恐怖映画(短編)
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「...げっ...!」
夏の蒸し暑さに怒りを覚えながら家に着き、中へ入ろうと玄関へ続く階段を上ったところで、扉がボロボロに壊れていることに気がついた。
「...うそ...またやっちゃったの...?」
半壊している扉に触れようと手を伸ばす。
すると私が触れるより前に内側から扉が開き、同時に中から現れた大きな男が私に抱きついた。
「うわ...!ちょっ...ちょっと...!」
男は足が浮くくらい私を抱き上げると、あやすようにそのままくるくると回った。
暑苦しいし、少し血腥い。彼の胸板に顔が埋まって息が出来ないし、目も回った。
...だがしかし、これはいつものことだ。
「...ババちゃん...少し、ぐるじぃ...」
なんとか声を絞り出せば、彼は...弟はやっと私を床に降ろした。
呼吸を整え、彼と一緒に家の中へ入る。
「また扉壊したの?兄さんに怒られるわ...」
ため息混じりにそう呟けば、ババは少し落ち込んだ様子だった。扉を壊す度に、ドレイトンお兄さんに怒られるから。
「...大丈夫よ、一緒に弁解すれば何とかなる。」
優しく笑ってババの背中をさすれば、彼は幾分か笑顔になって私を抱きしめた。
全く、本当に可愛い弟だ...。
彼に促されキッチンに向かう。
フックには1人、まだ息のある女が吊るされていた。此方を見るなり助けを求めているのか、命乞いをしているのかよく分からない悲鳴を上げている。
「ちゃんと捕まえてくれたんだ、偉いよババちゃん!」
頭を撫で回すと、彼はマスク越しでも分かるほど喜びに満ち溢れた様子で舞い上がっていた。そして幾つか包丁を取り出し、そのうちの一本を私に差し出す。
なるほど、一緒に夕食の下拵えってわけね。
エプロンを着け、手を洗い包丁を受け取った。
「うん、一緒に料理しようね。」
私達を見て怯えている女に包丁を向けながら、満面の笑みで料理を始めた。
「はーい、口開けて。」
揚げた肉の切れ端をババの目の前に見せれば、彼はマスクをずらし大きく口を開け肉を頬張った。
口に合ったのだろう、美味しそうに咀嚼している。
「今夜はご馳走にしようね、兄さんが帰って来る前に作り終わらないと。」
ババが私に作っていた蒸し肉を近付ける。
肉と調味料が合わさった良い香りがする。
「くれるの?ありがとう...!」
此方も口を開け蒸し肉を食べた。
美味しい、柔らかい肉が口の中に広がる。
痩せてはいたが肉は上等だ、あの女は。
だいたいのものは作り終え、食卓に並べた。
後は兄さん達を待つだけ、そうすればやっと夕食だ。
「脳みそは冷やしとくから、デザートにしようね。」
元気に頷く彼を見ながら椅子に座る。
兄さんが帰って来る前に、私は壊れた扉の言い訳を考えることにした。