恐怖映画(短編)
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「異常なし...異常なし......」
教会の外、双眼鏡越しに周りを見渡し近くに敵がいないことを確認する。
傍から見ればロングコートに身を包んだただの女だろう。だが違う、私は武器人間だ。
コートの下は歪な継ぎ接ぎだらけ、一見普通の手には鋭い刃も隠れている。
では何故、こうして自我を保っているのか...それは脳を改造されていないから。
私だけだった、生かされたのは。他の皆は殺されたか、改造されたかのどちらかである。
私はただ、他の仲間より必死に命乞いをしただけ。これはその結果なのだ。
今日も霞む視界越しに外の見回りをし、それが終われば教会の中へ戻る。
朝方の光が差し込む教会内は、陽の光で明るい。そしてとても静かだ。
「ッ...!」
だが、後方から微かに聞こえた物音に反応しすぐに振り返る。そして、ナイフを音のした方向に向けた。
「...なんだ、モスキートか...」
ガスマスクから伸びる鋭いドリル、槍の手足を持つ四足歩行の武器人間。
彼は私達がここへ来た時、一番初めに出会した武器人間。何人かは彼のドリルによって身体に穴が空き絶命した。
「どうしたの?休憩中?」
ゆっくりと彼に近付く。ドリルを下に向け、攻撃の意思はないことを私に伝えている。
彼の薄汚れたガスマスクをそっと撫でれば、彼は霞んだレンズ越しに私を見つめている。そんな気がした。
「...君も元々は、人間だったんだよね。」
モスキートは私の言葉が分からないのか、何も反応せずに佇んでいる。
私はゆっくりと、彼に抱きつく。血腥い、鉄の臭いと焦げたような臭いがする。
彼の服にそっと手を当て、彼の胸に耳を当てる。
心臓の音は、聞こえない。
きっと彼らの中で、心臓の音が鳴るのは私だけだ。私だけ、この歪な継ぎ接ぎの中で生きた心臓が休むことなく鼓動し続ける。
「...君だって、生きてるんだ...。心臓の音くらい聞こえても良いのにね...」
モスキートは、抱きつく私の肩に頭を擦り寄せている。
エヴァさんが言ってた、これは彼が懐いている証拠だって...。
ドクン...と、一瞬だけ聞こえた気がした。
それが心臓の鼓動なのか、機械の音なのかは分からない。
「...ほら、そろそろ休憩時間終わっちゃうんじゃない?」
モスキートから離れ、彼に笑ってみせる。
彼は暫く私を見た後、ゆっくりと後方へと去っていった。
私は継ぎ接ぎだらけだ、だがしかし心臓は動いている。
彼らもきっと...機械と融合したって、生きているのだ。
この場所で、私達はキマイラとして生き続ける。
陽の光が差し込む教会内で、私は自身の継ぎ接ぎを指でなぞった。