Silent

箱のなかにあったものがわからない。
なにかあったことは分かる。だってまだあたたかい。
そこに何かがあって、そしてそれはどうしても守りたかったはずだった。
なのにぬくもりがどんどんなくなって、止めたくてそこに手を乗せたけどだめだった。

消えないで。消えないで。
頭がいたくなるほど何度もそう願ったのに、…だめだった。

なんでそんなに守りたかったのかもわからない。
ただ、淋しくて、つらくて、胸が張り裂けそうで、泣いてしまいそうで。
だからつまり、自分はその大切なものを守れなくてつらいんだろう。

つらい、のに。なんで思い出せないんだろう。


少し寝坊してしまった朝だった。
それがいけなかったのかな?…違う、僕は何も悪くない!
こんなに僕を悲しくさせるものなんか、最初からなくなってしまえばいいんだ!
そうすれば泣くことなんかない。笑えなくもなるけどつらくなるくらいならそんなことはどうだっていい、覚えてもいないモノでつらくなる必要なんてない。
そうだろ?なあ、

あ。あれ?

いま、ぼくは、だれのなまえをよぼうとしたんだろう?


なにも ない。
まっしろだ。

あのおもいでは、ぼくのもの?なまえもわすれたきみのもの?だれのもの?

まっしろなせかいのなか、ぼくはただそこにいるしかできない。


そとにだれかいるの?ここは、あのはこのなかなの?



13.1.28
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