Nocturne

おかしそうに笑う口元が本当に面白そうには見えなくて、理由はわからないけど怖かった。
慌てて口を閉じて思い直して口を開ける。

『えっと、…こんにちは』
「…ああ。どうも」

それきり転がらない話をもどかしく思いながら、どうしようどうしようとそればかりが頭を巡る。
そうだ、そういえば初めてカミサマと会った時は自己紹介をしたんだ。

『ぼく、ハテナ。あなたはだあれ?』
「…黒。この世界の神だ。…で、ハテナ、っていったか。お前いったい何をしにきたんだ」


うまく説明できそうにない質問を投げられた、と思うのに口は勝手に動き出す。

『あのね、カミサマがここのこと話すと悲しそうなの。ハテナが行きたいっていったけど、だめだって。でも悲しいのいやなの。だから、…だから』
「………」
『くろ、さん?』
「黒でいい。…で?ここをどうにかしたいのか?」
『…わからない。カミサマ、どうして悲しいかわからなくて…ここにきたら、分かるかなって』

黙り込む黒を見上げて、なんとかうまく説明できたらしいことに安堵した。

…あ、れ?そういえばここに来る少し前から、やけに頭が回る、ような…。
今まで使ったこともない難しい言葉が勝手にあふれだして止まらない。

「…まあいい。お前がここに手を出すつもりがないならな。…で?お前はいったい何者だ。どうやってここにきた?生き物はおろか俺ともう一人の神以外の概念はここには入ることすらできないはずだが」


この質問はさっきより難解で、今度こそ何も言えなかった。
どう説明していいか検討もつかない。
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