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Toccata

愉快な気持ちで星の河のほとりで石をさらっていると、急に辺りに影がさしかかった。

『…?』

空もないこの場所で光が遮られるなんて今まで経験したことがなかった。
どんどん暗くなる中に、真っ黒なぼくが溶けていくみたいに馴染んでいく。

『…!!』

助けて。そう言いたいのに、声が。出ない。

拾ったばかりの綺麗に光る星だけが僕の存在を確かにしてくれていた。


「…なにかと思えば、またお前か」

聞き慣れた声質の、でも温度の違うそれがけだるそうに頭上から降ってくる。

『あ…!くろ』
「………」

黒は前に会った時みたいな笑顔をもう浮かべていなくて、なんだかとてもとても疲れて見えた。
悲しいとか、嬉しいを忘れたみたいな、無理に自分から捨てたみたいにも見える黒。


『あの…くろ…えっと、』
「早く逃げるかどうかしろよ」
『え?』
「ここを消すつもりだ、って説明しなきゃ分からねえのか」

一瞬耳を疑って、でもそんなことできるはずがないと考え直す。
だってここは神様の特別な場所で、神様は黒のいたあの場所に手を出さない代わりに神様のこの場所だって消さないはずで。

「今まではな」

頭の中をのぞいたようなタイミングで黒が答えを口にした。
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