Chapter4
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やがて、ヘリはタツから少し離れた位置で高度を上げ、先程よりもシャケの群れ全体を見渡しやすい位置へと動いていった。
「それじゃあ……オレ達は一足先に、行ってくるよ」
「アズキちゃんは頼んだよ、オーロラ!」
そう言い残して、マスクとジャージーは、スーパージャンプでヘリから飛び降りると、シャケの群れの背後、距離を取った場所へと降り立った。
これ見よがしにタツの目の前を通り過ぎながら飛んでいったのが功を奏してか、相変わらずアズキを口元に咥えたままのタツは、マスクとジャージーの軌道を目で追うように首を動かし、やがて180度、ぐるりと身体の向きを変える。それに反応するかのように、集まっていた他のシャケ達も、何事かと180度後ろを振り向く。
「倒せるもんなら倒してみなよ〜」
マスクはシャケを挑発するように動きながらも、決してシャケに攻撃を当てることはせず、ただシャケの注目を引き付けながら、ジャージーと共に少しずつ後退して逃げている。
(これで、シャケ達の視線はこちらから逸れましたな。まずは、ヘルメットを回収しなければ……!)
もたもたしていれば、マスクやジャージーがウキワになりかねない。オレはシャケ達の背後にスーパージャンプで素早く降り立つと、気づかれる前に、落ちているヘルメットにサッと手を伸ばして、再びスーパージャンプで迅速にヘリへと戻って来る。
(よし、まずは第一段階クリア……!)
オレは独りヘリの中で、自らの手中に収まったヘルメットをじっと見つめる。つい先程まで、アズキがこの戦場を懸命に戦い抜いていた証。手袋越しに、アズキの気配が伝わってくる――そんな気がする。
(次はいよいよ、アズキの救出に取り掛からなければ……)
心臓が、バクバクと高鳴っていた。ヘルメットに括りつけられたまま、まるでアズキがオレに託してくれたかのようなスペシャルパウチを抜き取る、その手は既にガタガタと震えている。
オレはヘリの座席に、そっとヘルメットを置く。その場所に、無事にアズキが帰ってくることを願いながら。
(アズキ氏……)
オレは窓越しに、タツの口元からぶら下がったままのアズキの姿を視界に見据える。タツの巨大な身体と比べると、まるで豆粒のようにちっぽけに見えるアズキの身体。けれど、オレにとっては誰よりも大切で、大好きで、かけがえのない存在だ。
座席のヘルメットと、捕らわれたアズキの姿に、交互に視線を向ける。やがて、頭の中には、アズキと共に積み重ねてきた日々の思い出が、走馬灯のように蘇る。
始めて出会って、一目惚れしたあの日。一緒にナワバリバトルやバイトに参加して、協力し合いながらお互いを知っていく日々。好きなものに夢中になるその姿。いつもオレに向けてくれる、無邪気なその笑顔。想いが通じ合ったデートの思い出、繋いだ手の温もり――
アズキ自身のことも、アズキと共に過ごす何気ない日常も、特別な時間も――
「決して、失わせはしない」
オレは独り、確かにそう呟くと、ヘリの扉を開いて、目標地点に視点を定める。タツも、シャケの群れも、オレとは反対側で囮となっているマスクとジャージーに夢中で、こちらにはまだ目もくれない。
(チャンスは一度きり。必ず――)
震える手足を抑えて、オレはしっかりと深呼吸すると――覚悟を決めて、スペシャルパウチの封を勢いよく切った。
「必ず――オレの手で、守り抜いてみせますぞ!」
開け放ったヘリの扉から、ジェットパックで空中に舞い上がると、オレは一直線に目標地点へと向かう。
(あそこまで近づけば、タツに届くはず……外さないように、狙いを定めて……!)
ランチャーを一発でも撃ってしまえば、音でシャケには気付かれてしまうだろう。一発目でしっかりとタツを怯ませ、アズキを救出する。そしてそれを、効果時間が切れるまでに成し遂げなければいけない。
ジェットの噴射で高さを調整しながら、オレは目標地点へとやって来る。宙に浮く身体はゆらゆらと上下左右に揺れて、バランスが取りにくい。それでもオレは、しっかりとランチャーを構えて、狙いを定める。
(今だ……!)
タツの口元へ向けて、真っ直ぐに――オレはランチャーを一発だけ放った。
放たれた弾は、一直線にタツの口へと向かって行って――
「――ギャオオォォーーーーッ!」
口元に弾がぶつかり、爆発すると同時に、タツは口を大きく開けて、苦しむような叫び声を上げる。
その瞬間――大きな口に挟まれていたアズキの身体は、支えを失ったことで滑り落ち、重力に引かれながら空中を落下していく。
「アズキ氏!」
ランチャーの発射音と、タツの叫び声で、こちらの存在に気付いたシャケ達が一斉に振り向いてくる。落ちていくアズキの下には――目を光らせてアズキを狙うシャケの群れが待ち構えている。
「アズキ氏! あと少しですぞ!」
オレはジェットの噴射で勢い良く、アズキの真下目がけて飛んで行く。
両手を伸ばせば、シャケに触れられるよりも先に、落下してきたアズキの身体はオレの腕の中へと収まる。その瞬間――ジェットパックの効果時間が切れて、オレはアズキを抱えたまま、シャケの猛攻を素早く避けて高く舞い上がり、ヘリへと戻ってきたのだった。
「オーロラ、くん……?」
シャケのインクにまみれたままのアズキはどこか虚ろな目で、ぽうっとオレの方を見上げている。
「アズキ氏……もう大丈夫ですぞ」
オレはアズキをヘリの座席に座らせて、そっと微笑みかける。
「あ……」
ようやく助けられたことを理解したらしいアズキの瞳に、次第に輝きが戻っていく。
「オーロラくん……!」
今度ははっきりと、焦点の合った目でオレを見つめながら、縋り付くようにオレの名前を呼ぶ。
「どうやら無事のようですな……戻ってきてくれて良かったですぞ、アズキ氏」
オレが優しくそう告げると――アズキの表情は緩み始め――やがて、両方の目からは大粒の涙が溢れ出す。
「っ、うわああぁぁぁーーーーーん!! ……っ、う、怖かったよぉぉぉーーーー!!」
アズキはオレの胸元に顔を埋めて、ぼろぼろと涙を零しながらひたすらに泣き叫び続けていた。けれど、それが安堵故の涙だと、オレには分かる。
「よしよし……もう心配はいりませんぞ。オレがついていますからな」
オレは手袋を外して、アズキの頭を優しく撫でる。それから、アズキを包み込むように、そっと背中に手を回して抱きしめる。
「っ、ぐすっ、あ、ぅ、ああぁぁぁん……」
アズキはオレの腕の中でひたすらに泣きじゃくりながら――そっと、オレに応えるように腰に手を回して、抱きしめ返してくれたのだった。
「それじゃあ……オレ達は一足先に、行ってくるよ」
「アズキちゃんは頼んだよ、オーロラ!」
そう言い残して、マスクとジャージーは、スーパージャンプでヘリから飛び降りると、シャケの群れの背後、距離を取った場所へと降り立った。
これ見よがしにタツの目の前を通り過ぎながら飛んでいったのが功を奏してか、相変わらずアズキを口元に咥えたままのタツは、マスクとジャージーの軌道を目で追うように首を動かし、やがて180度、ぐるりと身体の向きを変える。それに反応するかのように、集まっていた他のシャケ達も、何事かと180度後ろを振り向く。
「倒せるもんなら倒してみなよ〜」
マスクはシャケを挑発するように動きながらも、決してシャケに攻撃を当てることはせず、ただシャケの注目を引き付けながら、ジャージーと共に少しずつ後退して逃げている。
(これで、シャケ達の視線はこちらから逸れましたな。まずは、ヘルメットを回収しなければ……!)
もたもたしていれば、マスクやジャージーがウキワになりかねない。オレはシャケ達の背後にスーパージャンプで素早く降り立つと、気づかれる前に、落ちているヘルメットにサッと手を伸ばして、再びスーパージャンプで迅速にヘリへと戻って来る。
(よし、まずは第一段階クリア……!)
オレは独りヘリの中で、自らの手中に収まったヘルメットをじっと見つめる。つい先程まで、アズキがこの戦場を懸命に戦い抜いていた証。手袋越しに、アズキの気配が伝わってくる――そんな気がする。
(次はいよいよ、アズキの救出に取り掛からなければ……)
心臓が、バクバクと高鳴っていた。ヘルメットに括りつけられたまま、まるでアズキがオレに託してくれたかのようなスペシャルパウチを抜き取る、その手は既にガタガタと震えている。
オレはヘリの座席に、そっとヘルメットを置く。その場所に、無事にアズキが帰ってくることを願いながら。
(アズキ氏……)
オレは窓越しに、タツの口元からぶら下がったままのアズキの姿を視界に見据える。タツの巨大な身体と比べると、まるで豆粒のようにちっぽけに見えるアズキの身体。けれど、オレにとっては誰よりも大切で、大好きで、かけがえのない存在だ。
座席のヘルメットと、捕らわれたアズキの姿に、交互に視線を向ける。やがて、頭の中には、アズキと共に積み重ねてきた日々の思い出が、走馬灯のように蘇る。
始めて出会って、一目惚れしたあの日。一緒にナワバリバトルやバイトに参加して、協力し合いながらお互いを知っていく日々。好きなものに夢中になるその姿。いつもオレに向けてくれる、無邪気なその笑顔。想いが通じ合ったデートの思い出、繋いだ手の温もり――
アズキ自身のことも、アズキと共に過ごす何気ない日常も、特別な時間も――
「決して、失わせはしない」
オレは独り、確かにそう呟くと、ヘリの扉を開いて、目標地点に視点を定める。タツも、シャケの群れも、オレとは反対側で囮となっているマスクとジャージーに夢中で、こちらにはまだ目もくれない。
(チャンスは一度きり。必ず――)
震える手足を抑えて、オレはしっかりと深呼吸すると――覚悟を決めて、スペシャルパウチの封を勢いよく切った。
「必ず――オレの手で、守り抜いてみせますぞ!」
開け放ったヘリの扉から、ジェットパックで空中に舞い上がると、オレは一直線に目標地点へと向かう。
(あそこまで近づけば、タツに届くはず……外さないように、狙いを定めて……!)
ランチャーを一発でも撃ってしまえば、音でシャケには気付かれてしまうだろう。一発目でしっかりとタツを怯ませ、アズキを救出する。そしてそれを、効果時間が切れるまでに成し遂げなければいけない。
ジェットの噴射で高さを調整しながら、オレは目標地点へとやって来る。宙に浮く身体はゆらゆらと上下左右に揺れて、バランスが取りにくい。それでもオレは、しっかりとランチャーを構えて、狙いを定める。
(今だ……!)
タツの口元へ向けて、真っ直ぐに――オレはランチャーを一発だけ放った。
放たれた弾は、一直線にタツの口へと向かって行って――
「――ギャオオォォーーーーッ!」
口元に弾がぶつかり、爆発すると同時に、タツは口を大きく開けて、苦しむような叫び声を上げる。
その瞬間――大きな口に挟まれていたアズキの身体は、支えを失ったことで滑り落ち、重力に引かれながら空中を落下していく。
「アズキ氏!」
ランチャーの発射音と、タツの叫び声で、こちらの存在に気付いたシャケ達が一斉に振り向いてくる。落ちていくアズキの下には――目を光らせてアズキを狙うシャケの群れが待ち構えている。
「アズキ氏! あと少しですぞ!」
オレはジェットの噴射で勢い良く、アズキの真下目がけて飛んで行く。
両手を伸ばせば、シャケに触れられるよりも先に、落下してきたアズキの身体はオレの腕の中へと収まる。その瞬間――ジェットパックの効果時間が切れて、オレはアズキを抱えたまま、シャケの猛攻を素早く避けて高く舞い上がり、ヘリへと戻ってきたのだった。
「オーロラ、くん……?」
シャケのインクにまみれたままのアズキはどこか虚ろな目で、ぽうっとオレの方を見上げている。
「アズキ氏……もう大丈夫ですぞ」
オレはアズキをヘリの座席に座らせて、そっと微笑みかける。
「あ……」
ようやく助けられたことを理解したらしいアズキの瞳に、次第に輝きが戻っていく。
「オーロラくん……!」
今度ははっきりと、焦点の合った目でオレを見つめながら、縋り付くようにオレの名前を呼ぶ。
「どうやら無事のようですな……戻ってきてくれて良かったですぞ、アズキ氏」
オレが優しくそう告げると――アズキの表情は緩み始め――やがて、両方の目からは大粒の涙が溢れ出す。
「っ、うわああぁぁぁーーーーーん!! ……っ、う、怖かったよぉぉぉーーーー!!」
アズキはオレの胸元に顔を埋めて、ぼろぼろと涙を零しながらひたすらに泣き叫び続けていた。けれど、それが安堵故の涙だと、オレには分かる。
「よしよし……もう心配はいりませんぞ。オレがついていますからな」
オレは手袋を外して、アズキの頭を優しく撫でる。それから、アズキを包み込むように、そっと背中に手を回して抱きしめる。
「っ、ぐすっ、あ、ぅ、ああぁぁぁん……」
アズキはオレの腕の中でひたすらに泣きじゃくりながら――そっと、オレに応えるように腰に手を回して、抱きしめ返してくれたのだった。