第5訓
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「俺が以前から買いだめていた大量のチョコが姿を消した。食べた奴は正直に手を挙げろ。今なら3/4殺しで許してやる」
銀時は疑いの眼差しで、3人を見回す。
「3/4ってほとんど死んでんじゃないスか。っていうかアンタ、いい加減にしないとホント糖尿になりますよ」
呆れた顔で新八はお茶を啜る。
「またも狙われた大使館。連続爆破テロ凶行続く…」
新聞の一部の記事を読み上げる神楽。
「物騒な世の中アルな〜。私恐いヨ、パピー、マミー」
そんな神楽の鼻からは、鼻血がだらだらと顎まで垂れている。
銀時はそんな神楽の頬を掴む。
「恐いのはオメーだよ。幸せそーに鼻血たらしやがって。うまかったか、俺のチョコは?」
「チョコ食べて鼻血なんてそんなベタな〜」
「とぼけんなァァ!!鼻血から糖分の匂いがプンプンすんぞ!!」
「バカ言うな。ちょっと鼻クソ深追いしただけヨ」
「年頃の娘がそんなにふか深追いするわけねーだろ。定年間際の刑事か、お前は!!」
「喩えがわかんねーよ!!っていうかおちつけ!!」
「そうだよ銀時、落ちついて。神楽ちゃんも女の子なんだし鼻血垂らしっぱなしにしたらだめだよ」
はい。と神楽にティッシュを手渡す。
そこでふと。銀時の視線が止まる。
「結衣」
「ん?」
「口」
口の端を指さされ、ティッシュで拭う。
付着した茶色い汚れ。
結衣は少し俯き、見つめる。
「……これは……証拠だね」
「認めるの早ェよ!!」
「結衣!!そんなんじゃ私達が一緒に銀ちゃんのチョコ貪ったことが全部バレるネ!」
「……神楽ちゃん。全部言ってる」
「あ」
「あ、じゃねぇぇぇ!!お前らァァァァ!!」
「銀さんおちついてください!ほんとに!!」
新八が今にも2人に飛びかかりそうな銀時をなんとか抑えていた時だった。
ドガン
万事屋が小さく揺れた。
「なんだなんだオイ」
外へ出てみると、一階のスナックには、突っ込んだばかりのバイクと、その脇に倒れ込む運転手の姿があった。
「事故か…」
飛び出してきたお登勢が運転手の胸ぐらを掴み怒鳴る。
「くらあああああ!!ワレェェェェ!!人の店に何してくれとんじゃアア!!死ぬ覚悟できてんだろーな!!」
「ス…スンマセン。昨日からあんまり寝てなかったもんで」
顔色の悪い運転手は、小さく両手を上げて降参の意思を示す。
が、お登勢は容赦なく拳を振り上げた。
「よっしゃ!!今、永遠に眠らしたらァァ!!」
「お登勢さん怪我人相手にそんな!!」
新八が駆け寄り、運転手の傍らにしゃがむ。
「…こりゃひどいや。神楽ちゃん救急車呼んで」
「救急車ャャァアア!!」
その場で空に向かって大声で叫ぶ神楽。
「誰がそんな原始的な呼び方しろっつったよ」
結衣はすぐに倒れたバイクの周囲へしゃがみ込み、散らばったハガキや手紙を一枚ずつ拾い集めた。
「飛脚の人なんだ」
「おーおー、届け者エライことになってんぞ」
「こ…これ…これを俺の代わりに届けてください……お願い」
そう言って差し出してきたのは小包。
「なんか大事な届け物らしくて、届け損なったら俺…クビになっちゃうかも。お願いしまっ」
「おいっ!!」
言い終える前に、運転手は意識を失った。
万事屋の四人は無言で顔を見合わせ、やがて小包へ目を向けた。
記載された住所を頼りに辿り着いた先は、ひときわ大きな洋風の建物だった。
「ここであってんだよな」
「うん」
「大使館…これ戌亥星の大使館ですよ」
「へぇ、これが」
「戌亥族っていったら地球に最初に来た天人ですよね」
「新八くん詳しいね」
「ああ、江戸城に大砲ブチ込んで無理矢理開国しちまったおっかねー奴らだよ。嫌なトコ来ちゃったなオイ」
「オイ」
四人の動きが止まる。
ゆっくり振り返る。
そこには。
銀時よりも大きい、犬のような風貌の天人が立っていた。
「こんな所で何やってんだてめーら。食われてーのか、ああ?」
「いや…僕ら届け物頼まれただけで」
「オラ神楽、早く渡…」
「チッチッチッおいでワンちゃん。酢昆布あげるヨ」
膝を揃えてしゃがみ、犬を呼ぶように手を差し出した。
銀時は無言で神楽の後頭部をスパンと叩いた。
「神楽ちゃん、酢昆布はちょっと酸っぱいと思うよ」
結衣が真面目な顔で口を挟み、銀時のツッコミが即座に飛ぶ。
「そうじゃねーだろ」
「え?」
「犬だからって餌付けしようとしてんのが問題なんだよ!」
結衣は警備員を見上げる。
耳。
鼻。
尻尾。
もう一度見る。
「……でも、犬じゃないの?」
「犬じゃねぇぇぇ!!」
警備員が初めて叫んだ。
「我々は誇り高き戌亥族だ!」
「あ、喋ったアル」
神楽が少し驚く。
「最初から喋ってたわ!!」
新八が叫ぶ。
「犬語じゃなかったネ。」
「日本語だったよ!」
警備員は深く息を吸い込む。
「……貴様ら、本当に届け物か?そもそも届け物が来るなんて話きいてねーな。最近は、ただでさえ、爆弾テロ警戒して厳戒態勢なんだ。帰れ」
「ドッグフードかもしんねーぞ。もらっとけって」
銀時は神楽から小包をひったくると、そのまま警備員へ差し出した。
「そんなもん食うか」
警備員は眉ひとつ動かさず、小包を払いのける。
パシッ。
小包は宙を舞い、全員の視線もつられて上を向く。
「あ」
門を越えた小包は、大使館の敷地へぽとりと落ちた。
ドガン
爆発した。
地面が揺れ、門が吹き飛び、石塀が粉々に砕け散る。
熱を帯びた爆風が四人を容赦なく飲み込んだ。髪が逆立ち、着物がばたばたと音を立ててはためく。
「…なんかよくわかんねーけど、するべきことはよくわかるよ」
ポツリと呟いた銀時は、勢いよく振り返る。
「逃げろォォ!!」
それを合図に4人は掛け出した。
が、
「待てェェテロリストォォ!!」