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魔法少年グラハム

魔法少年グラハム

わたし、グラハム・エーカーはそこらへんにいるごく普通の一般人である。
普通、と言えば友人たちにいやいやいや、君は個性の塊でしょ、なんて言われるけど、自分では普通だ、とおもっている。

ある晴れた日、わたしは学校から家への帰路についていた。
友人たちと別れて、一人で歩いていたところ。
なんだか、訳のわからない生物が飛び出していた。
それは、モフモフで白く、凶悪な見た目をしている生物。
なんだこれは。ぬいぐるみか?
なんて考えていると、そのぬいぐるみ(?)が動き出す。
なんでぬいぐるみが動き出すのだ!?
わたしは混乱する。
夢でもみているのだろうか?頬をつねってみる。いたい。
ということは、これは現実……?
フリーズしている間に、その生物はなんと、分裂した。
わたしの方へ襲いかかってくる。
もふもふだからダメージはない。
しかし、どうしたものか。その場から動いても、その生物はわたしについてきて、埒があかない。
こんな生物みたことないし、きいたことない!
まさか、こんな生物がいたなんて。
混乱していると、どこからともなく声が聞こえた。
「おい!そこの少年!!」
「!?……わたしのことか……?」
「そうだとも!この状況を打破するには、君に魔法少年になってもらうしかないんだ!」
「ま、魔法少年だと!?」
魔法少年。それは、アニメの世界だけのことだとおもっていた。
「ほらっ!このペンダントに息を吹きかけて、『アブラカタブラ、ホホイのホイ』と唱えるのだ!」
なんだ、その独特の呪文は……
しかし、その場の勢いに流され、わたしは唱えてしまう。
「あ、アブラカタブラ、ホホイのホイ!」
すると、わたしの体は光に包まれる。
なんだ、これは!?さらに混乱する。
身体が光に包まれ、勝手に服が変わってゆく。なんだかすごいなあ、と他人事のように考えていた。
少しすると、光は収まる。
なんだかスースーするな。そう思い、下を見ると……
「な、なんなのだこれは!?」
フリフリしながらも動きやすそうな衣装に変わっていた。
「お、おい!そこの丸いの!これは一体どういうことだ!?」
「説明しよう!そのペンダントは魔法少女、もしくは魔法少年の素質がある者の吐息に反応し、その内に秘められた力を引き出すことができるペンダントなのだ!ちなみに名前募集中だぞ!」
わたしには素質があったのか……。……じゃなく!!
「いつまでこんな恥ずかしい格好でいなくてはならんのだ!」
わたしだとバレたらからかわれるどころか、白い目で見られる!
「あ、そこらへんは大丈夫。君の顔にモザイクかけといたから」
「モ、モザイク!?」
「あぁ!プライバシーはきっちりと守らなくてはな!」
意外とそういうところはしっかりしているらしい。
「さあ、早く!他の被害が出ないうちに倒すんだ!やっつけない限りその格好のままだぞ!」
……ええい!腹をくくれ、わたし!
……しかし、武器がないぞ……?
「安心しろ!今から出してやる!」
そういうと、その謎の生物は尻から何かを……出し……出し……
「うわあああああああああ!!??!?」
な、なんということだ!あの生物、尻から武器を出しているぞ!?
「ふぅ、疲れた。ほら!この武器を使って!」
「断固自体する!そんなもの触りたくないぞ!!!」
「えぇ、なんでさ?どっこも汚くないぞ?」
「尻から出した、というのが問題なのだ!」
「しょうがないなぁ……今度は口から出してあげるよ」
そっちの方がマシ……、というか、次があるのか……。げんなりする。
「とりあえずこれを使って!」
そう言いながら渡されたのは、ステッキ。
なんだかとてもファンシーで、使うのを躊躇う。が、素手よりマシか、と思う。切り替えていかねば。
……しかし、これはどう使うのだ……?
「思ったことに呼応して反応するぞ!」
なるほど、そういう事か。では……
こういう時は……ビームがいいのか……?
よし。ビームよ、出ろ!
すると。
ステッキからビームが出る。
おぉ、少し感動する。
モフモフの生物にヒットする。ボフン、と音を立て消える。
しかし、復活する。
ええい、これでは埓があからんのではないか!
「丸いの!どうしたら退治できるんだ!?」
「このワフは、本体を撃破しないと増殖し続けるんだ!」
どこかのロボットみたいな名前だなあ…
じゃない、本体を撃破すればいいのか。
しかし、どうやって本体を見分けるのか……
むやみやたらに攻撃しても、意味がない。
わたしは、注意深く観察する。
すると、一匹だけ動きがとろいワフがいた。
……もしかしなくても、あいつが本体なのでは?
試しに攻撃してみる。すると、
「ギャー」
そう言って消えてゆく。
どうやら当たりだったらしい。
「少年!やるではないか!」
「はあ……」
衣装が発光し、元の服に戻ってゆく。
どっと疲れが押し寄せてくる。
「つ、つかれた……」
「少年!このまま魔法少年になってはくれないか!?」
とんでもないことを言いだす、この生物は。
「い、嫌に決まっているだろう!?」
「頼むよぉ〜!願い事を一つ叶えてあげるからさ!」
……それは、甘い誘惑だった。
ひとつだけ、叶えたい願いがある。
わたしは、恋をしている。
相手の名は、刹那・F・セイエイ。
わたしの二個下で、寡黙な人物。
わたしが彼に惚れた理由。それは、昼休みのことだった。
中庭に猫が迷い込んだ事があった。
わたしは、どうも動物と分かり合えないらしく、警戒をされてしまう。
するとそこに、颯爽と刹那くんが現れた。
彼は、動物が好きらしく、しかも動物に好かれるらしい。
さっと安全な校外につれて行き、猫を助けた。
ぶっきらぼうながらも、内には優しさがある。
その瞬間に、わたしは恋に落ちてしまった。
しかし、わたしと刹那くんにはそれ以外の接点がない。
話しかけようにも勇気が出ず、距離が縮まらないのだ。
乙女座のわたしにはセンチメンタリズムな感情に陥ってしまう。
いつもは豪快なわたしだが、彼のことになるとてんで駄目になってしまう。
だから、彼と距離を縮めたかった。
「……わたしと、刹那・F・セイエイくんの距離を縮めてほしいのだ」
「ふーん。……もしかして、そいつに惚れてるんじゃないのか?」
図星だ。顔が赤くなるのを感じる。
「やっぱりな!しかし、距離を縮めるだけでいいのか?恋人にすることだってできるぞ?」
「……いや、そこまではいいのだ。自分の力で、恋人になりたい」
「ッカー!健気だねー!いいよ!その願い、叶えてやる!」

「…………ホアーーーーッ!!!」
うわ、ダサい!わたしは思わず思ってしまう。
「……よし。これで完了した。明日を楽しみに待っているんだな!」
「あ、おい!お前、名前はなんていうんのだ?」
「わたしの名前はセルクルだ!」
セルクル……なんかかっこいい。
「さて、正式に契約が結ばれたな!」
ふう、これで終わったのか。
疲れた。帰ったら風呂に入ろう。帰路につく。
……しかし、セルクルが付いてくる。
「おい、なんでわたしについてくるのだ?」
「当たり前でしょ?ぼくは君のマネージャーなんだから!」
マネージャー……
しかし、こんな生物を連れていては、周りに白い目で見られる。
「そこは気にすることはない!わたしは普段、そのペンダントに宿っているんだよー
……なるほど。それなら安心だ。
「これからよろしくね、グラハム!」
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