Chapter5 - Take the Top of Tower
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果てしなく広がる澄んだ青を眺めながら大きく息を吸えば、潮の香りが胸に満ちてゆく。マンタマリア号の停泊する港に設けられた観客席は、前回の決勝戦よりもさらに多くの客が押し寄せていた。
「緊張しているのか」
デニムキャップの隣に立つスカルは、普段と変わらぬ、澄ました顔であった。
「うん……だいぶ。スカルくんは、こんな時でも緊張しないの?」
「いや…………している」
意外な返答に、デニムキャップは視線を上げる。
「スカルくんでも、緊張することあるんだ」
「何しろ今回は……特別だからな」
「特別……」
その時、スカルが何かに気付いたように、観客席の方へと振り向く。
「む、あいつらは……」
「あっ、もしかして……S4の!?」
スカルの視線のすぐ先には、デニムキャップも知っている、S4のアーミー、アロハ、マスクの姿があった。
「遂に決勝戦だな! 優勝したら、ワガハイが祝いのカレーを振る舞おう! デニムキャップも遠慮なく食べるが良い!」
「やっぱ悔しいけど、デニムキャップちゃんはスカルがお似合いだよね〜。ってことで、特別に見に来ちゃったってカンジ〜」
「こんなリア充だらけの大会……仕方なく来てやったんだからな〜、S4の顔に泥を塗るようなことはするなよ〜」
「……ああ。言われなくとも、オレ達は必ず、勝利を掴みに行く」
スカルはS4の皆に向けて力強く頷き、そして再びデニムキャップの方へ向き合う。
「この決勝戦は、ステージも、対戦相手も、オレ一人では決して立ち向かえない。それはデニムキャップ一人であっても同じことだ。だが、オレとデニムキャップ、二人で力を合わせれば――不可能を可能にできると、オレは信じている」
潮風が吹き抜けて、彼のスカルマスクを靡かせる。見えそうで見えないその口元に、彼はどんな感情を隠しているのか。今のデニムキャップには知る術は無い。だけど、きっと今、スカルは笑っている気がする――何故だか、デニムキャップにはそう思えた。
「必ず、勝ちに行こう。オレとお前と、二人でしか成しえない勝利を掴むんだ」
「うん!」
『さあ、第6回イカップル杯、いよいよ決勝戦です!』
『アルファチームは、言わずと知れたS4最強の狙撃手、スカル選手と、そんな彼を見事打ち破ったマゼンタチームの新進気鋭のラクト使い、デニムキャップ選手のペア!』
『そしてブラボーチームは、同じくマゼンタチームからやって来た、前回王者のグレープ選手とサニー選手のペアです! これは面白い戦いになりそうだー!』
スポナーの中で息を潜めて、スタートを待つ。高鳴る心臓の音が、始まりへのカウントダウンを告げる。
『レディー……ゴー!』
潮風に乗るように、スポナーから飛び出してインクを泳ぎながら進んでいく。
「作戦通り、初動は二手に分かれる。デニムキャップはヤグラの進行ルートの移動経路を確保しつつ中央高台を制圧してヘイトを集める。オレは右の防衛ポジションから狙うぞ」
「うん!」
壁を塗り、最低限の移動経路を確保しながら、まずは要所となる中央の高台へと向かう。
「やっぱり来たね、グレープ!」
金網の上で、デニムキャップはグレープと対峙する。チャージしてブキを構えれば、すぐさまスプラッシュシールドに視界を遮られる。だが、これも計算のうちだ。遠くから重い射撃音が響いて、グレープを撃ち抜く。
「まずは一人……。だが、ヤグラ乗りはサニーの方だ。すぐに仕留めるぞ」
「うん!」
金網から下に降りて、デニムキャップはサニーの姿を探す。
「見つけた!」
「……おっと」
距離を保ちながら、ヤグラの周囲での駆け引きが始まる。射程内に入らないように距離を取りつつ、チャージ中の隙を狙う。だが、デニムキャップもサニーも、互いに攻撃が当たることは無い。
「流石サニーだなぁ……全然当たらない……!」
「デニムキャップこそ……こんなに軽快に避けてくるなんて」
そして膠着状態にとどめを刺したのはスカルだ。サニーが物陰から姿を出した隙を狙って、一瞬のうちに射線を合わせて撃ち抜く。
「ワイプアウトだ。ヤグラに乗ってくれ」
「オッケー、ついでに敵がどっちから来るかも見とくね」
デニムキャップがヤグラに乗り、第1カンモンを突破して、このステージ最大の難関、第2カンモンへと向かう。
「あれ、二人とも来るの遅いね」
「そろそろ迎撃に来てもおかしくはない頃なんだが……む、あれは!?」
敵が近付く気配もなく、ヤグラが第2カンモンへと到着したその時だった。
「上に注意だよっ!」
「…………っ!」
壁の向こう側から突然姿を現したサニーは、デニムキャップの頭上から勢いよくウルトラハンコを振り下ろして襲いかかる。
「うわあぁっ!」
チャージする間もなくデニムキャップは押し潰され、ヤグラが止まる。
「しまった、スペシャルを溜めていたのか……!」
高台に陣取っていたスカルも、そのままハンコの投擲を避けるために段差を降りる。だがその背後から挟み撃ちにするように、グレープのナイスダマが襲いかかる。
「今度はこっちのワイプアウトだ! サニー、このまま一気に進めるぞ!」
サニーがガチヤグラを奪い取ったことで、ヤグラは逆方向へと進み始める。
「仕方ない。第1カンモンの左右で挟み撃ちにして防衛するぞ」
リスポーンから復帰したスカルとデニムキャップは、再び二手に分かれて第一カンモンの近くへと向かう。
「ついでにスペシャルも溜めておいたし、こっちも二人で合わせて使おう!」
「ああ」
サニーを乗せたヤグラが第1カンモンに到着すると同時に、タイミングを合わせてスペシャルを使う。スカルがヤグラ上にホップソナーを投げ、デニムキャップがマルチミサイルで二人をまとめてロックする。手負いとなったサニーがヤグラから降りた瞬間を見計らって、再びデニムキャップがヤグラを奪い取る。だがすかさずサニーもデニムキャップに狙いを定めてチャージし、デニムキャップをすぐにヤグラから下ろす。グレープはホップソナーを破壊するとそのままスプラッシュシールドで射線を遮り、スカルのいる高台へ圧をかけていく。
『さあ、前線は再び膠着状態だ! 現在はスカル&デニムキャップペアがカウントリードですが、互いにまだ第2カンモンは突破できておりません! グレープ&サニーペアも、まだまだ逆転のチャンスはあります!』
ヤグラは中央に留まったまま、デニムキャップとサニー、スカルとグレープによる睨み合いが繰り広げられる。
――やがて、その戦いを最初に制したのはサニーとグレープだった。スカルがグレープに射線を向けている隙を狙ってサニーが素早くクイックボムを投げ、グレープが追い討ちをかけるようにキルを取る。
「スカルくん……!」
「デニムキャップ、戻れ!」
「っ、うわあぁっ!」
1人となったデニムキャップはスカルの呼ぶ声に反応するも、間に合わぬまま敵に挟まれ、そのままやられてしまう。
『さあ、再びワイプアウトを取りました! サニー選手、ヤグラを奪う! さあ、第1カンモンを突破して、第2カンモンに到着! ここでグレープ&サニーペア、カウントリードだー!』
スカルとデニムキャップはリスポーンから復帰して、互いに顔を見合わせる。
「悲観的になるな。ここから逆転して押し切っていく。オレ達なら簡単だろう」
「そうだね、まだまだ諦めないよ! 二人でヤグラを止めよう!」
再び二手に分かれて、二人は意気揚々と第2カンモンの防衛へと向かった。