Chapter4
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窓の外を見渡せば、アズキを口元に咥えて宙に浮かんだままのタツは、どこから現れたのか、ザコシャケからオオモノまで、あらゆるシャケの大群を引き連れてステージの端からこちらをじっと見上げている。今はまだ動き出す気配は無いようだが、もしも彼らが一斉に動き出せば、オレ達は一瞬で全滅に追いやられるどころか――この大群でステージを抜けて、さらに何処かへと移動されてしまっては、バンカラ街など抵抗する間も無く壊滅してしまうであろうことは、容易に想像できた。
まるで今のシャケたちの様子は、「バンカラ街の平和か、アズキの命か、どちらかを選べ」――そう言いたげな様子に感じられる。
「それで、どうするんですかな、クマサン! これ以上アズキに危害を加えさせる訳にはいかない、けれど放っておけば何をし出すか、全く分からない、そんな状況で、一体どうすれば……!」
ひとつ分の席が空いたヘリの中で、オレはただひたすらに、虚空に向かって呼びかける。
「もちろん、クマサン商会としては一人の犠牲者も出すわけにはいかない。アズキも救出して、バンカラ街も守る、それが我々の――」
「だから、そのための具体的な方法を教えろと言っているのですぞ!!」
オレは堪えきれずに拳を握りしめながら叫ぶ。
「オーロラ、珍しくキレてるね……」
「気持ちは分かるよ〜、あれだけずっとアズキのことを想ってたんだからな〜。オレだって、アズキのためにも、オーロラのためにも、早く何とかしたくてたまらないよ〜」
ジャージーもマスクも、不安げに窓の外を見つめている。
「……やはりここは、シャケに気付かれないように1回の遠距離攻撃でタツを怯ませて、アズキを救出したい所なんだが」
ヘリの中のスピーカーから、ぽつりぽつりとクマサンの声が流れ出す。
「……とはいえ、イクラキャノンに使えそうな金イクラは既にタマヒロイに持ち去られてしまったし、キミ達三人のスペシャルも使い切ってしまっている……ここは援軍を呼んで、到着するまでどうにか時間を稼ぐしか――」
「で、でも……」
ジャージーが遮るように何かを言いかける。
「それまでに、あいつらが待ってくれるかどうか……もしかしたら、今すぐにでも街の方に向かって動き出すかもしれないし……」
「じゃあ、打つ手無しってことかよ〜!?」
マスクは悔しげにそう叫びながら、床へと崩れ落ちる。
「そんなの、そんなのって……」
「いや――」
オレはマスクとジャージー、そしてスピーカーを交互に見据えながら告げる。
「スペシャルなら――まだあと一つ、残っていますな」
「えっ……!?」
マスクとジャージーは、目をぱちくりと見開いて顔を上げる。
「あそこに落ちている――アズキのヘルメット」
窓の外には、進軍の準備を整えるが如く、タツの周りに大小様々なシャケ達がわらわらと集まってきている。その少し手前――地面にぽつんと転がったままの、アズキのヘルメットをオレは窓越しに指さす。
「あのヘルメットに、アズキがまだ使っていない、ジェットパックのパウチが付いたままになっていますな。あれを持ち帰って、使うことができれば……」
「なるほど……よく気付いてくれたね、オーロラヘッドホン」
どうしようもないこの状況を固唾を飲んで見守るだけのこの空間を割くように、一筋の希望の光が見えた気がした。そんなオレ達に向かって、クマサンは再びスピーカー越しに告げる。
「……ではこうしよう。キミ達は二人と一人に分かれて――二人が囮となり、シャケの注意を引きつける。その間に残った一人はヘルメットを回収し、シャケに気付かれないようジェットパックを発動してタツの口に当てる。タツを怯ませることができればアズキは落ちてくるはずだから、ジェットパックの効果が切れる前に救出して、効果切れの時の帰還でアズキも一緒に連れて帰って来る」
オレ達は頷きながら、真剣にクマサンの話を聞いていた。
「ジェットパックは一つだけ、それに、もしも途中でシャケに気付かれてしまえば、アズキは助からないかもしれない。チャンスは一度きり――だが、こうする他は無い」
オレ達全員が、緊迫した空気の中で、ごくりと息を飲む。
「大変な仕事だが……キミたちならやり遂げてくれると信じているよ」
「もちろん、やってみせますとも!」
オレは希望を込めた手をぐっと握りしめ、しっかりと返事をしてみせた。
「それじゃあ――位置に着きやすいように、ヘリを移動させるから、二手に分かれてくれたまえ」
クマサンの声が流れ出すと同時に、ホバリングを続けていたヘリはゆっくりと動き出す。
「要するに、誰がジェッパ役をやるか決めろ、ってことですな。アズキとバンカラ街の命運が懸かった、最も責任重大な役――」
そこまで喋って、オレは自分に向けられる二つの痛烈な視線に気が付き、はっと口を止める。
「え? マスク氏、ジャージー氏、なぜオレを見て……?」
「何をとぼけてるんだよ、オーロラ〜。ジェッパの使い手ときたら、お前しかいないだろ〜」
「そうだよ、この中で一番ジェッパの扱いに慣れてるのは、オーロラなんだから」
二人は期待に満ちた眼差しを、オレに向けている。
「え、ええぇぇ〜〜〜〜!?!?」
こうなることが予想できなかった訳ではないが――ただでさえ責任の重い役目を、こんなに期待された上で背負うなんて、オレにとってはあまりにも荷が重すぎるではないか。
「た、確かにバンカラのヒッセンのスペシャルはジェッパだけど……いやでもまだオレだってジェッパの扱いは手探りな訳で、前にナワバリで使った時だって――」
「――お前」
慌てふためくオレを制するように、マスクが静かに口を開く。
「アズキを助けたいんだろ〜? だったら誰よりもその想いが強い、オーロラに託したいと、オレは思うよ〜」
「……!!」
オレははっと気がついて、その場に固まる。
(そうだ、自分で言っておきながら、自分でも自覚できていなかった……アズキを助けたい想い……)
始めて出会ったあの日から変わらず、今も胸の中で強く強く燃え続ける、アズキへの想い。彼女と過ごす日常を、彼女と共に在る時間を、全てを守るために――オレは今、勇気を出して、この仕事を全うしなければいけないと、昨日からずっと、そう決めていたではないか。
「それじゃあ……オレが引き受けますぞ、ジェッパ役!」
オレが決意を固めてそう告げると、二人も力強く頷く。
「じゃあ、オレとジャージーは囮役だな〜。オレ達があのシャケの群れ、全員の気を引けるように頑張るから……オーロラは自分のタイミングで出ていってくれよ〜」
「了解ですぞ!」
まるで今のシャケたちの様子は、「バンカラ街の平和か、アズキの命か、どちらかを選べ」――そう言いたげな様子に感じられる。
「それで、どうするんですかな、クマサン! これ以上アズキに危害を加えさせる訳にはいかない、けれど放っておけば何をし出すか、全く分からない、そんな状況で、一体どうすれば……!」
ひとつ分の席が空いたヘリの中で、オレはただひたすらに、虚空に向かって呼びかける。
「もちろん、クマサン商会としては一人の犠牲者も出すわけにはいかない。アズキも救出して、バンカラ街も守る、それが我々の――」
「だから、そのための具体的な方法を教えろと言っているのですぞ!!」
オレは堪えきれずに拳を握りしめながら叫ぶ。
「オーロラ、珍しくキレてるね……」
「気持ちは分かるよ〜、あれだけずっとアズキのことを想ってたんだからな〜。オレだって、アズキのためにも、オーロラのためにも、早く何とかしたくてたまらないよ〜」
ジャージーもマスクも、不安げに窓の外を見つめている。
「……やはりここは、シャケに気付かれないように1回の遠距離攻撃でタツを怯ませて、アズキを救出したい所なんだが」
ヘリの中のスピーカーから、ぽつりぽつりとクマサンの声が流れ出す。
「……とはいえ、イクラキャノンに使えそうな金イクラは既にタマヒロイに持ち去られてしまったし、キミ達三人のスペシャルも使い切ってしまっている……ここは援軍を呼んで、到着するまでどうにか時間を稼ぐしか――」
「で、でも……」
ジャージーが遮るように何かを言いかける。
「それまでに、あいつらが待ってくれるかどうか……もしかしたら、今すぐにでも街の方に向かって動き出すかもしれないし……」
「じゃあ、打つ手無しってことかよ〜!?」
マスクは悔しげにそう叫びながら、床へと崩れ落ちる。
「そんなの、そんなのって……」
「いや――」
オレはマスクとジャージー、そしてスピーカーを交互に見据えながら告げる。
「スペシャルなら――まだあと一つ、残っていますな」
「えっ……!?」
マスクとジャージーは、目をぱちくりと見開いて顔を上げる。
「あそこに落ちている――アズキのヘルメット」
窓の外には、進軍の準備を整えるが如く、タツの周りに大小様々なシャケ達がわらわらと集まってきている。その少し手前――地面にぽつんと転がったままの、アズキのヘルメットをオレは窓越しに指さす。
「あのヘルメットに、アズキがまだ使っていない、ジェットパックのパウチが付いたままになっていますな。あれを持ち帰って、使うことができれば……」
「なるほど……よく気付いてくれたね、オーロラヘッドホン」
どうしようもないこの状況を固唾を飲んで見守るだけのこの空間を割くように、一筋の希望の光が見えた気がした。そんなオレ達に向かって、クマサンは再びスピーカー越しに告げる。
「……ではこうしよう。キミ達は二人と一人に分かれて――二人が囮となり、シャケの注意を引きつける。その間に残った一人はヘルメットを回収し、シャケに気付かれないようジェットパックを発動してタツの口に当てる。タツを怯ませることができればアズキは落ちてくるはずだから、ジェットパックの効果が切れる前に救出して、効果切れの時の帰還でアズキも一緒に連れて帰って来る」
オレ達は頷きながら、真剣にクマサンの話を聞いていた。
「ジェットパックは一つだけ、それに、もしも途中でシャケに気付かれてしまえば、アズキは助からないかもしれない。チャンスは一度きり――だが、こうする他は無い」
オレ達全員が、緊迫した空気の中で、ごくりと息を飲む。
「大変な仕事だが……キミたちならやり遂げてくれると信じているよ」
「もちろん、やってみせますとも!」
オレは希望を込めた手をぐっと握りしめ、しっかりと返事をしてみせた。
「それじゃあ――位置に着きやすいように、ヘリを移動させるから、二手に分かれてくれたまえ」
クマサンの声が流れ出すと同時に、ホバリングを続けていたヘリはゆっくりと動き出す。
「要するに、誰がジェッパ役をやるか決めろ、ってことですな。アズキとバンカラ街の命運が懸かった、最も責任重大な役――」
そこまで喋って、オレは自分に向けられる二つの痛烈な視線に気が付き、はっと口を止める。
「え? マスク氏、ジャージー氏、なぜオレを見て……?」
「何をとぼけてるんだよ、オーロラ〜。ジェッパの使い手ときたら、お前しかいないだろ〜」
「そうだよ、この中で一番ジェッパの扱いに慣れてるのは、オーロラなんだから」
二人は期待に満ちた眼差しを、オレに向けている。
「え、ええぇぇ〜〜〜〜!?!?」
こうなることが予想できなかった訳ではないが――ただでさえ責任の重い役目を、こんなに期待された上で背負うなんて、オレにとってはあまりにも荷が重すぎるではないか。
「た、確かにバンカラのヒッセンのスペシャルはジェッパだけど……いやでもまだオレだってジェッパの扱いは手探りな訳で、前にナワバリで使った時だって――」
「――お前」
慌てふためくオレを制するように、マスクが静かに口を開く。
「アズキを助けたいんだろ〜? だったら誰よりもその想いが強い、オーロラに託したいと、オレは思うよ〜」
「……!!」
オレははっと気がついて、その場に固まる。
(そうだ、自分で言っておきながら、自分でも自覚できていなかった……アズキを助けたい想い……)
始めて出会ったあの日から変わらず、今も胸の中で強く強く燃え続ける、アズキへの想い。彼女と過ごす日常を、彼女と共に在る時間を、全てを守るために――オレは今、勇気を出して、この仕事を全うしなければいけないと、昨日からずっと、そう決めていたではないか。
「それじゃあ……オレが引き受けますぞ、ジェッパ役!」
オレが決意を固めてそう告げると、二人も力強く頷く。
「じゃあ、オレとジャージーは囮役だな〜。オレ達があのシャケの群れ、全員の気を引けるように頑張るから……オーロラは自分のタイミングで出ていってくれよ〜」
「了解ですぞ!」