恐怖映画(短編)
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地下の方から女の絶叫が聞こえた。
あぁ、やっぱりあそこにいるのか...と私は地下へと続く扉を開ける。
「トミー?」
階段を下り血腥い地下室を覗き込めば、そこにはやはりトーマスがいた。
何かに集中しているらしく、此方に振り向くことはない。台の前に立ち、此方に背を向けて何やら作業をしている。
台に固定された女の足がピクピクと痙攣していた。
「トミー、叔父さ......保安官が呼んでるよ。」
私がそっと声をかければ、トーマスはやっと此方へ振り返った。
顔にはマスク、血まみれの服、手には鋏を持っている。今日も相変わらずだ、トーマスは。
「...ごめん、作業中に邪魔しちゃったね。」
そう言うとトーマスは軽く首を横に振り、再び女に向き直った。
どうしよう、作業が終わるまで待っていようか...。近くの椅子に座り彼の様子を見る。
鋏の音と、時々女が痙攣して台を蹴る音のみが部屋に響いている。
こういう時のトーマスはいつも真剣でかっこいい、食事中や散歩の時は可愛くてつい撫でたくなるのに...
暫くするとトーマスは鋏を机に置き、作業机に向かった。台の上の女はもう動かない。
トーマスは椅子に座り、再び何かの作業を始めた。
そろそろ行かないと叔父さんが怒るかもしれない、だが無理に連れていくのも可哀想だった。
「トーマス、それ終わったら一緒に上に行こうね。」
私がそう声をかけると、トーマスは椅子から立ち上がり私の方へ来た。手には何かを持っている。
「...どうしたの?」
トーマスはそっと私に手を伸ばし、私の顔を覆っていたマスクをゆっくり剥がした。
そして、手に持っていた何かを私の顔にそっと付けた。
"それ"は血腥くて、まだ暖かい。
「...もしかして、新しいマスク?」
そう尋ねればトーマスは小さく頷き、私に手を差し伸べた。
彼の手を取り立ち上がると、そのまま鏡の前まで手を引かれる。
少し薄汚れた鏡を見れば、そこには前とは違うマスクを付けた私の姿。そういえば前のマスクはもう古くなっていた、汚れも多く所々破れていたのだ。
赤黒い血が滴っているが、形はとても綺麗だ。
「...すごい...前よりも綺麗...」
マスクに触れると、冷たくなりつつある肌の感触。この顔の持ち主は、生前きっと美人だったのだろう...。
「ありがとう、トミー...。すっごく良い。」
トーマスの方へ向き直り、私は微笑んだ。彼は大きな手で私の頭を撫で回す。
マスク越しであまりよく分からなかったが、確かに彼は笑っていた。
「嬉しいな...。だってほら、トミーとお揃いでしょ?なんだか家族って感じで...」
トーマスの顔に手を伸ばし、頬をマスク越しに撫でる。彼はその手を愛おしそうに、上から自身の手で包み込んだ。
「...ほら、そろそろ行こっか。叔父さんが待ってる。」
お揃いのマスクを付けながら、私はトーマスの手を引き薄暗い地下室を出た。