Chapter5 - Take the Top of Tower
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――ついにこの時が来てしまった。
いつかはその時が来る、それは分かりきっていた。けれど、どこか夢の中の出来事のようにも思えていた「その時」は、本当にデニムキャップの元へと訪れてしまったのだ。
スカルの前であの言葉が出されてしまった以上、もう後戻りすることはできない。デニムキャップは覚悟を決めて、スカルと向き合う。
「スカルくん。私――言わなきゃいけないことがあるの」
スカルは静かに頷きながら、デニムキャップの話を聞いている。
「私がこの大会にスカルを誘ったのは……その、優勝の……ウェディングフォトが、目当てで……」
静かな潮風が、波の音とカモメの鳴き声を運んでくる。スカルの瞳に宿る光が、ほんの少しだけ揺らぐ。
「私……スカルくんのことが、好きなの。本当はずっと、伝えなきゃって思ってた。だけどずっと、言えずにいた。だから、こんな騙すような形で、大会に誘っちゃって……」
デニムキャップが全てを言い終わる前に、彼女は突然、ふわりと自分を包み込む温かい感触に気付く。
(スカルくん…………!?)
気付けば、デニムキャップはスカルの腕の中に、抱きしめられていた。
「オレは……最初から分かっていた」
「え……?」
柔らかな腕の感触に閉じ込められたまま、デニムキャップはスカルを見上げる。
「イカップル杯が開催されることも、優勝賞品の内容も、オレは全部知っていた。その上で、お前からの誘いに乗った。……けれど、伝えたいことを伝える勇気もないままで、賞品は何かと聞いて、お前の真意を引き出せないかと考えていた」
「スカルくん……」
「オレはお前が思うほど、完璧な奴ではない。この想いが恋だと気付いた後も、オレには動き出す勇気なんて無かった。悩んで、迷って、何度も遠回りして――そんな日々の繰り返しだった」
デニムキャップに触れるスカルの手が、微かに震えていた。
「だけど、今ならもう、遠回りせず伝えられる。オレは本当は――ずっと、こうしたかった」
デニムキャップを抱きしめる腕の力が強くなって、Tシャツ越しに彼の熱と心臓の鼓動が伝わってくる。デニムキャップ自身と同じように早鐘を打つその心音で、ああ、彼も同じ気持ちでいるんだ、とデニムキャップは気付く。
「デニムキャップ。オレは――お前のことが好きだ。だから……オレをデニムキャップの恋人にして欲しい」
「スカルくん……私も……スカルくんの恋人になりたい!」
デニムキャップはスカルの背に腕を回して、彼を抱きしめ返す。二人の熱が、鼓動が、どちらのものかも分からぬほどに近づき合い、混ざり合っていった。
***
写真撮影の準備の時間になり、スカルとデニムキャップは、それぞれ別々に係員に案内されて、船内にある控え室へと向かった。
「わあ、すごい……! こんなの、私が着ちゃっていいの……!?」
着替えとメイクを終え、撮影用に用意されたウェディングドレスを着たデニムキャップは、鏡に映る自分の姿を見て思わず歓声を上げる。
「よくお似合いですよ、デニムキャップさん! それでは、準備が整うまで、廊下で待機していてくださいね」
係員に言われるまま廊下に出ると、そこには既に、撮影用のタキシードに着替えたスカルの姿があった。
(あっ……スカルくんの……素顔……!)
イカスカルマスクを外した彼の姿を見るのは、デニムキャップにとって初めてだった。
「待っていたぞ、デニムキャップ」
普段のスカルと同じ声なのに、衣装のせいか、普段の何倍もかっこいい声に思えてしまって、名前を呼ばれるだけでデニムキャップは照れてしまう。
「……美しいな。よく似合っている」
「そ、そんなこと言われたら……」
デニムキャップの顔が、急激に紅く染まる。
「スカルくんこそ……すごく……かっこいい」
「そうか……ありがとう」
スカルも頬を紅く染めて、そっと口角を上げて微笑む。
(スカルくんが、笑ってる……)
今、デニムキャップの目の前にいるのは、間違いなくS4最強の狙撃手にしてバトルの世界の頂点に限りなく近い存在、スカルそのものだ。そして、それと同時に、誰かに恋をして、褒められれば照れて、嬉しいと思えば微笑む――何処にでもいる、ごく普通のボーイでもあるのだ。
「デニムキャップ……もっとこっちに来い」
「スカルくん……?」
言われるがまま、スカルに近付いていくと、そのまま先程と同じように、背中に手を回して抱きしめられる。
「大好きだ……、デニムキャップ」
そのままスカルの指先が、デニムキャップの頬にそっと触れて、顔を寄せられる。
(えっ――)
そして、そのまま――スカルに唇を奪われた。
柔らかく触れる感触の後に、温かな吐息がかすかに口元に掛かる。身体を巡る拍動が、その強さを増していくのが分かる。
「私も……スカルくんが、大好き……!」
ウデマエもXPも、デニムキャップの実力ではスカルには遠く及ばない。けれど、今この瞬間は、スカルに最も近い場所にいる存在は自分自身なのだと、デニムキャップは胸を張って言える、そんな気がした。
「係員が呼んでいるな。一緒に行くぞ」
「うん!」
スカルがデニムキャップの手を引いて、甲板へと出る扉をくぐり抜ける。周りには空と海、どこまでも広がる青。春の訪れを感じさせる陽射しを浴びたドレスの裾が揺れて、ふたつの白い輝きは歩みを進めてゆく。
眩しい光に照らされて、互いに顔を見合わせて微笑んで、最初の一歩を、二人はまだ踏み出したばかりだ。
――いつか「本物」をその身に纏うことになる、その日へと向かって、ただ真っ直ぐに。
『Full Charge & Rock On!!』 -fin.-
いつかはその時が来る、それは分かりきっていた。けれど、どこか夢の中の出来事のようにも思えていた「その時」は、本当にデニムキャップの元へと訪れてしまったのだ。
スカルの前であの言葉が出されてしまった以上、もう後戻りすることはできない。デニムキャップは覚悟を決めて、スカルと向き合う。
「スカルくん。私――言わなきゃいけないことがあるの」
スカルは静かに頷きながら、デニムキャップの話を聞いている。
「私がこの大会にスカルを誘ったのは……その、優勝の……ウェディングフォトが、目当てで……」
静かな潮風が、波の音とカモメの鳴き声を運んでくる。スカルの瞳に宿る光が、ほんの少しだけ揺らぐ。
「私……スカルくんのことが、好きなの。本当はずっと、伝えなきゃって思ってた。だけどずっと、言えずにいた。だから、こんな騙すような形で、大会に誘っちゃって……」
デニムキャップが全てを言い終わる前に、彼女は突然、ふわりと自分を包み込む温かい感触に気付く。
(スカルくん…………!?)
気付けば、デニムキャップはスカルの腕の中に、抱きしめられていた。
「オレは……最初から分かっていた」
「え……?」
柔らかな腕の感触に閉じ込められたまま、デニムキャップはスカルを見上げる。
「イカップル杯が開催されることも、優勝賞品の内容も、オレは全部知っていた。その上で、お前からの誘いに乗った。……けれど、伝えたいことを伝える勇気もないままで、賞品は何かと聞いて、お前の真意を引き出せないかと考えていた」
「スカルくん……」
「オレはお前が思うほど、完璧な奴ではない。この想いが恋だと気付いた後も、オレには動き出す勇気なんて無かった。悩んで、迷って、何度も遠回りして――そんな日々の繰り返しだった」
デニムキャップに触れるスカルの手が、微かに震えていた。
「だけど、今ならもう、遠回りせず伝えられる。オレは本当は――ずっと、こうしたかった」
デニムキャップを抱きしめる腕の力が強くなって、Tシャツ越しに彼の熱と心臓の鼓動が伝わってくる。デニムキャップ自身と同じように早鐘を打つその心音で、ああ、彼も同じ気持ちでいるんだ、とデニムキャップは気付く。
「デニムキャップ。オレは――お前のことが好きだ。だから……オレをデニムキャップの恋人にして欲しい」
「スカルくん……私も……スカルくんの恋人になりたい!」
デニムキャップはスカルの背に腕を回して、彼を抱きしめ返す。二人の熱が、鼓動が、どちらのものかも分からぬほどに近づき合い、混ざり合っていった。
***
写真撮影の準備の時間になり、スカルとデニムキャップは、それぞれ別々に係員に案内されて、船内にある控え室へと向かった。
「わあ、すごい……! こんなの、私が着ちゃっていいの……!?」
着替えとメイクを終え、撮影用に用意されたウェディングドレスを着たデニムキャップは、鏡に映る自分の姿を見て思わず歓声を上げる。
「よくお似合いですよ、デニムキャップさん! それでは、準備が整うまで、廊下で待機していてくださいね」
係員に言われるまま廊下に出ると、そこには既に、撮影用のタキシードに着替えたスカルの姿があった。
(あっ……スカルくんの……素顔……!)
イカスカルマスクを外した彼の姿を見るのは、デニムキャップにとって初めてだった。
「待っていたぞ、デニムキャップ」
普段のスカルと同じ声なのに、衣装のせいか、普段の何倍もかっこいい声に思えてしまって、名前を呼ばれるだけでデニムキャップは照れてしまう。
「……美しいな。よく似合っている」
「そ、そんなこと言われたら……」
デニムキャップの顔が、急激に紅く染まる。
「スカルくんこそ……すごく……かっこいい」
「そうか……ありがとう」
スカルも頬を紅く染めて、そっと口角を上げて微笑む。
(スカルくんが、笑ってる……)
今、デニムキャップの目の前にいるのは、間違いなくS4最強の狙撃手にしてバトルの世界の頂点に限りなく近い存在、スカルそのものだ。そして、それと同時に、誰かに恋をして、褒められれば照れて、嬉しいと思えば微笑む――何処にでもいる、ごく普通のボーイでもあるのだ。
「デニムキャップ……もっとこっちに来い」
「スカルくん……?」
言われるがまま、スカルに近付いていくと、そのまま先程と同じように、背中に手を回して抱きしめられる。
「大好きだ……、デニムキャップ」
そのままスカルの指先が、デニムキャップの頬にそっと触れて、顔を寄せられる。
(えっ――)
そして、そのまま――スカルに唇を奪われた。
柔らかく触れる感触の後に、温かな吐息がかすかに口元に掛かる。身体を巡る拍動が、その強さを増していくのが分かる。
「私も……スカルくんが、大好き……!」
ウデマエもXPも、デニムキャップの実力ではスカルには遠く及ばない。けれど、今この瞬間は、スカルに最も近い場所にいる存在は自分自身なのだと、デニムキャップは胸を張って言える、そんな気がした。
「係員が呼んでいるな。一緒に行くぞ」
「うん!」
スカルがデニムキャップの手を引いて、甲板へと出る扉をくぐり抜ける。周りには空と海、どこまでも広がる青。春の訪れを感じさせる陽射しを浴びたドレスの裾が揺れて、ふたつの白い輝きは歩みを進めてゆく。
眩しい光に照らされて、互いに顔を見合わせて微笑んで、最初の一歩を、二人はまだ踏み出したばかりだ。
――いつか「本物」をその身に纏うことになる、その日へと向かって、ただ真っ直ぐに。
『Full Charge & Rock On!!』 -fin.-
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