第4訓
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「お待たせしました。団子食べ比べセットです」
「おー、きたきた。」
湯気の立つお茶と団子を盆に乗せ、結衣は席へ運ぶ。
いつもの動きやすい服装ではなく、今日はきちんとした着物姿。
団子屋の店員として、一日だけ手伝いに来ていた。
「お姉さん、見ねー顔だねィ。」
「今日だけの単発バイトなんです」
「へぇ」
青年は串から団子をひとつ外して口へ放る。
黒を基調とした洋装に、傍らには刀とバズーカ。
色素の薄い髪と眠たげな目が妙に印象に残る。
「あなたは、お侍さん?」
「まぁ、そんなとこでさァ。」
「休憩中なんですね。」
「まぁねィ。」
青年は湯呑みに口をつけながら、何気なく尋ねる。
「お姉さんは、なんで単発でバイトなんかしてるんですかィ。」
「あー…」
結衣は少し考える。
どう説明したものか。
万事屋の家計事情を初対面の人間に話すのもどうかと思ったが、隠すほどのことでもない。
それに今日は単発バイト。目の前の男と会うことももうないだろう。
「家計が火の車……って言いたいところだけど、もう燃やす薪もないくらいかな」
「……そりゃまた、随分な状態ですねィ」
「うん」
あっさり頷く。
「それで、お姉さんが働いてるんですかィ」
「そうそう。家賃とか食費とか、色々あるからね」
青年は呆れたように肩をすくめる。
「女に働かせるとは甲斐性のねェ男だ。そんな奴、とっとと捨てちまえばいいじゃねェですかィ」
「うん、よく言われる」
「否定しねェんですかィ」
「だって実際そういうところあるし」
あまりにも迷いのない返答に、青年が一瞬だけ黙る。
「……随分あっさりしてますねィ」
「結構付き合い長いし、今更って感じかな」
「へぇ」
興味があるのかないのか分からない声。
結衣は団子の皿を見下ろす。
「でも今は食べ盛りの子が二人いるから。置いてくわけにもいかないし」
「…2人?お姉さん、若いのに苦労してるんですねィ」
「そんなに辛いとは思ってないよ」
穏やかに笑う。
「毎日、結構楽しいし」
青年は少しだけ目を細めた。
「……変わった人ですねィ」
「そうかな?」
「そうですよ」
「じゃあ、あなたも結構変わってると思う」
「俺が?」
「刀とバズーカ持って団子食べてる人、あんまり見ないから」
「……」
青年は自分の横に置いたバズーカを見る。
「確かに」
「でも美味しい?」
「まぁまぁ」
「それならよかった」
その時だった。
「総悟ォォ!!どこ行ったァ!!」
遠くから怒鳴り声が響く。
青年はぴくりと肩を震わせた。
「あ、やべ。」
立ち上がりながら、
「土方死ねコノヤローだ。」
団子を慌てて口へ放り込み、代金を机に置く。
「また来ますねィ、お姉さん。」
「あ、ありがとうございました。」
青年は刀を腰に差し、バズーカを抱えて小走りに去っていった。
結衣はその背中を見送り、小さく首をかしげる。
「……単発なんだけどな」
「守屋さん」
店の奥から店主が顔を出す。
「あれ、総悟くんはもう帰ったのかい?」
「はい。『土方死ねコノヤロー』がなんとかって言って、慌てて行っちゃいました。」
「あぁ、また副長さんに呼ばれたんだろう」
店主は苦笑すると、ふと思い出したように言う。
「今日は本当に助かったよ。よかったら余った団子、持って帰るかい?」
「えっ、いいんですか?」
ぱっと表情が明るくなる。
「もちろん。余らせてももったいないからねぇ。」
「ありがとうございます!」
袋いっぱいの団子と今日の給金を受け取り、結衣は嬉しそうに頭を下げた。
「今日は本当に助かりました。奥さんにも、お大事にってお伝えください。」
「こちらこそありがとうね」
「それと…こんなにお団子まで」
袋を覗き込み、思わず頬が緩む。
「みんな喜びそうです」
袋を覗き込み、思わず頬が緩む。
「みんな喜びそうです」
店主にもう一度頭を下げ、結衣は店を後にした。
今日は給金ももらえた。
おまけに団子まで貰えた。
家に帰ったら、銀時と新八と神楽にどうやって分けよう。
そんなことを考えながら歩いていた。
少しだけ、足取りも軽かった。
万事屋に帰ると何故か銀時のスクーターに跨ったキャサリンの姿。
荷台には山のように積み上げられた荷物。その中に神楽の傘と、スナックお登勢のレジ本体まで混ざっている、
どう見ても持ち主の了承があったとは思えない有様に、結衣は怪訝そうに眉をひそめた。
「キャサリンさん?」
「アバヨ。腐レババア。ドケヨ、ノホホン女」
ノホホン女。
何となく失礼なことを言われた気がする。
しかし意味を考えるより先に、キャサリンはアクセルを吹かした。
そのままスクーターで突っ込んでくる。
結衣は反射的に身をひねってそれをかわし、勢いよく走り去っていく背中を見送った。
直後、スナックお登勢から驚いた様子の銀時、お登勢、新八、神楽が飛び出してくる。
「まさか…キャサリンが」
「お登勢さん。店の金、レジごとなくなってますよ!!」
「え、どうしたの?」
「あ、結衣さんおかえりなさい」
「あ、うん。ただいま」
「あれ、俺の原チャリもねーじゃねーか」
「あ…そういえば、私の傘もないヨ」
「あ、今キャサリンさんが銀時のバイクに乗ってたよ。神楽ちゃんの傘も持ってた」
ほらあっち。と指さす先──
バーカ。と捨て台詞を吐くキャサリン。
銀時の眉がぴくりと動く。
神楽の額にも青筋が浮かんだ。
「あんのブス女ァァァァァ!!」
「血祭りじゃァァァァ!!」
「ちょっ…何やってんの!?どこいくの!?」
スナックの前に停めてあったパトカーの運転席へ神楽が乗り込む。
「結衣も乗れ」
「え?あ、うん」
有無を言わせぬ勢いで後部座席へ押し込まれる。
続いて新八もその横へ滑り込んだ。
そして最後に助手席へ銀時が乗り込んだ。