Chapter3
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広場に着くと、ステージの前の席には既にたくさんの親子連れが座っていた。そんな中、アズキは席の方ではなく、その少し後ろ側の日陰に位置取る。
「席に座らなくても良いのですかな?」
「うーん、前の方の席はやっぱりちびっ子達に譲ってあげたいからね」
「それもそうですな」
オレもアズキの隣、生垣の前に座ってショーが始まるのを待つ。
やがて、ショーが始まる時間になると、ステージの上にはイカキュアのヒロイン達が現れ、子供たちは次々に歓声を上げる。
「おぉ〜! やっぱピンクちゃん可愛い〜! いや、やっぱりレッドちゃんも……はっ、あんまりうるさくしたらダメだよね……」
普段は自分の好きなものを前にすると暴走しがちなアズキだが、今はやけに遠慮がちだ。ショーの最中とはいえ、普段よりも勢いが無いように思える。
ステージの上でヒロイン達と怪物の戦いが繰り広げられる中、観客席の子供たちからは「イエローちゃん頑張れー!」「ブルーちゃん可愛いー!」などと、可愛げな歓声が次々に上がっている。それを俯瞰するように、アズキはただじっと遠くを見ている――その姿は、何かを抑え込んでいるようにも見えた。
――『でも、少しずつ大きくなるにつれて、周りは私のことを笑うようになったんです』
――いつかアズキが言っていたことを思い出す。彼女は言っていた。もっと自分の『好き』を貫きたいと。だけど、彼女はまだ、どこか恥ずかしがっているのではないだろうか。辺りにいるのは、子供たちとその親ばかり。オレやアズキと同年代らしき者は見当たらない。
(アズキ氏には是非とも、遠慮なく楽しんで欲しいですな……何かに夢中になっているアズキ氏のほうが、オレは好きだから……)
何とかアズキに心から楽しんでもらうことはできないだろうか。そう考えているうちに、ステージの上ではヒロイン達が次々に怪物の前に倒れ、絶体絶命の状況となっていた。
『ピンクちゃん! まだ諦めちゃだめだよ! みんなを守るために、戦うことを決めたんでしょう!?』
取り残された妖精が、倒れているヒロインに必死に呼びかけているが、やがてその視線の先は観客席にいる子供たちへと移る。
『お願い! イカキュア達が力を取り戻せるように……みんなの応援の力が、必要なの! どうかみんな、大きな声でエールを送ってあげて!』
その声に呼応するように、観客席のあちこちから子供たちの元気な声が上がる。
「イカキュア〜! 頑張れ〜!」
「負けるなイカキュア〜!」
子供たちの声援が響く中、ステージの上の妖精はさらに観客席に向かって呼びかける。
『お父さんお母さん達も! 一緒に〜!』
どうやら子供たちだけでなく、その親にも呼びかけているようだ。子供たちの元気な声援に混じって、遠慮がちの声からノリノリの大きな声まで、大人たちの声援も響き始める。
そして、アズキは無言でただじっとステージの上を見つめて、倒れているヒロイン達を固唾を呑んで見守っている。
(オレやアズキ氏も加わった方が良いのですかな……でも……)
何と声をかけようか迷っていた、その時だった。
『そこのお兄さんお姉さんも! みんなで一緒に〜!』
妖精のその声に、はっと顔を上げる。その視線は間違いなく、自分たちの方を向いていた。
「あれ……これって、私たちに言ってる?」
アズキは戸惑いながら辺りを見渡している。
「そのようですな」
「ってことは……私たちも……!」
アズキはオレと顔を見合わせる。その次に何を言わんとするのかは、もう口に出さずとも通じ合っていた。
(アズキもオレも、心から楽しめるように……!)
「行きますぞ、アズキ氏……!」
オレは勇気を出して、アズキと同時に声を上げる。
「頑張れイカキュア〜!」
「イカキュア〜!頑張って〜!」
混ざり合う二人の声が、観客席からの声援と共にステージへと向かっていく。
「諦めるな〜!」
「負けないで〜!」
気が付けば、オレもアズキも、熱心に声援を送ることに夢中になっていた。
やがて――ステージの上で倒れていたヒロイン達は、熱い声援に呼応するように、ゆっくりと身体を起こし始める。
『そうだよ……応援してくれるみんなのこと……私は守りたい……だから私は、諦めない!』
決意を込めた瞳を真っ直ぐに敵の怪物に向け、ヒロイン達は再び堂々と立ち上がる。
『みんなの力を、一つに!』
そして、力を合わせた必殺技を放って――彼女らは、見事怪物を倒したのだった。
それと同時に、観客席からは拍手と歓声が沸き起こる。アズキも透き通るような笑顔で、ステージに向けて拍手を送っている。その瞳に、もう遠慮の色は無い。
『ありがとう、みんなの応援のおかげで、私たちはまた強くなれたよ! 応援してくれたみんなも、この街を救ったヒーローだね!』
「おぉ……! 私たちも、ヒーロー……!」
アズキはヒロインのその言葉を気に入ったのか、目を輝かせながら、感触を確かめるように小さくその言葉を繰り返している。
「私たちもヒーローだって、オーロラくん! なんか照れちゃうね」
「そ、そうですな」
オレもヒーローだなんて。まるで自分には似合いそうにない言葉だ。
(アズキ氏は……やっぱり、誰かのヒーローになれるような……そんな人が良いのですかな……)
独り、そう思い悩んでいるうちに、ショーは終わりを告げていたのだった。
「ん〜、楽しかった! やっぱり思いっきり声を出すと楽しさも増してくるね! ありがとうオーロラくん!」
「え、ええ? オレは何もしていませんぞ……?」
「ところで、次はどこに行こっか?」
「そうですな、次は……」
オレがマップを取り出そうとした、その時だった。
(グゥゥ〜〜……)
突然、盛大に鳴り響いた――オレのお腹の音が。
「あ、えっとこれは、アズキ氏、その……」
顔が一気に熱くなる。きょとんとしているアズキの前で、恥ずかしさに慌てながらどう言い訳をしようか必死に考えていた、その時だった。
(グゥゥゥ〜〜……)
今度はオレの発した音ではない。アズキの方を見ると、きょとんとした顔のまま、顔を赤くして固まっていた。
「あ、えっとね、オーロラくん、今のはね……」
僅かな時間、顔を見合わせたまま沈黙が流れる。――そして、その沈黙を破るように、どちらからともなく、なんだか可笑しくなって互いに笑い始めたのだった。
「あはは、もうこんな時間だもんね! お腹空いてるよね! お昼食べに行こっか!」
「そうですな! この近くにレストランがあるらしいですぞ」
オレ達は笑い合いながら、何を食べようかという話題で盛り上がりつつ、並んで歩き始めたのだった。
「席に座らなくても良いのですかな?」
「うーん、前の方の席はやっぱりちびっ子達に譲ってあげたいからね」
「それもそうですな」
オレもアズキの隣、生垣の前に座ってショーが始まるのを待つ。
やがて、ショーが始まる時間になると、ステージの上にはイカキュアのヒロイン達が現れ、子供たちは次々に歓声を上げる。
「おぉ〜! やっぱピンクちゃん可愛い〜! いや、やっぱりレッドちゃんも……はっ、あんまりうるさくしたらダメだよね……」
普段は自分の好きなものを前にすると暴走しがちなアズキだが、今はやけに遠慮がちだ。ショーの最中とはいえ、普段よりも勢いが無いように思える。
ステージの上でヒロイン達と怪物の戦いが繰り広げられる中、観客席の子供たちからは「イエローちゃん頑張れー!」「ブルーちゃん可愛いー!」などと、可愛げな歓声が次々に上がっている。それを俯瞰するように、アズキはただじっと遠くを見ている――その姿は、何かを抑え込んでいるようにも見えた。
――『でも、少しずつ大きくなるにつれて、周りは私のことを笑うようになったんです』
――いつかアズキが言っていたことを思い出す。彼女は言っていた。もっと自分の『好き』を貫きたいと。だけど、彼女はまだ、どこか恥ずかしがっているのではないだろうか。辺りにいるのは、子供たちとその親ばかり。オレやアズキと同年代らしき者は見当たらない。
(アズキ氏には是非とも、遠慮なく楽しんで欲しいですな……何かに夢中になっているアズキ氏のほうが、オレは好きだから……)
何とかアズキに心から楽しんでもらうことはできないだろうか。そう考えているうちに、ステージの上ではヒロイン達が次々に怪物の前に倒れ、絶体絶命の状況となっていた。
『ピンクちゃん! まだ諦めちゃだめだよ! みんなを守るために、戦うことを決めたんでしょう!?』
取り残された妖精が、倒れているヒロインに必死に呼びかけているが、やがてその視線の先は観客席にいる子供たちへと移る。
『お願い! イカキュア達が力を取り戻せるように……みんなの応援の力が、必要なの! どうかみんな、大きな声でエールを送ってあげて!』
その声に呼応するように、観客席のあちこちから子供たちの元気な声が上がる。
「イカキュア〜! 頑張れ〜!」
「負けるなイカキュア〜!」
子供たちの声援が響く中、ステージの上の妖精はさらに観客席に向かって呼びかける。
『お父さんお母さん達も! 一緒に〜!』
どうやら子供たちだけでなく、その親にも呼びかけているようだ。子供たちの元気な声援に混じって、遠慮がちの声からノリノリの大きな声まで、大人たちの声援も響き始める。
そして、アズキは無言でただじっとステージの上を見つめて、倒れているヒロイン達を固唾を呑んで見守っている。
(オレやアズキ氏も加わった方が良いのですかな……でも……)
何と声をかけようか迷っていた、その時だった。
『そこのお兄さんお姉さんも! みんなで一緒に〜!』
妖精のその声に、はっと顔を上げる。その視線は間違いなく、自分たちの方を向いていた。
「あれ……これって、私たちに言ってる?」
アズキは戸惑いながら辺りを見渡している。
「そのようですな」
「ってことは……私たちも……!」
アズキはオレと顔を見合わせる。その次に何を言わんとするのかは、もう口に出さずとも通じ合っていた。
(アズキもオレも、心から楽しめるように……!)
「行きますぞ、アズキ氏……!」
オレは勇気を出して、アズキと同時に声を上げる。
「頑張れイカキュア〜!」
「イカキュア〜!頑張って〜!」
混ざり合う二人の声が、観客席からの声援と共にステージへと向かっていく。
「諦めるな〜!」
「負けないで〜!」
気が付けば、オレもアズキも、熱心に声援を送ることに夢中になっていた。
やがて――ステージの上で倒れていたヒロイン達は、熱い声援に呼応するように、ゆっくりと身体を起こし始める。
『そうだよ……応援してくれるみんなのこと……私は守りたい……だから私は、諦めない!』
決意を込めた瞳を真っ直ぐに敵の怪物に向け、ヒロイン達は再び堂々と立ち上がる。
『みんなの力を、一つに!』
そして、力を合わせた必殺技を放って――彼女らは、見事怪物を倒したのだった。
それと同時に、観客席からは拍手と歓声が沸き起こる。アズキも透き通るような笑顔で、ステージに向けて拍手を送っている。その瞳に、もう遠慮の色は無い。
『ありがとう、みんなの応援のおかげで、私たちはまた強くなれたよ! 応援してくれたみんなも、この街を救ったヒーローだね!』
「おぉ……! 私たちも、ヒーロー……!」
アズキはヒロインのその言葉を気に入ったのか、目を輝かせながら、感触を確かめるように小さくその言葉を繰り返している。
「私たちもヒーローだって、オーロラくん! なんか照れちゃうね」
「そ、そうですな」
オレもヒーローだなんて。まるで自分には似合いそうにない言葉だ。
(アズキ氏は……やっぱり、誰かのヒーローになれるような……そんな人が良いのですかな……)
独り、そう思い悩んでいるうちに、ショーは終わりを告げていたのだった。
「ん〜、楽しかった! やっぱり思いっきり声を出すと楽しさも増してくるね! ありがとうオーロラくん!」
「え、ええ? オレは何もしていませんぞ……?」
「ところで、次はどこに行こっか?」
「そうですな、次は……」
オレがマップを取り出そうとした、その時だった。
(グゥゥ〜〜……)
突然、盛大に鳴り響いた――オレのお腹の音が。
「あ、えっとこれは、アズキ氏、その……」
顔が一気に熱くなる。きょとんとしているアズキの前で、恥ずかしさに慌てながらどう言い訳をしようか必死に考えていた、その時だった。
(グゥゥゥ〜〜……)
今度はオレの発した音ではない。アズキの方を見ると、きょとんとした顔のまま、顔を赤くして固まっていた。
「あ、えっとね、オーロラくん、今のはね……」
僅かな時間、顔を見合わせたまま沈黙が流れる。――そして、その沈黙を破るように、どちらからともなく、なんだか可笑しくなって互いに笑い始めたのだった。
「あはは、もうこんな時間だもんね! お腹空いてるよね! お昼食べに行こっか!」
「そうですな! この近くにレストランがあるらしいですぞ」
オレ達は笑い合いながら、何を食べようかという話題で盛り上がりつつ、並んで歩き始めたのだった。