Variation

「俺はまだ壊れてない…忘れてただけなんだ。俺は、もう」
「大丈夫なんかじゃないだろ」

続けようとした言葉をさえぎられて思わず黒を見返す。

「いつもそうなんだ、いつもいつもだ。俺がどれだけ努力してきたと思ってるんだ。どれだけ積み重ねてきたと思ってるんだ。どれだけ理不尽に耐えたと思ってるんだ。なのにあんな手紙、あんなもの間違ってる、絶対に嘘だ、なあそうだろう!!?なんでこれだけもがいて、あんな…あんなことが、俺のせいかもしれないだなんて信じられるか!!!!」


黒がヒステリックに叫んで頭を抱え、その場にうずくまる。

小さな声で、あの時にMが、とか、Mのせいだ、と呟く黒に足がすくんだ。


――俺が、黒をこんな風にしてしまったのか?


母さんと、 同じ よ う に。



あの紙を見つけたと言われたとき、素直に受け取って読むべきだった?
それで、なんて言わなければよかった?
どうすればよかったんだ…?



答えが見つからないまま、喉に何かが詰まっているみたいに何も言えない。
何か言うとそれでますます黒が壊れそうで怖くて、でも早く何か言わないと。

「黒…俺は」
「もう何も言うな」

黒が抱えた頭を離して、とても晴れやかな顔で笑った。
豹変した態度に寒気を覚えて体がすくむ。

「やっと分かったんだ。結局俺は誰かのせいにしたかっただけだ。ずっとずっと、そんな世界で生きていきたんだ。何もかもがうまくいかない、あんな世界を創ったのは誰かのせいだと思っていた。答えは簡単だ、そいつはきっとこの俺自身だ。あんな手紙がある理由も頷ける、あれだってどうせ自演だ。自分で世界を創って壊して、そんな自分が止められなくて書いたんだ。少しでも思い通りになるようにしたくてあんな能力を与えるだとか、そんなふざけたことの全部が俺のしたことだったんだ!!」

答えが分かってすっきりした、と黒は心から嬉しそうに笑った。


「だからさ」

黒が立ち上がり、俺に背を向ける。

「だからもう、これから起こる悪いことの全部は俺のせいでいい」



13.4.28
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