Chapter2
名前変換フォーム
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***
『さあさあお立ち会い! お次のナワバリバトルの舞台はここ、キンメダイ美術館やで!』
『両チームとも、素早く動けるブキが揃っとるの! どんな戦いが繰り広げられるのか、楽しみじゃー!』
遠くスピーカーから響くすりみ連合の実況の声を聞きながら、ヒッセンを片手にスポナーの上に立って、味方たちの様子を伺う。隣にはスパッタリーを両手に構えたアズキの姿。そのさらに向こうにいる野良の味方たちは、特にこちらを見て何か反応しているような様子はない。
――また名前を呼ばれなかったな、と胸の内で呟く。バンカラ街でもS4やライダーといった強豪たちはかなり名が知れているようで、彼等が野良でバトルに潜れば必ずといって良いほど実況に名前を呼ばれ、敵味方からも観客席からもざわめきが起こる。一応、オレもマスク率いるシアンチームの一員ではあるから、たまに実況に「シアンチームのオーロラヘッドホン」と呼ばれたり、味方になった者に声をかけられたりすることだって無いわけではない。だが、マスクと一緒に潜る時に比べたら、その差は歴然だ。せめて、マスクと並ぶほど強くなれたら――もう少し、誰かの印象に残れるのだろうか。
『レディー……ゴー!』
バトルが始まり、先陣を切って飛び出していったのはアズキだ。オレが自陣を塗っていく間に、彼女は一つ二つとビーコンを置き、中央へと駆け出していく。
(敵にはローラーが二人いるから、いつも以上に敵の位置には気をつけないと……潜伏していそうなのは……)
オレはいつものように物陰で潜伏して、ステージ中央付近の様子を伺う。ローラーが二人、敵陣の高台から中央へと降りていったのを確認して、どの辺りにポイズンミストを投げれば効果的だろうか、と考えを巡らせていた、そのときだった。
「……はっ……とりゃっ!」
アズキの足元から、カーボンローラーが襲いかかる。だが彼女は素早くスライドでそれを躱して、一気に間合いを詰めて返り討ちにする。そして、その体勢からひらり、ひらりと軽快なスライドで動き回ったかと思うと、彼女を捉えようとしたワイドローラーの背後に回り込み、目にも止まらぬ速さで倒す。なんという鮮やかな動きだろう、としばらく彼女に目が釘付けになっていた。
オレの得意とする戦法は、シアンチームの「
(オレも……もっと勇気を持って、前線に出ることができたら……)
ポイズンミストを投げて敵の動きを警戒しつつ、できるだけ敵の射程内に入らないように塗りを広げていたオレの耳に、アズキの声と楽しげなメロディーが届く。
「受け取ってください!」
中央の柱の手前に、アズキが出したエナジースタンドが置かれている。オレは迷わず駆け寄って、ドリンクを受け取る。
「感謝ですぞ!」
ドリンクを飲めば、力がみなぎり急激に身体が軽くなる。今ならどんなことでも出来てしまいそうだ。オレは中央の柱に登ると、アズキに続いて、軽い足取りで敵陣の高台へと飛び移った。
「右から敵が回り込んできますぞ!」
「分かりました!」
敵の位置をしっかりと捉えて、柱を利用してオレとアズキとで挟み撃ちにする。
「ナイスアシストです!」
アズキからナイスを貰えた。思わずにやけてしまいそうになる。
(ヒッセンは本来、前線に出てこそ活躍できるブキですからな。やはりオレも、こうして積極的に対面していく方が良いのかもしれないですな)
人数有利ということもあり、ここはしっかりと前線を押し上げていくべき場面だろう。そう判断したオレは、アズキと共に、敵陣方面へ一気に塗りを広げていく。
「ローラーが来てます!」
「了解ですぞ!」
敵のリスポーンから、ローラーが二人こちらに向かってくる。普段なら生存意識を高く持つオレだが、今はしっかりとキルを狙っていきたい所だ。オレはカーボンローラーに向けてインクを浴びせる。――だが、二撃目を構えるより早く、敵はローラーを振りかぶる。
――バシャッ!
先にインクを被ったのはこちらだった。逃げる隙も無くオレは倒され、ついでにとばかりに隣にいたアズキも倒される。
「アズキ氏!」
「オーロラさん! 大丈夫です、ビーコンを使ってください!」
その声を聞き終えると同時に、気づけばリスポーンへと戻ってきていた。その間僅か1秒。ドリンクに助けられたことに感謝して、アズキと共にビーコンへと飛ぶ。
「前線は戻されちゃいましたけど……まだまだこれからですよ!」
アズキはすかさず新しいビーコンを設置して、中央方面へ塗りを広げていく。オレもそれに続いて中央に向かおうとした時――遠くで敵のローラーがインクに潜るのが見えた。
(まずいですぞ……あの場所からだと、一直線にアズキ氏の近くまで来れてしまう!)
咄嗟にオレは潜伏して、マップを確認する。アズキが置いたビーコンの近くに、敵の影が映っている。そしてそれは、真っ直ぐにアズキの足元へと向かっていた。
「――危ないっ!」
アズキの手前、敵の潜む辺りへ、咄嗟にポイズンミストを投げる。
「……!」
あわやアズキに襲いかかろうとしていたローラーはポイズンミストに足を取られ、彼女にインクが届く一歩手前で倒れ込む。その隙を狙ってすかさず接近し、ヒッセンでインクを被せてキルを取る。
「大丈夫ですかな!?」
「オーロラさん……ありがとうございます!」
アズキは眩しい笑顔を向けると、すぐに中央の柱から再び敵陣へと乗り移る。だが、彼女の行く先に待ち構えるのは三人もの敵。このままではあっという間に囲まれてしまう。
(アズキを助ける手立ては……そうだ!)
先程のドリンクのおかげで、スペシャルが溜まったままなのを思い出したオレは、ジェットパックを発動して高く飛び上がる。
「後方支援はお任せですぞ!」
派手なスペシャルは柄ではないが、それでもジェットパックの扱いには随分と慣れてきた。上空からランチャーを放って、アズキの周囲から敵を引き剥がしていく。
「今がチャンスですぞ、アズキ氏!」
その言葉に反応するように、アズキは軽快なスライドで敵の攻撃を躱しながら間合いを詰め、一気に二人を仕留める。残る一人はしぶとくアズキの間合いから逃れつつ彼女を狙っていたが、激しい撃ち合いで敵の注意がアズキに向いている隙を狙って、ランチャーで一撃を加える。
(惜しい……あと少し!)
直撃はできなかったが、爆風は当たったようだ。すかさず二撃目を放とうとするも、効果時間が切れて元の場所へと戻ってきてしまう。
(後は頼みましたぞ、アズキ氏!)
残る一撃を心の中でアズキに託すと同時に、遠く敵陣側で、残る一人の敵が倒され――ワイプアウトとなった。