第2訓
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玄関から銀時と家賃の回収に来た家主のお登勢が揉めているのが聞こえた。
もう見なれすぎた光景に、今更呆れもしないし、止めもしない。
時計を見ればもうすぐ新八が出勤して来る時間だ。
結衣は台所に向かうと、やかんに水を入れコンロのひねりを軽く押し込んで右に回す。
そして戸棚から3つの湯のみを取り出し、お盆の上に丁寧に並べる。
「待てコラァァ!!家賃払わんかァァ!!」
ドゴォン!!
ガラガラガラ!!
「ぎゃああああ!!」
悲鳴と、何かが転げ落ちるような音が響く。
結衣は驚いて玄関の方を覗いた。
少し経つと気まずそうな顔をした銀時が戻ってきた。
「…あのー、結衣さん…」
「ん?」
「…今うちにお金って…ある…?」
返事の代わりに、シューッという音とともに、やかんから勢いよく白い湯気が吹き上がった。
少しだけ冷めてしまったお茶を、湯のみに丁寧に注ぐ。
「新八くんどうぞ」
「結衣さんありがとうございます」
「どういたしまして」
一方、銀時の湯のみは、ゴン、と少し強めに置く。
やかんを勢いよく傾けると、お茶が縁ぎりぎりまで揺れた。
「ん」
「俺だけ扱い雑じゃね?銀さんに対してなんか冷たくね?」
「そうですか?」
「自分のせいでしょ、銀さん」
一週間前。
なんとか用意した今月の家賃。
「ついでだから持ってっといてやるよ。」
そう言って茶色い封筒をひょいと持っていった銀時は、
そのままパチンコへ直行。
家賃は見事に玉へと姿を変えた。
そして今日まで黙っていた。
結果。
お登勢に生活費まで回収された。
「いいよ、新八くん。このモジャを信用した私が馬鹿だった」
冷たい目で銀時を見下ろすと、家計簿を開く。
赤ペンで出費の欄に先程回収された金額を書いた。
財布の残金は1273円。…どうしよう。
「今月の僕のお給料ちゃんと出るんでしょーね、頼みすよ。僕んちの家計だってキツいんだから」
「…」
払えるわけがない。
次の依頼まで生活費は1273円。
しかも依頼の予定は、ない。
「腎臓ってよォ、二つもあんのなんか邪魔じゃない?」
「確かに銀時の腎臓は2つともいらないと思う。なんなら心臓もいらない」
「結衣さんんん??それは遠回しに俺に死ねって言ってるよね!!??死ねってことだよね???」
「売らんぞォォ!!何恐ろしー事考えてんだ!!」
「カリカリすんなや新八。金はなァ、がっつくやつの所には入ってこねーもんさ」
銀時は机に頬杖をつき、気だるそうにテレビの電源を入れた。
「ウチ、姉上が今度はスナックで働き始めて、寝る間も惜しんで頑張ってるんスよ…」
「お妙ちゃん働くところ見つかったんだ」
「はい、こないだから働き始めてて」
「若いのにえらいね」
テレビは砂嵐のまま、うんともすんとも言わない。
「アリ?映りワリーな」
銀時は眉をひそめると、テレビの横をガン、ガン、と二度叩いた。
「ちょっと!きーてんの?」
「オー、はいった…」
パッ、と画面が映る。
『現在、謎の
「オイオイまたターミナルから
「
「とりあえず今日のご飯は冷蔵庫の中でなにか作らなきゃだね」
ピンポーン
「あんのババァ!!」
インターホンが押されたと同時に銀時は玄関に向かって駆けて行く。
少し静かになった居間。
「…新八くん。いつでも気にせずに辞めてもいいからね」
「…はい」
万事屋一行は黒塗りの高級車に乗せられ、どこかへ向かっていた。
インターホンを押したのはお登勢ではくら依頼に来た長谷川という男だった。
「入国管理局の長谷川泰三っていったら、天人の出国の一切をとり締まってる幕府の重鎮スよ。そんなのが一体何の用でしょう?」
「何の用ですかおじさん」
「万事屋つったっけ?金さえ積めばなんでもやってくれる奴がいるってきいてさ、ちょっと仕事頼みたくてね」
「仕事だァ?てめーら仕事なんてしてたのか、街見てみろ。天人どもが好き勝手やってるぜ」
長谷川はこりゃ手厳しいねと火をつけたタバコをふかす。
江戸が進歩したのは天人たちのおかげだ。
そして彼らは地球を気に入っているから無下には扱えない。
幕府の中枢にも天人は根を張っている。
今は彼らと上手く共生するべきだと。
「共生ねェ…んで、俺にどうしろっての」
「俺達もあまり派手に動けん仕事でなァ。公にすると幕府の信用が落ちかねん。実はな、今幕府は外交上の問題で、国を左右する程の危機をむかえてるんだ。央国星の皇子が今地球に滞在してるんだが、その皇子がちょっと問題抱えていてな…それが…」
長谷川が視線を向けた先には、一人の天人がいた。
おでこの少し上あたりから1本の触角を生やし、どこか間の抜けた丸い顔。豪華な装束に身を包み、一匹の子猫を「よーしよーし」と愛おしそうに撫でている。
「余のペットがの〜いなくなってしまったのじゃ。探し出してくれんかのォ」
万事屋三人は顔を見合わせると、何も言わず同時に踵を返した。
「オイぃぃぃ!!ちょっと待てェェェ!!君ら万事屋だろ?なんでもやる万事屋だろ?いや、わかるよわかるけどやって!頼むからやって!」
「うるせーな、グラサン叩き割るぞうすらハゲ」
「ああ、ハゲでいい!!ハゲでいいからやってくれ」
慌てた長谷川が銀時の肩を掴み、無理やり引き止める。
そのまま肩へ腕を回し、周囲に聞こえないよう顔を寄せる。
「ヤバイんだよ、あそこの国からは色々金とか
も借りてるから
「しらねーよ。そっちの問題だろ。ペットくらいで滅ぶ国なら滅んだ方がいいわ」
「ペットくらいとはなんじゃ、ペスは余の家族も同然ぞ」
「だったらテメーで探してください。バカ皇子」
咄嗟に長谷川が銀時の口を塞ぐ。
「オイぃぃ!!バカだけど皇子だから!!皇子なの!!」
「アンタまる聞こえですよ。大体そんな問題アナタ達だけで解決できるでしょ」
「いや、それがダメなんだ。だってペットっつっても…」
ズズン
突然、地面を揺らす轟音が響く。
すぐ側で「HOTEL桜」と書かれた看板ごと、建物が押し潰されていく。
「おぉーペスじゃ!!ペスが余の元に帰ってきてくれたぞよ!!誰か捕まえてたもれ!!」
瓦礫と化した建物を踏み潰しながら現れたのは、巨大なタコにも似た
