
血眼になって探した。家出なんてする人じゃなかったから、必死に探し回った。けれど見つからなかった。
毎晩泣き崩れた。目は腫れ、貧血気味になった。父や兄の前でも構わず泣いていた。
それでも、彼は帰ってこなかった。
「最近学校はどうだ?Name。」
「...特に何もないかな。」
3人で使うには大きすぎる机で今日も食事をする。
この時間が1番嫌いだった。食事という名の質問責めだから。
「なぁ...行方不明になった同級生、見つかったのか?」
「いいえ兄さん。まだ見つかってない。」
私の家族が異常だと気付いたのは、猫がいなくなった時くらいから。
私の周りでよく人が消える。異常なほど。
私の家はとても広い。迷子になりそうなほど広い。
猫はよく地下室の扉の前で止まる。扉に向かって唸る時もある。
「どうしたName、食べないのか?」
父が私へ鋭い視線を向ける。
兄がナイフを持つ手を止める。
2人が私を見ている時ほど緊張する時は無い。
「...食欲が無くて...でも食べるから、大丈夫...。」
私の家族は異様だ。
父はドイツの鬼と恐れられている残虐超人。平気で相手の目を抉ったり、顔面を傷だらけにする。父らしいことをしてもらった記憶は無い。恋愛は禁止され、友達だって必ず写真や連絡先を見せないといけなかった。
兄は父よりも優しい。だけど私が中学生の頃、兄は私に嫌がらせした生徒を半殺しにしたことがあった。私の目の前で何度も相手を殴った。事が済めば辺りは血が飛び散り、兄は血で汚れた手で私を抱き締めていた。
...最近、私はまた男友達ができた。そして今日告白されたのだ。
正直ものすごく怖い。交際を始めればいつかまた必ず行方不明になってしまうのではないかと不安なのだ。
過保護?それとも束縛だろうか。
父と兄は一生、私の周りにいる人間たちを排除し続けるのだろうか?
それとも単なる私の考えすぎだろうか?
「ご馳走様。」
「待てName。」
食器を持ち立ち上がった瞬間、父に呼び止められる。嫌な予感がした。
「...何かあった?父さん...。」
「告白は断っておけ。」
思わず食器を落としそうになる。
嫌な予感は的中した。
兄は席を立ち私の元まで来ると、肩に手を置き顔を近づけた。
「家族に隠し事は無しだろ?Name。次からは親父か俺に全部話せ。前の奴みてぇにならねえようにな...。」
背中を冷や汗が伝う。
何も言えずに佇むことしかできない。
恐る恐る父を見れば、不敵な笑みを浮かべ此方を見ていた。
私の家族は異様だ。
きっと私が死なない限り、この関係が終わることはないだろう。
10/16ページ