Chapter1
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「ど、どうすればいいんですか……!? グリルなんて、そんなオオモノ、聞いてないですけど……」
慌てふためくアズキに、高台からマスクが声をかける。
「特殊ウェーブについては研修では教えてくれないんだぞ〜。クマサン商会の闇だな〜」
「え、えぇ……」
マスクは高台の上から微動だにせず、リッターを構えながら告げる。
「オーロラ、今タゲられてるだろ〜。アズキに誘導の仕方のお手本を見せてやれよ〜」
「へっ!? わ、分かりましたぞ!」
オレは段差の上で待ち構えながら、アズキに手招きする。
「良いですかな? グリルは赤いマーカーが付いた者を最短ルートで追いかけてくる……そしてグリルは段差を昇り降りできないので、タゲられた者がこのようにして段差を昇り降りすることで、狙いやすい場所にグリルを留めておくことができるのですぞ」
イカ状態になり、コンテナ横の段差を往復しながらグリルを誘導しているうちに、ズドン、とリッターの射撃音が響いて、グリルが足止めされる。
「そしてこのように、尻尾を撃つと動きが止まるので、その隙に尻尾をたくさん撃って倒すのですぞ!」
そう説明している傍から、既にアズキはグリルから大量にこぼれ出た尻尾に向けてブラスターを放っている。――やはり飲み込みが早い。
「えっと……倒しました!」
「よし、そうしたら急いで納品ですな!」
アズキが金イクラを運んでいる間に、オレはローラーで足元のコジャケ達を轢いていく。
「ローラーや連射力のあるブキは、このようにコジャケのヘイトを買いつつ処理すると良いですぞ!」
次のターゲットはマスクだ。慣れた動きで段差を昇り降りし、野良バイターとアズキで尻尾を狙う。討伐、納品と順調に進んでいき、オレはアズキを守るように、コジャケの群れを残らずローラーで轢いていく。
(コジャケ処理はローラーの使命……一匹たりともアズキに触れさせはしませんぞ!)
プチプチと音を立てて、コジャケ達が次々にイクラへと変わっていく。――オレが守ってやらなければ。頭の中は、ただそれだけで一杯だった。
「ふむ、グリルが2体に増えたね……」
「――おい、オーロラ! お前、タゲられてんぞ〜! どこにいるんだよ〜!」
「……はっ!?」
コジャケの群れに埋め尽くされるようにいっぱいいっぱいだった思考から、マスクの声によって一気に引き戻される。彼の言う通り、グリルのターゲットを示す赤いマーカーは、二本とも自分に向けられていて――視線を上げれば、コンテナのすぐ横までグリルが迫ってきていた。
「えっ!? ……きゃあーー!!」
またしても響くアズキの悲鳴。しまった、と思う間すら無く、オレはアズキと共にグリルに轢き潰される。
「ちょ、ちょっと何やってんの〜!?」
グリルは一人がデスすれば一気に総崩れとなってしまうウェーブだ。目まぐるしくターゲットが移り、あっという間に生き残りはマスクだけとなり、ビビビ、とけたたましくブザーが鳴り響く。
「あーもう! しょうがない!」
マスクがすかさずナイスダマを掲げ、足元へと投げつける。一気にインクが弾けて、ウキワとなっていた三人は元に戻り、グリルも足止めされた。
「申し訳ない、アズキ氏!」
急いでコジャケを処理しながら、納品を進めていく。――アズキを守ろうとして夢中になるあまり、グリルのターゲットに気づかず逆にアズキを危険な目に遭わせてしまうだなんて。なんて情けない奴なんだ、と自分に嫌気が差す。
(好きな子に良い所を見せるどころか、こんなのはバイトの先輩としても失格ではありませんか……ここから先、どうにかして巻き返さなければ……!)
***
「はあ、はあ……何とか納品は間に合いましたな……」
グリルがコジャケを引き連れて去っていく。そこに残されたのは、おどろおどろしい色のインクにまみれた三つのウキワだった。
「イクラコンテナをセットしておくからね……キミたちの頑張りに期待しているよ」
ウキワとなっていた三人はすぐさま元の姿に戻って、休む間もなく最終ウェーブへのカウントダウンが始まる。
「今度は黒ザップですな。アズキ氏は?」
「リッターです……私、重量ブキって少し苦手でして……」
そう言いながら、アズキはうんしょっ、と声を出してリッターを担ぎ上げる。その仕草と声がまた可愛いもので、オレは再び、ずきゅん、と胸を撃ち抜かれたような感覚を覚える。
「お、重くありませんか、アズキ氏! リッターでも動きやすいように、精一杯のサポートは致しますぞ!」
正直なところ、リッターはオレでも重すぎてキツいと感じてしまう。ましてやこんなに華奢なガールが持つのは相当苦労するだろうし、彼女の発言からして重量ブキの扱いには慣れていなさそうだ。
「大丈夫です! 足元を取られなければ、ちゃんとやれる……はずです」
アズキが小さく頷く。それと同時に、遠くの海岸からバクダンが姿を現す。
「リッターのような長射程ブキが優先して狙うべきは、バクダン、ナベブタ、それからテッキュウもですな!」
「分かりましたっ!」
高台の頂上からアズキがフルチャージの射線をバクダンに向け、弱点が顕になると同時に撃ち抜く。その間にオレは高台を狙う雑魚シャケやらヘビやらを処理しつつ納品に回る。
ズドン、ズドン、と重い射撃音が響き渡る。あちらでバクダンが自爆し、こちらでナベブタが落下する。どうやらアズキが次々にオオモノを倒してくれているようだ。キケン度が低いというのもあるだろうが、違和感すら覚えるほどに討伐も納品も順調であった。
「おつかれさま、今回はこれでおしまいだよ」
ノルマを大きく上回る納品数で第三ウェーブを無事に終え、クマサンに促されてアズキ達と共にヘリに戻る。
「ありがとうございました! 最初はハラハラしましたけど、慣れると楽しいものですね!」
にこやかに話しかけるアズキを横目に見ながら、オレはしばしの間、考え事をしていた。
(これ……もしかしなくても、オレのサポートなんて必要なかったんじゃ……?)
慌てふためくアズキに、高台からマスクが声をかける。
「特殊ウェーブについては研修では教えてくれないんだぞ〜。クマサン商会の闇だな〜」
「え、えぇ……」
マスクは高台の上から微動だにせず、リッターを構えながら告げる。
「オーロラ、今タゲられてるだろ〜。アズキに誘導の仕方のお手本を見せてやれよ〜」
「へっ!? わ、分かりましたぞ!」
オレは段差の上で待ち構えながら、アズキに手招きする。
「良いですかな? グリルは赤いマーカーが付いた者を最短ルートで追いかけてくる……そしてグリルは段差を昇り降りできないので、タゲられた者がこのようにして段差を昇り降りすることで、狙いやすい場所にグリルを留めておくことができるのですぞ」
イカ状態になり、コンテナ横の段差を往復しながらグリルを誘導しているうちに、ズドン、とリッターの射撃音が響いて、グリルが足止めされる。
「そしてこのように、尻尾を撃つと動きが止まるので、その隙に尻尾をたくさん撃って倒すのですぞ!」
そう説明している傍から、既にアズキはグリルから大量にこぼれ出た尻尾に向けてブラスターを放っている。――やはり飲み込みが早い。
「えっと……倒しました!」
「よし、そうしたら急いで納品ですな!」
アズキが金イクラを運んでいる間に、オレはローラーで足元のコジャケ達を轢いていく。
「ローラーや連射力のあるブキは、このようにコジャケのヘイトを買いつつ処理すると良いですぞ!」
次のターゲットはマスクだ。慣れた動きで段差を昇り降りし、野良バイターとアズキで尻尾を狙う。討伐、納品と順調に進んでいき、オレはアズキを守るように、コジャケの群れを残らずローラーで轢いていく。
(コジャケ処理はローラーの使命……一匹たりともアズキに触れさせはしませんぞ!)
プチプチと音を立てて、コジャケ達が次々にイクラへと変わっていく。――オレが守ってやらなければ。頭の中は、ただそれだけで一杯だった。
「ふむ、グリルが2体に増えたね……」
「――おい、オーロラ! お前、タゲられてんぞ〜! どこにいるんだよ〜!」
「……はっ!?」
コジャケの群れに埋め尽くされるようにいっぱいいっぱいだった思考から、マスクの声によって一気に引き戻される。彼の言う通り、グリルのターゲットを示す赤いマーカーは、二本とも自分に向けられていて――視線を上げれば、コンテナのすぐ横までグリルが迫ってきていた。
「えっ!? ……きゃあーー!!」
またしても響くアズキの悲鳴。しまった、と思う間すら無く、オレはアズキと共にグリルに轢き潰される。
「ちょ、ちょっと何やってんの〜!?」
グリルは一人がデスすれば一気に総崩れとなってしまうウェーブだ。目まぐるしくターゲットが移り、あっという間に生き残りはマスクだけとなり、ビビビ、とけたたましくブザーが鳴り響く。
「あーもう! しょうがない!」
マスクがすかさずナイスダマを掲げ、足元へと投げつける。一気にインクが弾けて、ウキワとなっていた三人は元に戻り、グリルも足止めされた。
「申し訳ない、アズキ氏!」
急いでコジャケを処理しながら、納品を進めていく。――アズキを守ろうとして夢中になるあまり、グリルのターゲットに気づかず逆にアズキを危険な目に遭わせてしまうだなんて。なんて情けない奴なんだ、と自分に嫌気が差す。
(好きな子に良い所を見せるどころか、こんなのはバイトの先輩としても失格ではありませんか……ここから先、どうにかして巻き返さなければ……!)
***
「はあ、はあ……何とか納品は間に合いましたな……」
グリルがコジャケを引き連れて去っていく。そこに残されたのは、おどろおどろしい色のインクにまみれた三つのウキワだった。
「イクラコンテナをセットしておくからね……キミたちの頑張りに期待しているよ」
ウキワとなっていた三人はすぐさま元の姿に戻って、休む間もなく最終ウェーブへのカウントダウンが始まる。
「今度は黒ザップですな。アズキ氏は?」
「リッターです……私、重量ブキって少し苦手でして……」
そう言いながら、アズキはうんしょっ、と声を出してリッターを担ぎ上げる。その仕草と声がまた可愛いもので、オレは再び、ずきゅん、と胸を撃ち抜かれたような感覚を覚える。
「お、重くありませんか、アズキ氏! リッターでも動きやすいように、精一杯のサポートは致しますぞ!」
正直なところ、リッターはオレでも重すぎてキツいと感じてしまう。ましてやこんなに華奢なガールが持つのは相当苦労するだろうし、彼女の発言からして重量ブキの扱いには慣れていなさそうだ。
「大丈夫です! 足元を取られなければ、ちゃんとやれる……はずです」
アズキが小さく頷く。それと同時に、遠くの海岸からバクダンが姿を現す。
「リッターのような長射程ブキが優先して狙うべきは、バクダン、ナベブタ、それからテッキュウもですな!」
「分かりましたっ!」
高台の頂上からアズキがフルチャージの射線をバクダンに向け、弱点が顕になると同時に撃ち抜く。その間にオレは高台を狙う雑魚シャケやらヘビやらを処理しつつ納品に回る。
ズドン、ズドン、と重い射撃音が響き渡る。あちらでバクダンが自爆し、こちらでナベブタが落下する。どうやらアズキが次々にオオモノを倒してくれているようだ。キケン度が低いというのもあるだろうが、違和感すら覚えるほどに討伐も納品も順調であった。
「おつかれさま、今回はこれでおしまいだよ」
ノルマを大きく上回る納品数で第三ウェーブを無事に終え、クマサンに促されてアズキ達と共にヘリに戻る。
「ありがとうございました! 最初はハラハラしましたけど、慣れると楽しいものですね!」
にこやかに話しかけるアズキを横目に見ながら、オレはしばしの間、考え事をしていた。
(これ……もしかしなくても、オレのサポートなんて必要なかったんじゃ……?)