Chapter2 - Splatted by Intent Look
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結局、今日はストレス発散に徹しようということに決めたデニムキャップは、いつものラクトを手にして射撃場に向かった。
パシュ、パシュ、とインクの矢を放つ音が響く。3本の矢を全て当てれば確1キル。だが動きながら撃つのでは、大抵2本しか当たらない。そして2撃目を撃とうと準備している間にやられるのがお決まりの負けパターンだ。
(やっぱり、こんなゴミエイムじゃ、チャージャーどころかラクトも向いていないのかもしれない。今までは塗りとマルミサで誤魔化してきたけど、対面ももっと強くならないと、スカルくんに見放されてしまうかもしれない……)
そっとブキを下ろし、ため息をつく。……その時だった。突然、空気を震わす射撃音と共に、目の前のイカバルーンが割れた。
「えっ……?」
音のした方を振り返ると、高台の上でスカルがリッターを構えていた。
「……お前は無意識に、下を向く癖がある」
スカルはそれだけ言うと、高台から飛び降りてデニムキャップの方へと向かってくる。
「スカルくん、もしかして見てた……?」
「ああ、お前の昇格戦の時からな」
「ええっ!? やだ! あんなヘッポコなとこ見てたの!? 恥ずかしいよ……!」
スカルはそれには応えず、ただ無言でデニムキャップに歩み寄る。そしてデニムキャップのすぐ隣に立つと、「手を貸してみろ」と、ブキを持つデニムキャップの左腕をそっと掴んだ。
(えっ……?)
そのまま彼は、ブキを握る手を水平に持ち上げていく。
「ストリンガーのことは良く分からないが……少なくともこの角度で見ながら撃つことを意識した方が、より遠くまで弾が届くはずだ」
(ど、どうしよう、スカルくんに、触れられてる……!? しかも、近いよ……っ!)
頭の中がパニックになって、話している内容など全く入ってこなかった。バクバクと高鳴る心臓の音が、急激に上がってゆく体温が、彼に伝わらないか。それだけしか考えられなかった。
「良い姿勢になったな。……さっきから見ていて思ったんだが、やはりお前はラクトを使うのが一番ではないか?」
「どうして……?」
デニムキャップは顔を上げ、スカルの方を見る。
(背、高いなぁ……それに近くで見ると、腕も、体つきも、しっかりしてる。あんなに重いリッターを軽々と使いこなせるなんて、やっぱり凄いよ……)
デニムキャップが見とれているのに気付いているのかいないのか、スカルはただ話を続ける。
「そもそもお前は、どうしてラクトを使おうと思った?」
「それは……!」
デニムキャップがラクトを使う理由。彼女は思うまま、全てを伝えた。
圧倒的な塗り性能。スペシャルの射程が無限で、自陣塗り中でもゲージを持て余すことがない。カーリングボムとチャージキープによる高い機動力。そして何より、塗りとマルチミサイルで、たった数秒で戦況をひっくり返せるだけのロマン……
「フッ……やはりお前は、ラクトの使い方をよく分かっているな」
マスクの下に、ほんの少しだけ笑みが見えた……ような気がした。
「お前は下を見る癖があると言っただろう。それはお前が、常に足元を警戒しているということでもある」
「え……?」
「お前はいつも、味方が動ける足場はあるか、敵が潜伏できる場所はないか、敵のおおよその位置はどこか。常にこれを意識しながら動いている。そして、そのような動きは、ラクトのようなブキだからこそ出来ることだ」
(スカルくんがそこまで的確に私の動きを把握していたなんて……)
デニムキャップはほんの少し、頬を赤らめる。
「リッターは塗り性能が弱い。だから、塗りとマルチミサイルでサポートするお前の戦術は、味方であれば助けになるし、敵であれば脅威になる。……だからお前は、お前なりの強さを磨いていけ。それがお前の、勝利への道だ」
スカルの真っ直ぐな眼差し。それを見たデニムキャップの胸の奥は熱くなってゆく。
「ありがとう、スカルくん。私……頑張るね。頑張って頑張って、もっともっと強くなって――いつか、スカルくんとも渡り合えるぐらいに」
「……ああ」
手に馴染んだラクトを、デニムキャップはぎゅっと握りしめた。
「……ところで、ブキ屋はどこだ」
「えっ、また迷子!? ……えっと、一緒に行こうか?」
「助かる」
二人並んで、ロビーから外に出る。冬でも強いバンカラ地方の陽射しは、今日は一層眩しく感じられた。
パシュ、パシュ、とインクの矢を放つ音が響く。3本の矢を全て当てれば確1キル。だが動きながら撃つのでは、大抵2本しか当たらない。そして2撃目を撃とうと準備している間にやられるのがお決まりの負けパターンだ。
(やっぱり、こんなゴミエイムじゃ、チャージャーどころかラクトも向いていないのかもしれない。今までは塗りとマルミサで誤魔化してきたけど、対面ももっと強くならないと、スカルくんに見放されてしまうかもしれない……)
そっとブキを下ろし、ため息をつく。……その時だった。突然、空気を震わす射撃音と共に、目の前のイカバルーンが割れた。
「えっ……?」
音のした方を振り返ると、高台の上でスカルがリッターを構えていた。
「……お前は無意識に、下を向く癖がある」
スカルはそれだけ言うと、高台から飛び降りてデニムキャップの方へと向かってくる。
「スカルくん、もしかして見てた……?」
「ああ、お前の昇格戦の時からな」
「ええっ!? やだ! あんなヘッポコなとこ見てたの!? 恥ずかしいよ……!」
スカルはそれには応えず、ただ無言でデニムキャップに歩み寄る。そしてデニムキャップのすぐ隣に立つと、「手を貸してみろ」と、ブキを持つデニムキャップの左腕をそっと掴んだ。
(えっ……?)
そのまま彼は、ブキを握る手を水平に持ち上げていく。
「ストリンガーのことは良く分からないが……少なくともこの角度で見ながら撃つことを意識した方が、より遠くまで弾が届くはずだ」
(ど、どうしよう、スカルくんに、触れられてる……!? しかも、近いよ……っ!)
頭の中がパニックになって、話している内容など全く入ってこなかった。バクバクと高鳴る心臓の音が、急激に上がってゆく体温が、彼に伝わらないか。それだけしか考えられなかった。
「良い姿勢になったな。……さっきから見ていて思ったんだが、やはりお前はラクトを使うのが一番ではないか?」
「どうして……?」
デニムキャップは顔を上げ、スカルの方を見る。
(背、高いなぁ……それに近くで見ると、腕も、体つきも、しっかりしてる。あんなに重いリッターを軽々と使いこなせるなんて、やっぱり凄いよ……)
デニムキャップが見とれているのに気付いているのかいないのか、スカルはただ話を続ける。
「そもそもお前は、どうしてラクトを使おうと思った?」
「それは……!」
デニムキャップがラクトを使う理由。彼女は思うまま、全てを伝えた。
圧倒的な塗り性能。スペシャルの射程が無限で、自陣塗り中でもゲージを持て余すことがない。カーリングボムとチャージキープによる高い機動力。そして何より、塗りとマルチミサイルで、たった数秒で戦況をひっくり返せるだけのロマン……
「フッ……やはりお前は、ラクトの使い方をよく分かっているな」
マスクの下に、ほんの少しだけ笑みが見えた……ような気がした。
「お前は下を見る癖があると言っただろう。それはお前が、常に足元を警戒しているということでもある」
「え……?」
「お前はいつも、味方が動ける足場はあるか、敵が潜伏できる場所はないか、敵のおおよその位置はどこか。常にこれを意識しながら動いている。そして、そのような動きは、ラクトのようなブキだからこそ出来ることだ」
(スカルくんがそこまで的確に私の動きを把握していたなんて……)
デニムキャップはほんの少し、頬を赤らめる。
「リッターは塗り性能が弱い。だから、塗りとマルチミサイルでサポートするお前の戦術は、味方であれば助けになるし、敵であれば脅威になる。……だからお前は、お前なりの強さを磨いていけ。それがお前の、勝利への道だ」
スカルの真っ直ぐな眼差し。それを見たデニムキャップの胸の奥は熱くなってゆく。
「ありがとう、スカルくん。私……頑張るね。頑張って頑張って、もっともっと強くなって――いつか、スカルくんとも渡り合えるぐらいに」
「……ああ」
手に馴染んだラクトを、デニムキャップはぎゅっと握りしめた。
「……ところで、ブキ屋はどこだ」
「えっ、また迷子!? ……えっと、一緒に行こうか?」
「助かる」
二人並んで、ロビーから外に出る。冬でも強いバンカラ地方の陽射しは、今日は一層眩しく感じられた。