第10訓
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「おーい、兄ちゃん危ないよ」
屋根の補修作業中だった銀時は、積み上げられた木材が今にも崩れ落ちそうなのを見て、下を歩く洋装の男へ声をかけた。
「うぉわァアアアァ!!」
男は咄嗟に後ろへ飛び退く。
次の瞬間、木材が轟音を立てて地面へと落下した。
「あっ…危ねーだろーがァァ!!」
「だから危ねーっつったろ」
「もっとテンションあげて言えや!わかるか!!」
「うるせーな。他人のテンションのダメ出しまでされる覚えはねーよ」
梯子から降りた銀時は、「集英建設」と書かれたヘルメットを軽く持ち上げた。
いつもの着流しではなく、作業着姿で屋根の補修作業に追われている。
「あ"あ"あ"あ"あ"。てめーは…池田屋の時の…そぉか…そういやてめーも、銀髪だったな」
「…えーと、君、誰?」
「銀時ー?どしたの」
屋根の上から結衣がひょっこりと顔を出した。
結衣も銀時と同じ作業着姿で、ヘルメットを被っている。
「結衣ー、こいつら誰か知ってっか?」
「あれ、団子屋のお姉さんじゃねぇですかィ」
「団子屋ァ?」
「え、あー…確か…総悟くん」
「てめーら知り合いだったのか」
「あー…まぁ、ちょっと見回り中に話したことがある程度でさァ」
「へー?見回り中にねぇ」
土方は目を細めて、沖田を見た。
「ねぇ、お姉さん」
「あ、うん。そうだった気がする。でもこっちの方はわかんない」
「あ…もしかして大串くんか?アララすっかり立派になっちゃって。なに?まだあの金魚デカくなってんの?」
「オーイ!!銀さん結衣ちゃん早くこっち頼むって」
「はーい」
「はいよ。じゃ、大串くん。俺ら仕事だから」
そう言うと銀時は沖田と土方を置いて、さっさと梯子を上り、持ち場へ戻った。
二人の仕事ぶりを近くで見ていた棟梁が、呆れたように眉をひそめた。
「バカヤロー。銀さん、結衣ちゃんみたいに金槌はもっと魂こめてうつんだよ」
「おめーの頭にだったら、魂込めてうちこんでやるよ。ハゲ」
「コノヤロー、人材不足じゃなかったらてめーなんて使わねーのによォ。そこ、ちゃんとやっとけよ。結衣ちゃんにコツでも教わんな」
棟梁はそう言い残すと、別の持ち場へ足早に向かっていった。
「オメーもなハゲ」
銀時は棟梁の背中へ悪態をついてから、隣で黙々と金槌を振るう結衣へ目を向けた。
「……つか、結衣ホントにうめーな」
「そうかな?このくらい誰でも出来るよ」
「誰でもって手つきじゃねーだろ」
銀時は結衣の手元を眺める。
迷いなく真っ直ぐ打ち込まれる釘。
傷んだ木材を見極める手つきも、妙に慣れていた。
「……相変わらず、物は最後まで使い倒す主義か」
「使えるのに捨てるの、もったいないでしょ」
「いや、それは知ってるけどよ……」
銀時は打ち込まれた釘を見て苦笑する。
「大工までできるとは聞いてねぇ」
「できるってほどじゃないよ」
結衣はそう言いながら、また金槌を振るう。
本人にしてみれば、本当に大したことではない。
壊れたものがあれば直す。
使えるものなら使う。
ただそれだけ。
何か特別な技能を身につけようと思って覚えたわけでもない。
その時必要だったからやった。
昔から、そういうことが多かった。
銀時はそんな結衣を横目で見ながら、ふっと息を吐く。
「……お前、昔からそうだったよな」
「何が?」
「いや」
銀時はそれ以上言わず、再び自分の作業へ戻った。
その時。
梯子を上る足音が屋根に近付いてくる。
振り返ると、土方が腰に差した刀とは別に、もう一本の刀を片手に屋根へ上がってきた。
土方は黙って銀時と結衣の手元を一瞥すると、鼻で笑う。
「爆弾処理の次は屋根の修理か?節操のねェ野郎だ。一体何がしてーんだ」
「爆弾!?あ…お前あん時の」
銀時の脳裏に、先日桂と再会した日の出来事がよぎる。
突如不意に斬りかかってきた男。
目の前の男と、その姿がようやく重なった。
「やっと思い出したか。あれ以来どうにもお前のことがひっかかってた。あんな無茶する奴ァ、
「近藤さん?」
「女とり合った仲なんだろ。そんなにイイ女なのか。俺にも紹介してくれよ」
土方は手にしていた刀を銀時へ放る。
眉をひそめながらも、銀時はそれを危なげなく受け取った。
「お前あのゴリラの知り合いかよ…にしてもなんの真似だこりゃ…」
返事の代わりに、土方は一気に間合いを詰める。
抜き身の刀が銀時へ振り下ろされた。
銀時は咄嗟に受け止めたものの、バランスを崩し、そのまま屋根の上を転がる。
「ぬをっ!!あだっ!!あだっ!!あだっ!!何しやがんだ、てめェ」
「どいてろ女、邪魔だ」
銀時を見据えたままの土方が短く言い放つ。
結衣は何も言わず、小さく一歩後ろへ下がった。
別に気にした様子もない。
「おい」
銀時の低い声に、結衣の足が止まる。
「返事良すぎんだよ」
「え?」
きょとんと結衣が振り返る。
銀時はゆっくりと立ち上がり、土方を睨んだ。
「あとお前、人ん家の奴に邪魔とか、簡単に言ってんじゃねェ」
土方は鼻で笑う。
「事実だろ。お前との斬り合いに女は邪魔だ」
「斬り合いだァ?てめーなんのつもりだ」
「ゴリラだろーがなァ、