短編
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俺は天童さんの考えていることが分からない。
元々理解できたことなんてほとんどなかったが…それでも、見ず知らずの一般人、それも自殺間際の女を拾ってきて組織に入れてしまうなんて、俺には多分一生理解ができない。
そう感じたのは数ヶ月前の話。
目の前のベッドに横たわる女は麻酔が切れてきたのか、痛みに唸っている。意識はない。
今日の争闘で肩を撃たれたようで、瀬見さんが彼女を背負って医務室に駆け込んできた。数時間前に俺が手当てをしたばかりで、室内にぼたぼたと落ちていた血をざっと拭き取り処置の後片付けをしていると、がらりと扉が開く音がする。
「ヤッホーけんじろ〜!ソイツの容態どう?」
気だるそうにベッドを指しながら部屋に入ってきた猫背の彼は、この女を拾ってきたトラブルメイカーだ。
「まぁ、生きてますよ」
「なにソレ、そんなの見たらわかるんですケド〜。まぁ撃たれたの肩だしね」
彼はケラケラと軽く笑ってから痛みに顔を歪める彼女を見て、にんまりと笑みを浮かべて口を開く。
「こいつ銃に撃たれたの初めてだったみたいでさ〜、『死ぬ!』つって泣いてたんだよね」
そう言う彼の表情は、お気に入りのおもちゃを前にした子どものようだ。仮にも仲間が撃たれたことをどうしてこんなにも楽しそうに話すのか、俺には分からない。
「…いやまぁ、そりゃ銃に撃たれる人なんてそんなにいないでしょ。ましてやこの日本で、ずっと表社会にいたなら当たり前じゃないですか?」
「けんじろ〜可愛くないねぇ」
「はあ、どうも」
茶化すように言う天童さんを横目に、彼女へ視線を戻す。額には汗が浮かんでおり、顔は真っ赤だ。おそらく熱も出ているのだろう。
…銃で撃たれたら痛いに決まってる。そんなの俺だって痛い。天童さんも痛いはず…いや、それはちょっと分からないが。
天童さんはベッドの際に座り、汗まみれの彼女の髪の毛をくるくると指先で弄ぶ。
「あんま前に飛び出るなって言ってんのにさ」
気にしなければ気づかない、そんなため息をつきながら彼は続ける。
「身体能力高いわけでもないし、運動できるわけでもないし、かと言って頭が良いわけでもないのにサ。てかなんなら頭悪いし。ホント馬鹿だわ」〜」
そんな風に口先では小馬鹿にしながら、彼女を眺める目には少しだけ。ほんの少しだけだ、優しさが見え隠れしていたような気がした。
「…どうしてこの女を拾ってきたんですか」
この女が、あの天童さんを惹きつける理由が分からない。彼女の毛先を弄ぶ彼をみていると、ずっと気になっていたことが口をついて出た。
「え〜気になる?」
「…まぁ。」
「ウ〜ン、なんだろ、あんまし自分でもよくわかってないんだよね…」
天童さんはしばらく唸ってから、ピンと来た顔で続ける。
「面白そうだったから?」
「は?」
「こいつを連れて帰ってきたら面白そうだったから、っていうのは理由になる?」
「え、さぁ…?」
そんなの天童さんにしか分からないだろう、というのは胸に留めておいた。
「今も面白いけどさ、こいつがいたらも〜っと面白くなりそうだな〜って」
ケラケラと笑いながら喋る彼は心底楽しそうだ。ひとしきり笑った後、ふと彼女の髪の毛に触れる手を止める。
「…まァ、退屈な人間になったら、殺すけど」
そう言った彼の目は本気だ。
急に体感温度が下がったような、そんな錯覚を覚える。
「死にたいなんてさぁ、つまらないことを言う人間でいてほしくないんだよねぇ」
「…自殺未遂のところを拐ってきてどの口が」
「まぁね〜!」
軽薄な笑い方をする彼のことを、俺はどれだけ関わってもきっと理解できない。
「生きてンなら良いや。意識戻ったら呼んで〜」
そう言ってひらひらと手を振り部屋から出ていく。
目の前で苦しむ彼女の額の濡れタオルを変えながら、やはり俺は、これからも彼のことがわからないのだと思った。
元々理解できたことなんてほとんどなかったが…それでも、見ず知らずの一般人、それも自殺間際の女を拾ってきて組織に入れてしまうなんて、俺には多分一生理解ができない。
そう感じたのは数ヶ月前の話。
目の前のベッドに横たわる女は麻酔が切れてきたのか、痛みに唸っている。意識はない。
今日の争闘で肩を撃たれたようで、瀬見さんが彼女を背負って医務室に駆け込んできた。数時間前に俺が手当てをしたばかりで、室内にぼたぼたと落ちていた血をざっと拭き取り処置の後片付けをしていると、がらりと扉が開く音がする。
「ヤッホーけんじろ〜!ソイツの容態どう?」
気だるそうにベッドを指しながら部屋に入ってきた猫背の彼は、この女を拾ってきたトラブルメイカーだ。
「まぁ、生きてますよ」
「なにソレ、そんなの見たらわかるんですケド〜。まぁ撃たれたの肩だしね」
彼はケラケラと軽く笑ってから痛みに顔を歪める彼女を見て、にんまりと笑みを浮かべて口を開く。
「こいつ銃に撃たれたの初めてだったみたいでさ〜、『死ぬ!』つって泣いてたんだよね」
そう言う彼の表情は、お気に入りのおもちゃを前にした子どものようだ。仮にも仲間が撃たれたことをどうしてこんなにも楽しそうに話すのか、俺には分からない。
「…いやまぁ、そりゃ銃に撃たれる人なんてそんなにいないでしょ。ましてやこの日本で、ずっと表社会にいたなら当たり前じゃないですか?」
「けんじろ〜可愛くないねぇ」
「はあ、どうも」
茶化すように言う天童さんを横目に、彼女へ視線を戻す。額には汗が浮かんでおり、顔は真っ赤だ。おそらく熱も出ているのだろう。
…銃で撃たれたら痛いに決まってる。そんなの俺だって痛い。天童さんも痛いはず…いや、それはちょっと分からないが。
天童さんはベッドの際に座り、汗まみれの彼女の髪の毛をくるくると指先で弄ぶ。
「あんま前に飛び出るなって言ってんのにさ」
気にしなければ気づかない、そんなため息をつきながら彼は続ける。
「身体能力高いわけでもないし、運動できるわけでもないし、かと言って頭が良いわけでもないのにサ。てかなんなら頭悪いし。ホント馬鹿だわ」〜」
そんな風に口先では小馬鹿にしながら、彼女を眺める目には少しだけ。ほんの少しだけだ、優しさが見え隠れしていたような気がした。
「…どうしてこの女を拾ってきたんですか」
この女が、あの天童さんを惹きつける理由が分からない。彼女の毛先を弄ぶ彼をみていると、ずっと気になっていたことが口をついて出た。
「え〜気になる?」
「…まぁ。」
「ウ〜ン、なんだろ、あんまし自分でもよくわかってないんだよね…」
天童さんはしばらく唸ってから、ピンと来た顔で続ける。
「面白そうだったから?」
「は?」
「こいつを連れて帰ってきたら面白そうだったから、っていうのは理由になる?」
「え、さぁ…?」
そんなの天童さんにしか分からないだろう、というのは胸に留めておいた。
「今も面白いけどさ、こいつがいたらも〜っと面白くなりそうだな〜って」
ケラケラと笑いながら喋る彼は心底楽しそうだ。ひとしきり笑った後、ふと彼女の髪の毛に触れる手を止める。
「…まァ、退屈な人間になったら、殺すけど」
そう言った彼の目は本気だ。
急に体感温度が下がったような、そんな錯覚を覚える。
「死にたいなんてさぁ、つまらないことを言う人間でいてほしくないんだよねぇ」
「…自殺未遂のところを拐ってきてどの口が」
「まぁね〜!」
軽薄な笑い方をする彼のことを、俺はどれだけ関わってもきっと理解できない。
「生きてンなら良いや。意識戻ったら呼んで〜」
そう言ってひらひらと手を振り部屋から出ていく。
目の前で苦しむ彼女の額の濡れタオルを変えながら、やはり俺は、これからも彼のことがわからないのだと思った。
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