恐怖映画(短編)
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「やぁおはよう、Name。」
頬を軽く叩かれ、私はゆっくり薄目を開けた。
息苦しさと同時に口元に感じた違和感で、私は自身の口を粘着テープがしっかりと塞いでいることに気がついた。
頭が痛い、起き上がろうとすれば手足にも巻かれた粘着テープがそれを許さなかった。
「覚えてる?俺のこと。いつもと違ってボイスチェンジャーがないから分かんないかなぁ。」
横たわったまま上を向く。黒い布を纏い、不気味なマスクをつけた男が私を見下ろしている。
そうだ、私は...電話していたら、後ろから頭を殴られて...
粘着テープ越しにくぐもった声で呻く。
目の前の男は「ん〜?それじゃあ聞こえないなぁ」と煽るように言い、その場にしゃがみ私の眼前に不気味なマスクを近づけた。
「俺といつも仲良くお喋りしてくれたよね、顔も知らない奴からの電話なのに...君は本当に無防備だな。」
男の手が私の頭を撫でる。革手袋の感触が少し痛い。
「あまり大きな声で叫んだら刺しちゃうから。」と、彼は私の口に貼ってあったテープを一気に剥がした。口元の痛みに身体がびくつく。
「ぁ...貴方は...電話の...人...?」
震える声でそう尋ねれば「その通り」とボイスチェンジャーをマスクにあてながら、彼は笑った。
その声はあの電話の相手そっくりだ。
数ヶ月前の間違え電話から、彼は私に頻繁に電話をかけるようになった。初めは警戒していたけれど、いつの間にか自然と会話できる仲になっていて...それで、いつもみたいに夜道で話していたら不意に「後ろだ」と言われて...
「う"っ...」
ズキズキ痛む頭を押さえる。
何故、この男は私をこんな場所へ連れてきたのか。窓はカーテンが閉められ、陽の光が遮られている。あるのは私の横たわるベッドのみ。
立ち上がろうと頑丈に縛られた手足を動かし、なんとか上半身を起こす。
...と同時に、彼が私の肩を強く掴み再びベッドへ倒した。
「痛っ...」
「誰が起きて良いと言った...?」
男が私の上に馬乗りになっている。
どこから出したのか、鋭く光るナイフを私の首にあてていた。少しでも引けば、私の首はパックリと切れてしまう。
呼吸が止まり、全身の血の気が引き、私は目の前の不気味なマスクを見つめることしかできなかった。
「本当はあの時殺そうとしたんだ、あのまま...後ろからグサリとね...。」
ナイフの切っ先が私の首を伝う、切れない程度の優しさで。くすぐったさと恐怖に身体が震える。
「でも君は俺の好みのタイプだし、あのまま殺すのも勿体ないと思ってね...君だって少しでも長く生きたいだろ?」
男の質問に小さく頷く。
すると彼は「良い子だ」と笑いながら首にあてていたナイフを離した。
「今日から君はここで暮らすんだ、俺と2人仲良くね...」
彼の手が粘着テープ越しに私の手首を撫でる。
「これ......外して...くださ...」
震える声でそう呟けば彼の撫でる手が止まり、今度は強めに握る。そして、そのまま私の頭上で固定した。
「どうして?外したら逃げる癖に...」
もう片方の手で今度は私の頬を撫で始めた。その仕草も恐ろしくて、私は何も言えずに目を逸らす。
「あぁ...ほんと可愛いな、Nameは。」
次第に頬を撫でる手はゆっくりと首を伝い、服越しに胸を撫でる。妙に優しい手つきで、服のボタンを外し始めた。
「ひっ...!やめ...やめて、ください...」
「大人しくしてないと...手が滑っちゃうかもな。」
再びナイフをチラつかせる彼に、私は抵抗を止めた。刺されたくはなかった、痛みを想像するだけで震えが止まらない。
彼は再び私の服を脱がせる。そして露になった上半身を革手袋越しに優しく愛撫し始めた。
「さぁName、俺が飽きるまでは沢山...可愛がってやるから。」
そう言って誘拐犯は、不気味なマスク越しに私を見ながら妖しく笑った。
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