Chapter4
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持ち場に戻ったオレたちは、急いで支給されたブキを確認する。
「オレは……おぉ、ヒッセンですな」
「あっ! 私はスパッタリーだよ」
「オレはカーボンローラーだね〜」
「黒ザップだな……って、あれ?」
全員が、何かに気付いたように、互いに顔を見合わせる。
「これって……」
「全員、使い慣れたブキじゃない!?」
アズキの顔がぱっと明るくなって、歓声を上げる。
「いや、喜んでる場合じゃないぞ〜! これ、射程も火力も圧倒的に足りないじゃん〜!」
マスクの言う通り、この編成では機動力はあるものの、オオモノを処理していくための有効打に欠ける編成だ。
「火力はアズキ氏のスパッタリー頼みですな。アズキ氏を全力で援護しつつ、イクラキャノンはしっかりオオモノにも使って行きますぞ!」
「分かった! よーし、最後のひと押し、頑張ろう!」
「おーっ!」
オレ達はタツの現れた上空を見据えながら、それぞれオオモノシャケの元へと駆け出していく。
「テッパンですな。オレが止めるから、ジャージー氏は本体を!」
「オレはコジャケを轢いていくよ〜」
「ヘビだ! 急いで回り込んでっと……」
中央の狭い通路を塞がれてしまわないよう、地上を歩くシャケは急いで足止めし、金イクラへと変える。
「よし、今のうちにぶつけろ〜!」
マスクが足場を整えている間に、オレ達は上空をゆっくりと旋回するタツの口元目がけて、一斉にイクラキャノンを放つ。
「よし、1回目は止められましたな!」
口の中で構えていたボムは大きく弾け飛んで消え、その衝撃で一瞬ではあるが、タツを怯ませることができた。
滑り出しは順調だが、タツの体力にはまだまだ余裕がありそうだ。射程で直接立ち向かっていくことができない以上、オレ達は全力でオオモノシャケを倒して、イクラキャノンを残らずぶつけていくしか無い。
「今度は……出ましたな、カタパッド!」
「あの位置だと遠いな、ナイスダマ使うよ〜」
マスクのナイスダマに「ナイス」を送りつつ、オレは次に現れるオオモノシャケを確認する――バクダンだ。射程で立ち向かえそうにない相手には、イクラキャノンを惜しまずぶつけていく。
タツはその間にも、口の中に構えたボムをどんどん膨らませていき、オレ達の身体をも遥かに上回る大きさとなる。
「これは……間に合いそうにないですかな……」
足元を掬うコジャケを躱しつつ、近くに手頃な金イクラが落ちていないか探し回っていると、やがて巨大化したボムはタツの口から地上に向けて吐き出される。
「あっ――アズキ氏!?」
吐き出されたボムの向こう側に、アズキの姿が見える。あの距離だと、そのままボムの爆発に飲み込まれてしまいかねない。
「アズキ氏! 逃げて!」
だが、その声が届く間も無く、地上に落下したボムは、ナイスダマの如く凄まじい爆発を起こし、視界を遮ってアズキの姿をかき消していく。
「……っ、アズキ氏……!」
インクの爆風が消えていったのを確認して、オレは急いでアズキがいた場所に駆けつける。
「大丈夫ですかな!?」
辺りを見渡して、アズキの姿が無いか必死で探す。すると――
「もう、心配性だなぁ、オーロラくん! 私は無事だよ」
足元のインクから、ぬるりとアズキが姿を現す。
「アズキ! 良かったですぞ」
「スライドで避けたからね。ここは私に任せといて!」
アズキはそう言うなり、迫り来るシャケの群れを軽やかにスライドで躱しながら、回り込んで次々に倒していく。
「よし、時間も残り半分――オレも気を抜かず、頑張らないと、ですな!」
オレはオカシラ戦用に新たに支給されていたスペシャルパウチを切り、カニタンクを発動させる。
「これなら一方的に無力化できますぞ!」
連射砲でタツの口元のボムを一気に叩き潰し、体力を大幅に削っていく。さらにジャージーも、サメライドで周囲のオオモノシャケを一気に蹴散らしていく。
「金イクラも沢山出たし、一斉攻撃のチャンスだね〜」
「ここから一気に削っていきますぞ〜!」
「それじゃあ、私はあっちのハシラを倒してくる!」
遠方に新たに現れたハシラの方へと向かっていくアズキの背中を見送りながら、オレ達は散らばった金イクラを次々にタツにぶつけていく。
「あとボム破壊二回分ぐらいで倒せそうですな」
「やられないように気をつけながら、オオモノを処理していこう」
オレはマスクとジャージーと互いに目配せして、それぞれ散らばってシャケの群れを蹴散らしていく――その時だった。
ふいにオレの視界に、遠くのハシラの上に登っていくアズキの姿が映る。それだけでは無い。彼女を追うように、ハシラの側面を登って静かに足元を狙う――モグラの姿も見える。
「アズキ氏! 危ないっ!」
「うわっ!?」
咄嗟に叫んだオレの声を聞いて、すぐにアズキは迫り来るモグラに気付いたのか、ハシラの頂上からひょいと跳んで、噛み付こうと飛び出してくるモグラの口をすんでのところで躱す。
「セーフ……って、あれ?」
だが、運の悪いことに、ハシラから飛び降りようとしていたアズキの背中のウキワが、紐に結ばれたまま旋回するハシラのコジャケのうちの一匹に引っかかり――彼女はそのまま、コジャケと共に宙吊りになってしまう。
「あ、あれ、なんか引っかかった? 降りられない? 何が起きてるの!?」
アズキは紐でぶら下がったまま、じたばたと暴れているが、外れる気配は無い。
「待ってて、今オレが助けに――」
オレがアズキの元に向けて駆け寄ろうとした、その時だった。
「あっ――ウキワが!!」
紐にぶら下がったまま暴れていたアズキの背中から、するりとウキワが外れ――ウキワはコジャケと共に紐に結びついたままとなり、アズキの身体はウキワを失った状態で落下してしまう。
「――! まずいですぞ、ウキワが取れてしまったら……」
ハシラのコジャケはアズキの背中から離れたウキワを抱えたまま、元の位置に戻って旋回している。
「返して、私のウキワー!」
オレが追いかけ始める間も無く、アズキはそう叫びながら、再びハシラへと登っていく――次の瞬間。
「えっ――」
ウキワを抱えたコジャケは――なんと、アズキのウキワを、遠くへと投げ飛ばしてしまったのだ。
「ああっ!?」
「アズキ氏のウキワが!?」
大きく飛ばされたウキワは、放物線を描きながら、ステージの外、水路へと落下していく。
「待って、ウキワがーー!!」
アズキの必死な叫びも虚しく、ウキワはオレの視界から消えていってしまう。
「ど、どうしよう……ウキワと一緒にイクラキャノンも持ってかれちゃったし……インクも貯められないから何もできない……」
アズキは震えながら、ゆっくりと目の前に迫ってくるタツの顔を視線で追っている。彼女は気付いているのかいないのか、ハシラの下では二体のドスコイが、アズキを仕留めんとばかりにフライパンを構え、ハシラの上へと睨みをきかせている。
「と、とにかくアズキは安全な所へ――」
――その時だった。
「きゃあああああーーーーーーっ!!」
それは――オレが瞬きをする、ほんの一瞬の間の出来事だった。
ハシラの上に立ち尽くすアズキの目の前に、タツの顔が迫ってきたかと思うと――なんと、タツはその口で、アズキの身体を掬いあげたのだ。
「アズキ氏ーーーーっ!」
アズキの身体は、タツの口に咥えられて、真っ逆さまにぶら下がった状態になっていたのだ。
「な、何これーーっ!?」
突然の出来事に、訳も分からずただ目を見開いていると、上空から、小さな何かが落ちてきて、コツン、と音を立てて地面に落ちる。それは――タツに掬い上げられた時の勢いで外れたらしい、アズキのヘルメットだった。
「何〜!?」
「うそ……!」
事態を把握したマスクとジャージーも、青ざめた顔で上空を見つめている。ウキワも無い状態では反撃すらもできない上に、やられてしまえばどうなるか――想像しただけでも身震いがする。
とにかく、一刻も早くアズキを安全な所へ移動させなければいけない。焦る気持ちが、オレを駆り立てる。
「アズキ氏! 今助けに――」
「待って!」
一心不乱で駆け出そうとしたオレの腕を、ジャージーが勢いよく掴む。
「何ですかな!? アズキは今ウキワが無いんですぞ!? 一刻も早く助けないと……」
「あれを見て!」
ジャージーが指さした先を見て、オレは一気に全身の血の気が引いていくのを感じた。
アズキを口に咥えたままのタツは、旋回を止めて、睨みつけるように低空からこちらを見下ろしている。しかし、本当に恐ろしいのはそれでは無い。タツの口からぶら下がったアズキの手前には二体のドスコイが待ち構えていて――今にもアズキに向けてフライパンを振り下ろさんと構えたまま、煽るようにこちらを睨みつけているのだ。
「あいつら、きっと……アズキを人質に取る気だぞ〜」
「下手に手を出したら、アズキちゃんが……」
「……!!」
マスクとジャージーの言葉を聞いて、オレはわなわなと全身の力が抜けていくのを感じ、その場にへたり込む。
「そんな……アズキを助けることはできないのですかな? そんなの、一体どうしろと……!」
オレは今すぐにでも、アズキを取り戻しに行きたい。けれど、今はそれすらも許されない。悔しさのあまり、オレは怒りをぶつけるように叫ぶが、その声もただ虚しく、赤い空に吸い込まれていくだけだ。
「キミたち……焦っていても、事態は好転しない。まずは落ち着いて、冷静に対処法を考えるんだ。一度……ヘリに戻ってきてくれたまえ」
スピーカー越しに、クマサンの声が響く。行き場の無い悔しさとやるせなさを抱えたまま、オレはマスクとジャージーと共に、ヘリへと戻って行った。
「オレは……おぉ、ヒッセンですな」
「あっ! 私はスパッタリーだよ」
「オレはカーボンローラーだね〜」
「黒ザップだな……って、あれ?」
全員が、何かに気付いたように、互いに顔を見合わせる。
「これって……」
「全員、使い慣れたブキじゃない!?」
アズキの顔がぱっと明るくなって、歓声を上げる。
「いや、喜んでる場合じゃないぞ〜! これ、射程も火力も圧倒的に足りないじゃん〜!」
マスクの言う通り、この編成では機動力はあるものの、オオモノを処理していくための有効打に欠ける編成だ。
「火力はアズキ氏のスパッタリー頼みですな。アズキ氏を全力で援護しつつ、イクラキャノンはしっかりオオモノにも使って行きますぞ!」
「分かった! よーし、最後のひと押し、頑張ろう!」
「おーっ!」
オレ達はタツの現れた上空を見据えながら、それぞれオオモノシャケの元へと駆け出していく。
「テッパンですな。オレが止めるから、ジャージー氏は本体を!」
「オレはコジャケを轢いていくよ〜」
「ヘビだ! 急いで回り込んでっと……」
中央の狭い通路を塞がれてしまわないよう、地上を歩くシャケは急いで足止めし、金イクラへと変える。
「よし、今のうちにぶつけろ〜!」
マスクが足場を整えている間に、オレ達は上空をゆっくりと旋回するタツの口元目がけて、一斉にイクラキャノンを放つ。
「よし、1回目は止められましたな!」
口の中で構えていたボムは大きく弾け飛んで消え、その衝撃で一瞬ではあるが、タツを怯ませることができた。
滑り出しは順調だが、タツの体力にはまだまだ余裕がありそうだ。射程で直接立ち向かっていくことができない以上、オレ達は全力でオオモノシャケを倒して、イクラキャノンを残らずぶつけていくしか無い。
「今度は……出ましたな、カタパッド!」
「あの位置だと遠いな、ナイスダマ使うよ〜」
マスクのナイスダマに「ナイス」を送りつつ、オレは次に現れるオオモノシャケを確認する――バクダンだ。射程で立ち向かえそうにない相手には、イクラキャノンを惜しまずぶつけていく。
タツはその間にも、口の中に構えたボムをどんどん膨らませていき、オレ達の身体をも遥かに上回る大きさとなる。
「これは……間に合いそうにないですかな……」
足元を掬うコジャケを躱しつつ、近くに手頃な金イクラが落ちていないか探し回っていると、やがて巨大化したボムはタツの口から地上に向けて吐き出される。
「あっ――アズキ氏!?」
吐き出されたボムの向こう側に、アズキの姿が見える。あの距離だと、そのままボムの爆発に飲み込まれてしまいかねない。
「アズキ氏! 逃げて!」
だが、その声が届く間も無く、地上に落下したボムは、ナイスダマの如く凄まじい爆発を起こし、視界を遮ってアズキの姿をかき消していく。
「……っ、アズキ氏……!」
インクの爆風が消えていったのを確認して、オレは急いでアズキがいた場所に駆けつける。
「大丈夫ですかな!?」
辺りを見渡して、アズキの姿が無いか必死で探す。すると――
「もう、心配性だなぁ、オーロラくん! 私は無事だよ」
足元のインクから、ぬるりとアズキが姿を現す。
「アズキ! 良かったですぞ」
「スライドで避けたからね。ここは私に任せといて!」
アズキはそう言うなり、迫り来るシャケの群れを軽やかにスライドで躱しながら、回り込んで次々に倒していく。
「よし、時間も残り半分――オレも気を抜かず、頑張らないと、ですな!」
オレはオカシラ戦用に新たに支給されていたスペシャルパウチを切り、カニタンクを発動させる。
「これなら一方的に無力化できますぞ!」
連射砲でタツの口元のボムを一気に叩き潰し、体力を大幅に削っていく。さらにジャージーも、サメライドで周囲のオオモノシャケを一気に蹴散らしていく。
「金イクラも沢山出たし、一斉攻撃のチャンスだね〜」
「ここから一気に削っていきますぞ〜!」
「それじゃあ、私はあっちのハシラを倒してくる!」
遠方に新たに現れたハシラの方へと向かっていくアズキの背中を見送りながら、オレ達は散らばった金イクラを次々にタツにぶつけていく。
「あとボム破壊二回分ぐらいで倒せそうですな」
「やられないように気をつけながら、オオモノを処理していこう」
オレはマスクとジャージーと互いに目配せして、それぞれ散らばってシャケの群れを蹴散らしていく――その時だった。
ふいにオレの視界に、遠くのハシラの上に登っていくアズキの姿が映る。それだけでは無い。彼女を追うように、ハシラの側面を登って静かに足元を狙う――モグラの姿も見える。
「アズキ氏! 危ないっ!」
「うわっ!?」
咄嗟に叫んだオレの声を聞いて、すぐにアズキは迫り来るモグラに気付いたのか、ハシラの頂上からひょいと跳んで、噛み付こうと飛び出してくるモグラの口をすんでのところで躱す。
「セーフ……って、あれ?」
だが、運の悪いことに、ハシラから飛び降りようとしていたアズキの背中のウキワが、紐に結ばれたまま旋回するハシラのコジャケのうちの一匹に引っかかり――彼女はそのまま、コジャケと共に宙吊りになってしまう。
「あ、あれ、なんか引っかかった? 降りられない? 何が起きてるの!?」
アズキは紐でぶら下がったまま、じたばたと暴れているが、外れる気配は無い。
「待ってて、今オレが助けに――」
オレがアズキの元に向けて駆け寄ろうとした、その時だった。
「あっ――ウキワが!!」
紐にぶら下がったまま暴れていたアズキの背中から、するりとウキワが外れ――ウキワはコジャケと共に紐に結びついたままとなり、アズキの身体はウキワを失った状態で落下してしまう。
「――! まずいですぞ、ウキワが取れてしまったら……」
ハシラのコジャケはアズキの背中から離れたウキワを抱えたまま、元の位置に戻って旋回している。
「返して、私のウキワー!」
オレが追いかけ始める間も無く、アズキはそう叫びながら、再びハシラへと登っていく――次の瞬間。
「えっ――」
ウキワを抱えたコジャケは――なんと、アズキのウキワを、遠くへと投げ飛ばしてしまったのだ。
「ああっ!?」
「アズキ氏のウキワが!?」
大きく飛ばされたウキワは、放物線を描きながら、ステージの外、水路へと落下していく。
「待って、ウキワがーー!!」
アズキの必死な叫びも虚しく、ウキワはオレの視界から消えていってしまう。
「ど、どうしよう……ウキワと一緒にイクラキャノンも持ってかれちゃったし……インクも貯められないから何もできない……」
アズキは震えながら、ゆっくりと目の前に迫ってくるタツの顔を視線で追っている。彼女は気付いているのかいないのか、ハシラの下では二体のドスコイが、アズキを仕留めんとばかりにフライパンを構え、ハシラの上へと睨みをきかせている。
「と、とにかくアズキは安全な所へ――」
――その時だった。
「きゃあああああーーーーーーっ!!」
それは――オレが瞬きをする、ほんの一瞬の間の出来事だった。
ハシラの上に立ち尽くすアズキの目の前に、タツの顔が迫ってきたかと思うと――なんと、タツはその口で、アズキの身体を掬いあげたのだ。
「アズキ氏ーーーーっ!」
アズキの身体は、タツの口に咥えられて、真っ逆さまにぶら下がった状態になっていたのだ。
「な、何これーーっ!?」
突然の出来事に、訳も分からずただ目を見開いていると、上空から、小さな何かが落ちてきて、コツン、と音を立てて地面に落ちる。それは――タツに掬い上げられた時の勢いで外れたらしい、アズキのヘルメットだった。
「何〜!?」
「うそ……!」
事態を把握したマスクとジャージーも、青ざめた顔で上空を見つめている。ウキワも無い状態では反撃すらもできない上に、やられてしまえばどうなるか――想像しただけでも身震いがする。
とにかく、一刻も早くアズキを安全な所へ移動させなければいけない。焦る気持ちが、オレを駆り立てる。
「アズキ氏! 今助けに――」
「待って!」
一心不乱で駆け出そうとしたオレの腕を、ジャージーが勢いよく掴む。
「何ですかな!? アズキは今ウキワが無いんですぞ!? 一刻も早く助けないと……」
「あれを見て!」
ジャージーが指さした先を見て、オレは一気に全身の血の気が引いていくのを感じた。
アズキを口に咥えたままのタツは、旋回を止めて、睨みつけるように低空からこちらを見下ろしている。しかし、本当に恐ろしいのはそれでは無い。タツの口からぶら下がったアズキの手前には二体のドスコイが待ち構えていて――今にもアズキに向けてフライパンを振り下ろさんと構えたまま、煽るようにこちらを睨みつけているのだ。
「あいつら、きっと……アズキを人質に取る気だぞ〜」
「下手に手を出したら、アズキちゃんが……」
「……!!」
マスクとジャージーの言葉を聞いて、オレはわなわなと全身の力が抜けていくのを感じ、その場にへたり込む。
「そんな……アズキを助けることはできないのですかな? そんなの、一体どうしろと……!」
オレは今すぐにでも、アズキを取り戻しに行きたい。けれど、今はそれすらも許されない。悔しさのあまり、オレは怒りをぶつけるように叫ぶが、その声もただ虚しく、赤い空に吸い込まれていくだけだ。
「キミたち……焦っていても、事態は好転しない。まずは落ち着いて、冷静に対処法を考えるんだ。一度……ヘリに戻ってきてくれたまえ」
スピーカー越しに、クマサンの声が響く。行き場の無い悔しさとやるせなさを抱えたまま、オレはマスクとジャージーと共に、ヘリへと戻って行った。