A 道端の雑草
なまえをおしえて。
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05
早朝。
港に白ヒゲの船、モビーディック号が到着した。
それを待ちわびていたと、町はいつも以上に活気立つ。
港から町の中心に向かう石畳の道には出店が建てられ、その先の広場からは音楽が響いていた。
いたるところで白ひげのクルーが町を楽しんでいる。
彼らをもてなす町の人々も同じように楽しそうだ。
あさのすけはずっとキッチンに立っいた。本当はフロアを任される予定だったが、前日リリーに海賊が帰るまで裏方をさせてくれとお願いしていた。
ワケありなことを少なからず知っているリリーは、二つ返事でキッチンを任せた。
「あさのすけ!サーモンマリネ3、スモークチキンステーキ5!おねがい!」
「はい!」
この町に来たばかりのあさのすけは、客前に出るどころか、名前を呼ばれるのすら嫌がっていた。
フロアに極力でないのは変わらないにしても、呼ばれることを良しとしたのは彼女がこの町を信用し始めたからなのか、それとも今この町に停泊している海賊が白ひげだからなのか。
リリーは彼女の心が早く穏やかになることを祈りながら、手元に届いた料理をフロアに運んだ。
「スモーク出して、マリネは私が盛り付ける。それ、出して」
キッチンにはあさのすけの他に2人従業員がいた。彼らに適切な指示を出すと、目の前のマリネを綺麗に盛り付けた。
料理は心を穏やかにしてくれる。
集中すると賑やかなフロアの客の声は耳に入らない。入るのはオーダーの声と調理の音。
集中といえば聞こえは良いが、彼女のそれは無我夢中、無理に考えないようにしてるとしか思えなかった。
リリーはそれを見て心配をする。だが、あさのすけにはこれしかなかった。
「あさのすけ、あさのすけ。」
「え、?」
「フロアは落ち着いたから、もう休んでちょうだい」
後ろから肩を叩かれ、あさのすけは大げさに驚く。
外はいつのまにか日が落ちていた。
満席をキープしていたフロアはちらほらとしか客がいなくなっていた。まだまだ混んでいてもおかしくない時間だが、広場で楽しく盛り上がっているとリリーから聞くと納得する。
大半がそちらに行っているのだろう。
「無理してるなら、ゆっくり休んでいいのよ?」
「大丈夫だよ、リリー」
「明日はここで隊長さんたちが宴会をしてくれるのだけれど、どうする?でれる?」
「うん、キッチンなら大丈夫。」
小柄なリリーは下からあさのすけの表情を伺った。
大分心配させていることがわかっているあさのすけは、リリーに微笑んで大丈夫と首を振った。
それでも心配そうだったが、客の呼ぶ声に返事をすると、リリーはちらりとあさのすけを見てフロアに行ってしまった。
この様子だと、今日はもう満席までの客入りはないだろう。明日のために下準備をしようとしたが、午後になってキッチンに加勢した子に「あとは任せてください」と働きすぎをたしなめられてしまった。
あさのすけは、ふぅ。と小さく息を吐くと、残った材料で賄いをつくりそばにあったバケットに入れ、腰に巻いていたエプロンを外す。
「あがります!」
裏口から声をかけるとキッチンの子やリリーからお疲れ様と声が返ってくる。
その声を背に店の外へ出た。
ドアを開けると盛り上がっている声が広場の方向から聞こえた。
このまま、左の石畳でできた階段を上がっていけば、広場に出れる。
きっと白ひげのクルーと楽しい夜が過ごせるだろう。
けれど、無邪気に行けるほどの勇気がない。
ちくりと痛む気がする左肩にすこし顔をしかめ
足は広場ではなく小道の方へと進んだ。
(声かける勇気はないけれど、それでも。)
早朝。
港に白ヒゲの船、モビーディック号が到着した。
それを待ちわびていたと、町はいつも以上に活気立つ。
港から町の中心に向かう石畳の道には出店が建てられ、その先の広場からは音楽が響いていた。
いたるところで白ひげのクルーが町を楽しんでいる。
彼らをもてなす町の人々も同じように楽しそうだ。
あさのすけはずっとキッチンに立っいた。本当はフロアを任される予定だったが、前日リリーに海賊が帰るまで裏方をさせてくれとお願いしていた。
ワケありなことを少なからず知っているリリーは、二つ返事でキッチンを任せた。
「あさのすけ!サーモンマリネ3、スモークチキンステーキ5!おねがい!」
「はい!」
この町に来たばかりのあさのすけは、客前に出るどころか、名前を呼ばれるのすら嫌がっていた。
フロアに極力でないのは変わらないにしても、呼ばれることを良しとしたのは彼女がこの町を信用し始めたからなのか、それとも今この町に停泊している海賊が白ひげだからなのか。
リリーは彼女の心が早く穏やかになることを祈りながら、手元に届いた料理をフロアに運んだ。
「スモーク出して、マリネは私が盛り付ける。それ、出して」
キッチンにはあさのすけの他に2人従業員がいた。彼らに適切な指示を出すと、目の前のマリネを綺麗に盛り付けた。
料理は心を穏やかにしてくれる。
集中すると賑やかなフロアの客の声は耳に入らない。入るのはオーダーの声と調理の音。
集中といえば聞こえは良いが、彼女のそれは無我夢中、無理に考えないようにしてるとしか思えなかった。
リリーはそれを見て心配をする。だが、あさのすけにはこれしかなかった。
「あさのすけ、あさのすけ。」
「え、?」
「フロアは落ち着いたから、もう休んでちょうだい」
後ろから肩を叩かれ、あさのすけは大げさに驚く。
外はいつのまにか日が落ちていた。
満席をキープしていたフロアはちらほらとしか客がいなくなっていた。まだまだ混んでいてもおかしくない時間だが、広場で楽しく盛り上がっているとリリーから聞くと納得する。
大半がそちらに行っているのだろう。
「無理してるなら、ゆっくり休んでいいのよ?」
「大丈夫だよ、リリー」
「明日はここで隊長さんたちが宴会をしてくれるのだけれど、どうする?でれる?」
「うん、キッチンなら大丈夫。」
小柄なリリーは下からあさのすけの表情を伺った。
大分心配させていることがわかっているあさのすけは、リリーに微笑んで大丈夫と首を振った。
それでも心配そうだったが、客の呼ぶ声に返事をすると、リリーはちらりとあさのすけを見てフロアに行ってしまった。
この様子だと、今日はもう満席までの客入りはないだろう。明日のために下準備をしようとしたが、午後になってキッチンに加勢した子に「あとは任せてください」と働きすぎをたしなめられてしまった。
あさのすけは、ふぅ。と小さく息を吐くと、残った材料で賄いをつくりそばにあったバケットに入れ、腰に巻いていたエプロンを外す。
「あがります!」
裏口から声をかけるとキッチンの子やリリーからお疲れ様と声が返ってくる。
その声を背に店の外へ出た。
ドアを開けると盛り上がっている声が広場の方向から聞こえた。
このまま、左の石畳でできた階段を上がっていけば、広場に出れる。
きっと白ひげのクルーと楽しい夜が過ごせるだろう。
けれど、無邪気に行けるほどの勇気がない。
ちくりと痛む気がする左肩にすこし顔をしかめ
足は広場ではなく小道の方へと進んだ。
(声かける勇気はないけれど、それでも。)