恐怖映画(短編)
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10月31日の真夜中。
子供達の騒がしかった声も止み、窓の外は静まり返っている。
それでも都会の方はきっと、はっちゃけた若者達が騒ぎまくっているのだろうと思いながら私はカーテンを閉めた。
眠い、明日だって大学があるからもう寝なければ...。
ベッドに横になり布団を被る。
...ハロウィンなんて大嫌いだ。
楽しかったのは子供の頃だけ。よく近所に住んでた仲の良い男の子とお菓子の交換してたっけ...。
その子は突然姿を見せなくなったし、丁度同じくらいの時期に私もその時住んでた家から引っ越してしまったのだ。
懐かしい記憶を思い出しながら目を閉じる。
そしていつの間にか私は深い眠りの中に落ちていた。
ガシャンッッ!!
「ッ...!」
ガラスの割れるような音で目が覚める。
ナイトテーブルの小さなライトを付け時計を見れば時刻は午前2時。
まさか...酔っ払った若者に石でも投げられた?
ため息をつきながら上半身を起こすと同時に、その音は聞こえてきた。
...ギィ...ギィ......
それは明らかに階段を上る音で、明らかに私の部屋の外から聞こえた。
音が大きくなるにつれ心拍数が徐々に上がり、息が詰まり呼吸も乱れた。
警察...警察を......携帯はどこ?
...あった、机の上......。
音を立てないようにベッドから降り、机に向かって歩く。
床の軋む音が聞こえる、すぐそこまで来てる...。
携帯を手に取る。
床の軋む音が部屋の前で止まる。
落ち着いて...911...押すだけ...
ギィィ...と、嫌な音がすぐそこで聞こえる。
顔を上げると、大きな人影。暗くて見えないが絶対に男だ。
「ひっ......だ、だれ......ぅ"ッッ...!」
私が通話ボタンを押す前に、大きな人影は私の目の前まで迫っていた。
腹部が熱い。遅れて走る鋭い痛みに、私は情けない声で呻いていた。
「ぅ...ぁあッ...あ"ッ...ぃ、だ...」
目の前の男は私の腹から何かを抜くと、私の手に持っていた携帯を奪った。
倒れそうになるも、男に支えられながら半ば強制的にベッドの方まで連れていかれる。
「い"ッッ...!」
男にベッドに仰向けに寝かされ、刺されたであろう腹部に再び激痛が走る。
更に、男は仰向けの私の上にその巨体で馬乗りになった。
今まで見えなかった姿が、ライトに照らされ鮮明に見えるようになった。
白く不気味な男のマスク、青いつなぎ。
手にはとても大きな牛刀、まだ新しい血が付着している。私の血が。
「はッ...はぁッ...ッ」
痛みと混乱で、乱れた呼吸を繰り返すことしかできない。
男は私を黙って見下ろしている。青い瞳がマスクの下から私を見ている...。
何分経ったのかは分からないが、男は片方の手で自分のマスクに触れた。
首元を掴み、そのままゆっくりと上へマスクを捲る。
「ッ"...っ...?」
マスクを完全に脱いだ男は、再び私を見下ろす。その顔に、私はほんの少しだけ見覚えがあった。
成長しても、それでも変わっていない。
「...あ、なた...は......」
男はそっと私に血まみれの手を伸ばすと、指で私の唇になぞるように触れた。
...そして今度は顔を近付け、彼の唇が私の唇に触れた。
「ん"ッ...ッ......」
柔らかい感触、薄らと血の匂いがする。
だが、相変わらず腹部の痛みは治まらなくて。
ぬるぬるとした血が私の腹から未だに溢れている。視界が少しぼやけている。
男は唇を離し顔を上げると、再び不気味なマスクを被り直した。
「あ"...あな、た......まい...ける......」
あの子だ、間違いなく。
あの顔は間違いなく私の初恋の相手で...。
ハロウィンの日は特に、ずっと一緒にいて...。
でも、あなたは突然いなくなってしまった。
血が出過ぎたせいで、全身の力が入らない。
震える手を彼に、マイケルに伸ばす。
マイケルはその手を握る、優しく包むように。
ハロウィンの夜に...こんな再会をするなんて......。
痛みと苦しさの中、私はゆっくりと目を閉じる。
「おやすみ......僕の大好きなName。」
現実か、幻聴か。
それでも最期に聞いたのは、幼い頃とまるで変わらないマイケルの声だった。
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