大阪文学学校提出の短編色々
思う所あり土曜の朝一、今宮戎でおみくじを引く。あれこれ祈るな一つに絞れとの御宣託を賜り、マリア様ならぬ「戎様がみてる」じゃねーかと一人震えた。
平成の最後に大阪で友人と会った。仕事が忙しすぎるとこぼすと「『労働』のせいで『仕事』が疎かになってる」と言われる。「君は小説が『仕事』でしょ」と友人。労働は金のためで自分の仕事は音楽だと友人は言う。その二日後に初めて詣でた今宮戎で大吉を引いた。
初年度なのでとりあえず全部出ようと、プレ、宿泊、スクとフルで参加した。作品を読むだけで手一杯になってしまったプレスクで、ほぼ満場一致の酷評を食らう。「読むのに難儀」「わかりにくい」「構成が不親切」等々、いやもうまったくそのとおりで! と恐縮しきりな中で、「いい意味で文校っぽさがない」という感想を頂いた。うまくなるのは大事だが自分の色をなくして小さくまとまってはいけない、と美月先生が仰る。
いろいろなところで作品を書いてきた。高校の部活、大学、ウェブのサークル。場所が変わると人が変わる。作品が変わり感想が変わる。筆の至らなさを猛省しつつも新しいところに来た、と思った。全く違う人生を歩み全く違う文学に触れ、私が普段読まないような作品を書く学友たちの「読めない」という言葉に、自分の輪郭が際立つ。
西に来ると文化が違う。
宿での懇親会で聞く話は瀬戸内、福井、四国と、出てくる土地が東とは違った。若者といえる年ではないがそこでの自分は若造で、年長者の経験に圧倒されつつ酒を飲む。川上先生の「いい作品を書くにはいくつになっても恋をしたほうがいい」というお言葉に、勝手に無礼講モードになっていた私は「恋愛するより小説百枚書くほうが簡単ですよォ!」と喚いた。
日曜、葉山先生の講義に「また中上だ!」とハイになる。天王寺と上野、紀伊半島と遠野。戸籍を遡れるだけ遡っても関東より外の血のない私は西の歴史にくらくらとする。京都があり奈良があり熊野がある。歴史の稜線のようなものが、西に来るとぼんやりと見える。ここを選んだのは大阪芸大の通教時代に知ったからだが、東との差異を感じたくてまた大阪を選んだのかもしれないと思った。
スクーリング本番では感想の男女差にわくわくとした。私の持つ感想と他の人の感想は、当たり前だが全然違った。どんな人が書いたのかと思って読んだ作品の作者を前に、予想通りだったり予想を裏切られたりした。男名で作品を書く女性と親しくなった。私はずっと使っていた性別を偽る筆名をやめて「梅澤」になったばかりだった。
夜、梅田に友人を呼び出し「清々しいくらいに酷評されたわ!」と喚く。バス乗り場に向かう途中で友人に恋人から着信が入る。百枚書くほうがよほど簡単、と前夜の自分を思い出す。一つ選ぶなら小説の他になにがあるんすか戎様、と挑むような気持ちで、今現在おみくじを片手に都内でこれを書いている。
小説は仕事かい? と自分に問いながら、今日もアパートで文字を書き連ねている。
平成の最後に大阪で友人と会った。仕事が忙しすぎるとこぼすと「『労働』のせいで『仕事』が疎かになってる」と言われる。「君は小説が『仕事』でしょ」と友人。労働は金のためで自分の仕事は音楽だと友人は言う。その二日後に初めて詣でた今宮戎で大吉を引いた。
初年度なのでとりあえず全部出ようと、プレ、宿泊、スクとフルで参加した。作品を読むだけで手一杯になってしまったプレスクで、ほぼ満場一致の酷評を食らう。「読むのに難儀」「わかりにくい」「構成が不親切」等々、いやもうまったくそのとおりで! と恐縮しきりな中で、「いい意味で文校っぽさがない」という感想を頂いた。うまくなるのは大事だが自分の色をなくして小さくまとまってはいけない、と美月先生が仰る。
いろいろなところで作品を書いてきた。高校の部活、大学、ウェブのサークル。場所が変わると人が変わる。作品が変わり感想が変わる。筆の至らなさを猛省しつつも新しいところに来た、と思った。全く違う人生を歩み全く違う文学に触れ、私が普段読まないような作品を書く学友たちの「読めない」という言葉に、自分の輪郭が際立つ。
西に来ると文化が違う。
宿での懇親会で聞く話は瀬戸内、福井、四国と、出てくる土地が東とは違った。若者といえる年ではないがそこでの自分は若造で、年長者の経験に圧倒されつつ酒を飲む。川上先生の「いい作品を書くにはいくつになっても恋をしたほうがいい」というお言葉に、勝手に無礼講モードになっていた私は「恋愛するより小説百枚書くほうが簡単ですよォ!」と喚いた。
日曜、葉山先生の講義に「また中上だ!」とハイになる。天王寺と上野、紀伊半島と遠野。戸籍を遡れるだけ遡っても関東より外の血のない私は西の歴史にくらくらとする。京都があり奈良があり熊野がある。歴史の稜線のようなものが、西に来るとぼんやりと見える。ここを選んだのは大阪芸大の通教時代に知ったからだが、東との差異を感じたくてまた大阪を選んだのかもしれないと思った。
スクーリング本番では感想の男女差にわくわくとした。私の持つ感想と他の人の感想は、当たり前だが全然違った。どんな人が書いたのかと思って読んだ作品の作者を前に、予想通りだったり予想を裏切られたりした。男名で作品を書く女性と親しくなった。私はずっと使っていた性別を偽る筆名をやめて「梅澤」になったばかりだった。
夜、梅田に友人を呼び出し「清々しいくらいに酷評されたわ!」と喚く。バス乗り場に向かう途中で友人に恋人から着信が入る。百枚書くほうがよほど簡単、と前夜の自分を思い出す。一つ選ぶなら小説の他になにがあるんすか戎様、と挑むような気持ちで、今現在おみくじを片手に都内でこれを書いている。
小説は仕事かい? と自分に問いながら、今日もアパートで文字を書き連ねている。
3/3ページ